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文献名1霊界物語 第52巻 真善美愛 卯の巻
文献名2第1篇 鶴首専念よみ(新仮名遣い)かくしゅせんねん
文献名3第5章 森の怪〔1341〕よみ(新仮名遣い)もりのかい
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日2023-10-13 19:13:50
あらすじ
イクとサールは、初稚姫が変装の術を使って熊となり、獅子と変じたスマートに乗って立ち去った後ろ姿を眺めて、しきりに両手を合わせ、舌を巻いて感じ入ってしまった。

二人はますます初稚姫のお供をしたい気持ちが高まり、体を清めて顔の塗りを落とすと、宣伝歌を歌いながら初稚姫を追いかけて荒野ケ原を渡って行く。

二人が山口の森を目指して進んで行くと、森の一部が火のごとく明るくなった。火光を目指して進んで行くと、山の神の祠跡の台石の上に鬼が二匹いた。これは、妖幻坊の眷属である古狸・幻相坊、幻魔坊が鬼に化けてイクとサールを悩まそうと待ち構えていたのであった。

しかし二人は、初稚姫とスマートが変装術で自分たちを驚かそうとしていると思い込み、恐がりもせずにツカツカと鬼に近寄って声をかけ、変装を批評し始めた。幻相坊と幻魔坊は、自分たちの術が見破られたと思ってふるえだし、青い火柱となって消えてしまった。

イクとサールは、鬼が初稚姫たちの変装ではなく曲津が化けて脅そうとしていたことを悟り、お互いに注意し合った。イクは暗がりをいいことに、サールに手を伸ばして化け物のふりをして驚かそうとしたが、サールに殴られてしまう。

二人が茶番劇に笑い興じていると、今度は大きな火の玉が現れてその中から顔が出てきておかしそうに笑い出した。この火の玉の光に照らされて足許を見れば、二匹の古狸が大きなムカデを山ほど積んで、二人を刺し殺そうと企んでいた。

狸とムカデどもは火の玉の光に照らされて森の中に逃げ隠れてしまった。光の玉は小さくなって二人の傍らに転がってきた。二人はこれは自分たちを助けてくれた神の化身だろうと考え、両手を合わせて感謝した。

二人はいつのまにか眠ってしまった。暁のカラスの声で驚いて目を覚ますと、傍らに直径一寸ばかりの水晶玉が転がっていた。これは日の出神が、二人の危難を救うために神宝を授けたのであった。これより両人は玉を懐中に入れ、初稚姫の後を慕って駆けて行く。
主な人物 舞台 口述日1923(大正12)年01月29日(旧12月13日) 口述場所 筆録者北村隆光 校正日 校正場所 初版発行日1925(大正14)年1月28日 愛善世界社版61頁 八幡書店版第9輯 401頁 修補版 校定版64頁 普及版28頁 初版 ページ備考
OBC rm5205
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本文  二人は初稚姫が変装の術を使つて熊となり、スマートを獅子と変じて、二人を睨みおき、此場を逸早く立去つて了つた後姿を眺めて、頻りに首を傾け両手を合せ舌を巻いて感じ入つて了つた。
『おい、サール、大したものだらう。初稚姫様は正勝の時になつたら、あれだけの御神力があるのだから、俺が貴様を勧めて追駆けて来たのも無理はあるまい。如何だ、俺の先見は、之から余り馬鹿にして呉れまいぞ』
『ヘン、偉さうに吐すない。貴様だつて初稚姫様にあれだけの隠し芸がある事は初めてだらう。何処ともなし優しい慕はしい、そして御神徳が備はつてるものだから、何処がどうと云ふ事なしにお慕ひ申してやつて来たのだらう。先見の明も糞もあつたものかい。然し大熊となつて目を怒らし「ウー」とやられた時にや、あまり気分のよいものぢやなかつたのう。貴様もビリビリ慄つて居たぢやないか。怖さうに地べたに喰ひつきよつて、其周章狼狽さと云つたらお話しにならなかつたワ』
『馬鹿云ふな。俺は屹度初稚姫様は熊にお化け遊ばすに違ひないと予期してゐたのだ。それが俺の鋭敏な頭脳に感じた通り現出したのだから、余り有難くて勿体なくて慄うてゐたのだ。云はば歓喜の慄ひだ。貴様の様な蒟蒻慄ひとは聊か選を異にしてるのだからね、エヘン』
『へ、仰有りますわい。そして今後の計画は何うなさいますか。もう之で祠の森へ御退却でせうね』
『馬鹿を云へ。貴様は臆病者だから退却したがよからう。俺はあの御神力を見届けた上は弥益々熱心にお後を慕ひ、仮令噛み殺されても構はないのだ。神様のためには命を捨てる命を捨てると口癖のやうに云ふ奴は、こんな時にビツクリして、ビクビクもので逃げ失せるものだ。此イクは之から大熊さまや唐獅子さまに喰はれにイクの司だ。さアここで貴様と別れて、英雄と卑怯者とが顔を洗ひ水盃でもしようぢやないか。もう之が貴様と長の別れとならうかも知れぬ。御縁があらば又地獄の八丁目でお目にかかりませうよ』
『何、馬鹿のこと云ひくサールのだ。俺だつて本当の獅子や熊になら、チツとは驚くか知らぬが、何と云つても化獅子や化熊だから生命に別条はない。そんな事の分らないサールさまとは違ふのだ。何は兎もあれ、斯んな顔してゐては化物と見違へられる。一遍裸となつて体中を清め、そして野馬でも居つたら、取捉まへて、其奴に跨り御後を追ふ事にしよう。愚図々々してゐると、日が暮れて行衛を見失ふかも知れないぞ。さア早く早く』
と二人は体を清め、顔の白黒をスツカリ落し、宣伝歌を歌ひながら荒野ケ原を渉つて行く。
イク『初稚姫の御供に  仕へて神業を全うし
 斎苑の館に復命  白さむ為めと両人が
 祠の森を抜け出して  河鹿峠の急坂を
 先に下つて山口の  樫の根元に立ち居れば
 初稚姫の神司  谷間をピカピカ照らしつつ
 木の間を縫うて下り来る  其神姿の崇高さよ
 スマートさまは後前に  なつて御身を守りつつ
 主従ここに現はれて  白黒二人の三番叟
 眺め給ひし床しさよ  朝日は照るとも曇るとも
 エンヤナ、オンハ、カッタカタ  月は盈つとも虧くるとも
 身魂を洗ふは滝の水  瑞の身魂の流れぞと
 二人の口から出放題  俄作りの歌唄ひ
 漸く仕組んだ三番叟  其甲斐もなく一言に
 はね飛ばされて両人は  予て企みし決死隊
 用意の細帯取り出して  堅木の枝にパツとかけ
 プリンプリンとブラ下る  其苦しさは言の葉の
 尽し得らるる事でない  本当に今度は死ぬのかと
 観念したる折柄に  初稚姫に助けられ
 ヤツト気がつきや、あら不思議  思ひがけなき熊となり
 獅子と変じて両人を  眼瞋らし睨みたる
 其時こそは吾々も  本当の事を白状すりや
 あまり良い気はせなかつた  さはさりながら荒野原
 獅子狼の吼え猛る  醜葦原を進む身は
 どうであの様な隠し芸が  無くて一人で進まれよか
 之を思へば吾々は  何程排斥せられても
 仮令脅喝せられても  之を見捨てて帰れない
 何処々々迄も追ひついて  命を的に進み行く
 之が誠の大和魂  肝を試すは此時だ
 朝日は照るとも曇るとも  月は盈つとも虧くるとも
 仮令曲津に喰はるとも  思ひ立つたる此首途
 中途に帰つて堪らうか  ああ惟神々々
 御霊幸はひましまして  初稚姫の進みます
 ハルナの都へ吾々を  尊き恵みの其下に
 進ませ給へと願ぎ奉る  四方の山々芽を吹いて
 躑躅の花も此処彼処  艶を競へる春の野は
 又格別の愉快さぞ  紫雲英の花は遠近に
 処まんだら咲き初め  松の緑も樫の葉の
 新芽も漸う伸び立ちて  吾等二人の荒武者に
 活動せよと勧めてる  烏や鳶や雲雀まで
 御後を慕うて走れよと  応援してゐる心地する
 こんな処で屁古垂れて  ノメノメ後へ帰りなば
 烏の奴にも笑はれる  三五教に退却の
 二字は決してない程に  善と思うたら何処迄も
 命限りに進むのが  男の中の男だらう
 ああ惟神々々  御霊幸はひましませよ』
と歌ひ行くのはイクであつた。
 山口の此樫の木の麓から山口の森は、近く見えて居ても殆ど五十町ばかりの距離があつた。
『兎も角山口の森まで進まにやなるまい』
とコンパスに撚をかけ、春風を肩で斜に切りながら、蟹の如く横飛びして、特急列車的に脇目をふらず、路傍に咲き匂ふ花にも目もくれず、トントントンと駆けついた。空はドンヨリと曇つて来た。星の影さへ見えなくなつてゐる。最早咫尺暗澹、一歩も進めなくなつて了つた。俄に山口の森の或局部が火の如く明くなつた。夏の虫が灯火をたづねて飛び込む様な勢で、火光を目当に二人は進み行くと、山の神の祠の跡の台石の上に、暗を照らして輝いてゐる二人の怪物があつた。之は妖幻坊の眷属幻相坊、幻魔坊と云ふ古狸が鬼の姿と化けて、暗を照らしながら両人を艱まさむと待ち構へてゐたのである。両人は十間ばかり近寄つてツと立止まり、
『おい、サール、妙ぢやないか。あれだから俺が好きといふのだ。初稚姫様は鬼となり、スマート迄が小鬼に化けて俺達を嚇かし逃がしてやらうとして、ああ云ふ芸当をやつて厶るのだぞ。何と初稚姫様は偉いものぢやないか、エー』
『成程、こいつア感心だ。益々以て其本能を発揮し給ふと云ふものだ。俺も一つ何かの方法で、何処までも追跡して教へて貰はなくちや、祠の森へも帰れぬからのう。一つ側へ寄つて談判しようぢやないか』
『ウン、そいつは面白い。何程恐い顔したつて、素性が分つてるのだから屁でもないわ』
と云ひながら嬉しさうにツカツカと側へ寄つた。何程妖怪が怖い顔して嚇さうと思つても、相手方が驚かねば張合がぬけたものである。そして其妖術は次第々々に消え失せるものである。幻相坊、幻魔坊はいやらしき鬼となり、四辺を輝かしながら真赤な顔をして、牛の様な角を額に二本づつ一尺ばかり生やし、耳まで裂けた口に青い舌を出し、体は餓鬼の如く痩せ衰へて壁下地を現はしてゐる。イクはツカツカと側に寄り、
『よう、天晴々々、実に感じ入りました。おい畜生、貴様も中々乙な事をやり居るのう。エヘヘヘヘ、そんな怖い顔したつて驚くものか。素性の分らぬ化物なら、此方も面喰ふか知らぬが、スツカリ分つてるのだから面白いわ。アツハハハハ、感心々々、のうサール、うまいものだね』
『ウン、之だから旅はやめられぬと云ふのだ。何せよ、ハルナの都まで悪魔退治に行くのだから……こんな事が怖い位では駄目だから……畜生までが一人前に化けて居やがらア、エヘヘヘヘ、実に巧妙なものだなア』
 折角化けた幻相坊、幻魔坊も相手が平然として、「畜生よく化けよつた」等と云ふものだから、
『此両人は自分の正体を知つてゐやがるのだな。こんな肝の太い奴に悪戯をして威かさうとしても駄目だ。却てひどい目に遇はされるに違ひない』
と妖怪の方で慄ひ出し、俄に還元する訳にも行かず、涙をポロポロと落し出した。
『ハハア、コン畜生、涙を流してゐやがる。おい、サール、こりやチツと可怪しいぞ。初稚姫さまなら泣かつしやる筈がない。何でもこいつア、妖幻坊の眷属が化けてゐやがるのだ。一つ問答してやらうかい』
『そりや面白い。こりや化州、貴様、こんな所で俺に火をつけて首振り芝居を見せて呉れたつて、何が何だか訳が分らぬぢやないか。物を言はぬかい。人形芝居なら太夫が語つてくれるから意味も分るが、六斎念仏の様に黙つて慄つてゐた所が、それ位の表情では意味が分らぬぞ。おい一つ貴様と俺と合併して芝居をやらうぢやないか』
『こらこら、サール、こんな鬼と芝居したつて、はずまぬぢやないか。物好きもいい加減にしたら如何だい。ヤ、だんだん小さくなりやがつたぞ』
と云つてる間に、青い火柱となつて二人ともスポツと消えて了つたので、四辺は何処ともなしに真闇がりになつた。
イク『ハハア、到頭夜立店も流行らぬと見えて、カンテラを消して帰んで了ひよつたな。併しそこらに魔誤ついてゐるかも知れぬから、よく気をつけよ』
サール『さうだな。彼奴はヤツパリ初稚姫さまぢやなかつたわい。馬鹿にしやがる、之から俺等も十分注意をしなくちや、かう暗くなつちや、何がうせるか分らぬからのう』
『かふいふ晩には化物が自分の前へ出て来て睾丸を狙ふといふことだよ。そしてよく人に化けるから気をつけにやいくまいぞ。今消えた鬼は屹度方法を変へて、俺達の睾丸を狙ひに来るのだから……サール、チツト気をつけ給へ』
『ウン、十分注意する。なるべく両人が接近して敵の襲来に備へようぢやないか』
『そら、さうだ。併し貴様の前の方に、暗くてシツカリ分らぬが、何だか化物が頭をつき出してる様だぞ』
『ナーニ、今手を伸ばして探つて見たけど、何も居やせないわ』
『それでも俺の目には、貴様の前に何だか黒いものがある様だ。一寸撫でて見ようか』
と云ひながら暗がりを幸ひ、イクはサールの前に頭をつき出した。サールはイクがこんな悪戯をしてるとは知らず、一寸手を伸ばすと毛の生えた頭がつかへたので、驚きながら自棄糞になつて左手に髻をグツと握り、滅多矢鱈に処構はず殴りつけた。そして漸くに手を放した。イクは自業自得だと諦めながら、ソツと元の座へ直り、
『おい、サール、貴様は今、何だかバサバサやつてゐたぢやないか』
『ウン、到頭化物の奴、俺の睾丸を狙ひに来よつたので、髻をグツと握り殴つてやつたのだよ』
『ウン、さうか。油断のならぬ所だな』
と云ひながら、サールの声の出る所を目当に、最前の仕返しをポカポカとやつた。
『アイタツタ、おい、イク、来て呉れ。何だか俺の周囲に化州の奴、ひつついてゐるやうだ。ああ惟神霊幸倍坐世惟神霊幸倍坐世』
『よう、何だ何だ。何処に何処に』
と云ひながら、今度は喉の下をコソばかさうとしてヌツと手をつき出した。サールも何気なく手をつき出す途端に、妙な物があると思ひグツと握つた。
『アイタタタ、俺だ俺だ、イクだイクだイクだ』
『こりや、イクの奴、俺の頭を殴はせよつたのは貴様だな。悪戯た真似をさらすと了簡せぬぞ』
『ヘン、貴様だつて俺の髻を一生懸命握りよつて、力一杯殴つたぢやないか』
『ハハハハハ、罰は目の前だな』
 斯く話してゐる所へ、森の木の間を照らして現はれて来たのは、直径二尺位ある光の玉である。そしてその玉の中から、目、鼻、口、眉毛まで現はれ「エヘヘヘヘ」と可笑しさうに笑つてゐる。そのために足許はパツと明くなつた。よくよく見れば、二人の足許に幻相坊、幻魔坊の二疋の古狸が一尺もあらうと云ふ大蜈蚣を山程積んで、二人の体を刺し殺さうと企んでゐたのである。二匹の古狸は此光に照らされて雲を霞と逃げ去り、大蜈蚣は一生懸命に走つて森の中の暗に隠れて了つた。そして此光はおひおひと容積を減じ、小さき玉となつて二人の側に転げて来た。二人は別に驚きもせず、
『之は自分を助けてくれた神の化身だらう。此暗がりに此光玉がなかつたら、俺等はどんな目に遇つたかも知れぬ。南無光大明神様』
と両方から手を合せて感謝した。二人は何時の間にかウトウトと眠つて了つた。山口の森の烏はカアカアと暁を告げた。其声に驚き、目を醒まし四辺を見れば、自分の傍に直径一寸ばかりの水晶玉が転がつてゐた。之は日の出神が二人の危難を救ふべく神宝を授け給うたのである。之より両人は夜の明けたを幸ひ、玉を懐中にしパンを噛ぢりながら、初稚姫の後を慕うて駆けて行く。
(大正一二・一・二九 旧一一・一二・一三 北村隆光録)
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