四人が座っていた椅子は、いつの間にか膨張して角を生やし、毛が生え、牛のような動物になってしまった。怪獣は声をそろえて笑い出した。そして四人を背中に乗せ、廊下をドスドスと駆け出し、広場に出た。
初稚姫も同じ怪獣にまたがり、四人を呼ばわりながら追いかけてくる。怪獣は空の上高く上ったり下りたりするようになり、四人は振り落とされないよう背中にくらいついていた。
ケースは、飛び下りなければどこまで連れて行かれるかわからないと、他の三人に思い切って飛び下りようと呼び掛けた。四人がいっせいに飛び降りたとみるや、元のところにテーブルの脚をつかまえて汗をかいて気張っているだけであった。
初稚姫は以前のまま椅子に腰かけてニタニタと笑っている。四人が奇怪な夢について話し合っていると、丸いテーブルが狸のような顔をだし、毛を生やしてドアの外へ這って行った。
初稚姫はみるみるうちにいやらしい鬼女となって、耳まで裂けた口を開き、牛のような舌を出して四人に向かって噛みつきにきた。四人は肝をつぶして駆けだした。
向こうから初花姫が七人の美女を連れてやってきた。四人はあせってそこまで逃げようとしたが、同じところに足をバタバタとやっている。後ろから初稚姫の妖怪が暑い火のような息を吹きかける。初花姫たちも怪しい化け物に変わって噛みつきに来た。
たちまち家は前後左右に回転した。見れば傍に泉水がある。四人は勾玉型の泉水に身をおどらせて飛び込んだ。四人の体は沈んで行き、水のない岩窟についた。四人は悲鳴を上げて助けを呼んだ。どこともなしに桃の花びらが四人の顔に落ちかかった。
よくよく見れば、四人は浮木の森の火の見やぐらの傍にある勾玉型の泉水のかたわらで、桃の木の根元に阿呆のような顔をして眠っていたのである。東の空は茜さしはじめ、古狸が一匹、頭に桃の花びらを付着させながら這っている。
ガリヤは神に油断の慢心の罪の赦しを乞うた。