文助は大石が動くので神言を奏上していた。すると二十歳くらいの娘と十八歳くらいの男が岩の下から現れ、自分たちは文助の娘・年子と息子・平吉だと名乗った。
文助の子・お年と平吉は、それぞれ三つと二つのときに死んだが、霊界で成長したのだという。そしてその間、文助にだまされたという人がたくさん霊界にやってきて睨まれるので、十六年の間、姉弟で萱野ケ原に逃れて隠れて暮らしていたのだという。
文助は自分の子供たちの身の上話を聞いて涙に暮れて考え込んでいる。後ろから肩を叩く者があって驚いて振り向くと、生前の知己の竜助であった。
竜助は、生前に文助が教えてくれた話が霊界へ来てみるとすっかり間違いだらけで、方角がわからなくなって、この原野にさまよっているのだと身の上を語り、文助の二人の子がかわいそうだからときどき様子を見に来て食べる物を渡しているのだ、と語った。
文助は宣伝使としてどのように心を持ったらよいかわからず、嘆いた。竜助は、何事も神様の御神徳によって人が助かり、自分も生き、人の上に立って教えることができるのだ、と文助を諭した。たちまち竜助は大火団となって中空に舞のぼり、東の方面を指して行った。竜助と見えたのは、文助の産土の神の化身であった
産土の神がお年・平吉の身を憐み、神務の余暇にここへきて二人を助けていたことを知った文助は、産土の神の御仁慈を悟って地にひれ伏し、啼泣して感謝をささげた。
文助は二人の子供たちに、自分の慢心の罪を詫びた。文助は、今まで唱える祝詞の力によって天国へ救い導くものと思っていたが、これはたいへんな間違いであり、神様の御力によって救われるのだということを理解し、懺悔した。
この上は神様に何事も任せて、お指図を受ける外にはないことを悟った文助は、親子三人で荒野が原に端座して、一生懸命に祈願を凝らした。
ちなみに、産土の神が二人の姉弟をかくまうために石を使われたのは、石が真を現し、虚偽と罪悪と醜穢を裁断する神力が備わったものであるからである。神の真を現す石は、悪魔の襲来を防ぐ。石は鉱物であり、玉留魂である。
ゆえに石は霊国の真相を現すもので、月の大神の御神徳に相応し、石の玉をもって御神体とする。霊国の神の御舎は石を持って造られている。天国は木をもって宮が造られている。木は愛に相応し、太陽の熱に和合するからである。