バラモンの鬼春別軍は、ハルナの指揮する城内の防衛軍を襲い、なぎ倒した。ビクトリヤ軍は敗走して武器を捨てて散乱し始めた。ハルナは槍を持って敵の陣中に入り縦横無尽に戦ったが、身に数多の傷を受けて倒れ、捕縛されてしまった。
城内に押し入ったバラモン軍は、ビクトリヤ王、左守、右守も難なく捕縛し、ハルナと共に牢獄に投げ入れてしまった。
カルナ姫は味方の勢力ではとうてい敵し難しと見て、にわかに武装を解いて美々しく装い蓑笠をつけて旅人に扮し、バラモン軍が進軍してくる路傍に倒れて気を引いた。敵の主将を美貌と弁舌で切腹しようとの試みであった。
バラモン軍の副将たちはカルナ姫の美貌を見てさっそく、大将に差し出して手柄にしようとした。カルナ姫は、自分はビク国の女で多くの軍隊を見て肝をつぶして動けなくなったのだと身の上を語った。副将たちは久米彦将軍の配下であったので、久米彦にカルナ姫を送り届けた。
久米彦は、隣のテントに上官である総司令官の鬼春別将軍が陣取っているので、あからさまに喜ぶわけにもいかず、表面は陣中に女を入れるなどけしからんと怒鳴りたてたが、内心は喜んで、さっそくあたりの幕僚に用を言いつけて遠ざけ、カルナ姫を口説きだした。
久米彦はすっかりカルナの手玉となって心をとろかせ、作戦計画も地図もほったらかしてしまった。カルナは両親にかけあった上で結婚の段取りをしようと婚約をほのめかした。
鬼春別は、隣の久米彦のテンドで女の声がし、どうやら久米彦が女の承諾を得たような気配がするので嫉妬し、顔を真っ赤にして久米彦の室に入ってきて怒鳴りつけた。久米彦は上官に対してこの場を取り繕うと焦っている。