文助は、秋の時雨の季節を現した八衢の関所で、路傍の石に腰かけて門を通る数多の精霊の審判を聞いていた。
高姫は妖幻坊にさらわれて空中をかけり、途中で取り離されて空中から転落し、デカタン高原のある地点の砂原に気絶していた。その間に精霊が八衢にやってきた。高姫はあたりかまわず日の出神の生き宮を振り回し、自分は時置師神・杢助の妻だと威張り散らしている。
八衢の守衛は杢助は斎苑の館でずっと総務を取っていると高姫をたしなめるが、高姫はまったく聞かず、守衛たちを嘲弄する。文助は高姫に声をかけ、幽冥界の役人に乱暴な言葉を使わないように注意するが、高姫の態度は変わらない。
そこへ、伊吹戸主神様に御用がある本物の杢助が天の一方からやってきた。高姫は杢助に一緒に帰ろうと声をかけるが、本物の杢助は、高姫が妖幻坊という妖怪にだまされていること、自分は高姫と祠の森で会っていないし曲輪城も知らない、と事実を説いて聞かせた。
高姫は杢助の話を信じず、門内に入ろうとする杢助にすがって泣き喚いた。杢助は高姫をポンとけって街道に転げさせ、文助を招いて門内に入って行った。
高姫は八衢の街道に転がりながら、自分は常世姫の再来、高宮姫だと大音声に呼ばわっている。この声をききつけて、八衢に来る精霊が集まってきた。