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文献名1霊界物語 第53巻 真善美愛 辰の巻
文献名2第1篇 毘丘取颪よみ(新仮名遣い)びくとりおろし
文献名3第8章 連理〔1371〕よみ(新仮名遣い)れんり
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日2024-03-04 17:48:25
あらすじ
新郎のハルナは扇を片手に持って歌い舞い、この婚姻が対立する両家の融和となることを祈った。左守の家令エクス、右守の家令シエールもまた歌った。

左守、右守、タルマン、ハルナ、カルナ姫、エクス、シエールらはそれぞれ祝歌を披露した。左守と右守の両家は表面やや打ち解けたように見えたが、右守の心中は容易に和らがず、依然として左守を邪魔者扱いしていた。
主な人物 舞台左守キュービットの館 口述日1923(大正12)年02月12日(旧12月27日) 口述場所竜宮館 筆録者加藤明子 校正日 校正場所 初版発行日1925(大正14)年3月8日 愛善世界社版76頁 八幡書店版第9輯 531頁 修補版 校定版81頁 普及版39頁 初版 ページ備考
OBC rm5308
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本文  新郎のハルナは立ち上り扇を片手に持ち、歌ひ舞ひ初めたり。
『高天原に現れませる  皇大神の御恵
 塩長彦の現れまして  今日の慶事を恙なく
 結ばせ給ひし嬉しさよ  そも今迄は両人が
 父と父とは敵同士  何彼につけてさまざまと
 衝突したる浅ましさ  此惨状を治めむと
 年も幼き時分より  案じ煩ひ居たりしが
 幸なるかなカルナ姫  吾と相思の恋に陥ち
 思ひ切られぬ身の因果  如何なる宿世の因縁か
 父と父とは敵同士  到底も恋路は遂げざらむ
 仮令此世で添へずとも  死して未来で睦じく
 地獄の底まで手を曳いて  落ちなむものと思ひつめ
 恋の涙に暮れけるが  父と兄との理解力
 幸ひなして今此処に  鴛鴦の契を結びたる
 今宵の首尾の嬉しさよ  天には比翼の鳥となり
 地には連理の枝となり  夫婦互に睦び合ひ
 親と兄とは云ふも更  畏き君に赤心を
 捧げて清く仕ふべし  ああ惟神々々
 御霊幸倍ましまして  二人の縁をどこ迄も
 欠ぐる事なく守りませ  天の御柱廻り合ひ
 国の御柱取り巻いて  天と地との経綸に
 仕へて御子を数多生み  左守の家の繁栄を
 いや永久に祈るべし  ああ惟神々々
 塩長彦の大前に  畏み畏み祈ぎまつる』
と歌ひ終る。左守の家令、ヱクスは雀躍りしながら其尾について祝歌を歌ふ。
『朝日は照るとも曇るとも  月は盈つとも虧くるとも
 星は天より落つるとも  地震雷火の車
 仮令一度に来るとも  この縁談が恙なく
 調つた上はこのヱクス  仮令死んでも構やせぬ
 刹帝利様は云ふも更  左守右守の両宗家
 和合なされた其上は  ビクの御国は穏かに
 治まり栄え行くだらう  今迄縺れに縺れたる
 犬と猿との間柄  今日は目出度和解して
 此宴席に打ち解けて  並ばせたまふ嬉しさよ
 此世を造りし神直日  心も広き大直日
 唯何事も人の世は  直日に見直せ聞き直せ
 世の過は宣り直せ  これぞ全く三五の
 教の道の歌なれど  斯やうな時に応用して
 今日の宴会を祝ぎつ  幾久しくも御両所よ
 上は御国の御為に  下はお家の安泰を
 守らむ為に睦じく  暮らさせたまへ惟神
 今日の喜びいつ迄も  忘れぬためにこのヱクス
 舞ひつ踊りつ歌歌ひ  お酒に酔うて後前も
 分ぬばかりに土堤切らし  命限りに踊りませう
 ああ有難い有難い  カルナの姫やハルナさま
 あなたも嘸や嬉しかろ  日頃の思ひが相達し
 相思の夫婦が睦じく  新しがつて暮すのも
 全く神の御守護ぞや  夢にも神の御恩徳
 忘れる事があつたなら  この結構な良縁も
 中途に破裂するだらう  そんな憂ひの無いやうに
 今日から心を改めて  皇大神を敬拝し
 清き教をよく守り  君には忠義親に孝
 隣人迄も憐みて  神の形に造られた
 人たるものの本分を  お尽しなされや左守家の
 家令ヱクスが赤心を  籠めて注意を致します
 ああ惟神々々  御霊幸倍ましませよ』
 シエールは又歌ふ。
『右守の司と現れませる  ベルツの司の家令職
 シエールが此処に赤心を  捧げて今日の結婚を
 嬉しく祝し奉る  兵馬の権を握ります
 ビクの御国の権力者  ベルツの君の其威勢
 朝日の如く輝きて  飛ぶ鳥さへも落すよな
 ベルツの司の妹君  カルナの姫を貰ひうけ
 女房となしたハルナさま  嘸やさぞさぞ御満足
 なさつた事で厶いませう  家令のシエールはお二人の
 其嬉しげな顔を見て  やつと安心致しました
 さうして何だか羨ましう  なつて来たよに思はれる
 これもやつぱり人の云ふ  法界悋気ぢやあるまいか
 世界に名高き美男と美人  こんな配偶がまたと世に
 三千世界にあるものか  木の花姫の顔に
 似させたまへるカルナ姫  お姿見ても目が眩み
 後光がさすよな心地する  私ももちと若ければ
 こんな美し女房が  貰へるだらうと思うたら
 何だか浮世が厭になる  蜥蜴が欠伸をしたやうな
 アバタだらけの山の神  無理に持たされ四五人の
 餓鬼をゴロゴロ拵へて  生活難に追はれつつ
 青息吐息の為体  ほんに人間の運命は
 これ程懸隔あるものか  折角人と生れ来て
 天地の花よ万物の  霊長なりと誇るとも
 同じ月日を送るのに  これだけ幸と不幸とが
 分ると云ふは先の世の  宿世の罪が報いしか
 実につまらぬシエールの身  ハルナの司に比ぶれば
 天と地との相違あり  さはさりながらこんな事
 愚痴つて見たとて仕様がない  因縁づくぢやと諦めて
 今日の結構な御結婚  幾久しくと赤心を
 籠めて祝ぎ奉る  ああ惟神々々
 御霊幸倍ましませよ』
と歌ひ終り座につきぬ。

左守『昔より山と積りし塵埃
  散りにし今日の吾ぞ嬉しき』

右守『何事も唯惟神々々
  神の心に任すのみなり』

タルマン『鴛鴦の番離れぬ睦じさ
  見るにつけても羨ましきかな』

ハルナ『惟神縁の糸に結ばれて
  この世を渡る吾ぞ楽しき』

カルナ姫『天渡る月の御影を眺むれば
  笑はせたまひぬ吾顔を見て』

ヱクス『姫様を娶りたまひしハルナの君
  春咲く花と栄えますらむ』

シエール『類なき松と松との睦み合ひ
  千代の栄を祝ふ今日かな』

 斯く歌ひ終り目出度結婚の式を終へ、左守、右守の両家は表面稍打ち解けたる如く見えしが、右守の司の心中は容易に和らがず、依然として左守の司を邪魔者扱ひ為し居たりけり。
(大正一二・二・一二 旧一一・一二・二七 於竜宮館 加藤明子録)
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