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文献名1霊界物語 第55巻 真善美愛 午の巻
文献名2第1篇 奇縁万情よみ(新仮名遣い)きえんばんじょう
文献名3第2章 道謡〔1410〕よみ(新仮名遣い)どうよう
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日2024-05-04 08:16:51
あらすじ
鬼春別はバラモンの経文を一心に唱えながら下って行く。久米彦はなぜか三五教の歌が口からほとばしり、述懐を歌いながら下って行く。

松彦は先頭に立ち、小声で猪倉山の顛末の述懐と神への感謝を歌いながら進んで行く。万公は一行の最後について述懐を歌いながら下って行く。

万公は、自分の活躍によって里庄の娘スガールの婿となりたいと勝手な脱線歌を歌いだした。手前勝手な滑稽歌に、負傷していたスミエル、スガール、シーナ、道晴別も思わず吹き出してしばし苦痛を忘れた。

万公はこの他にもいろいろ面白い歌を歌い、一同は笑いにまぎれていつとはなしに玉木村のテームス宅門前まで無事に帰ることができた。
主な人物 舞台 口述日1923(大正12)年02月26日(旧01月11日) 口述場所竜宮館 筆録者松村真澄 校正日 校正場所 初版発行日1925(大正14)年3月30日 愛善世界社版20頁 八幡書店版第10輯 41頁 修補版 校定版20頁 普及版8頁 初版 ページ備考
OBC rm5502
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本文  鬼春別ほか三人はチェニェクもホーレージ・キャップも取外し、クリーケース気分に離れて、性来の本心にシンブリ・フヰケーシャンし乍ら、生れ赤児の様な気になつて、治国別と共にゴロゴロした岩と岩との間を伝うて、重い男を背に負ひ、一歩々々、三五教の祝詞は分らぬ為、バラモンの御経を唱へ乍ら、汗をタラタラ流して下り行く。鬼春別は今迄のゼネラル生活に似もやらず、苦力の様な御用を志願し、せめてもの罪亡ぼしと覚悟をきわめ、声を限りに、
『東方には降三世明王。南方には軍荼利夜叉明王。西方には大威徳明王。北方には金剛夜叉明王。中央には大日大聖不動明王。唵呼嚕々々、旋荼利摩登枳、唵阿毘羅吽見娑婆呵、吽多羅屯干𤚥、見我身者、発菩提心、見我身者、発菩提心、聞我名者、断悪修善、聴我説者、得大智慧、知我心者、即身成仏、知我心者、即身成仏、阿褥多羅三貘三菩提心、帰命頂礼、修法加持、南無波羅門大尊天』
と一生懸命に祈つてゐる。久米彦も負ず劣らず、鬼春別の顰に傚うて、経文を称へむとしたが、余りの苦しさに言句つまり、一生の肝玉を放り出して、三五教の讃美歌を捻り出し歌つて見た。不思議にも三五教の歌なれば、水の流るる如く、惟神的にほとばしり、身体の苦痛も何時しか忘れて了つた。
久米『神が表に現れて  善神邪神を立別ける
 何猪口才な三五の  神の使が如何にして
 神力無限の自在天  大国彦に敵し得む
 馬鹿を尽すも程がある  只一息に攻め寄せて
 三五教の神柱  一泡吹かしくれむずと
 はるばるハルナを立出でて  夜を日についで大野原
 険しき山を攀ぢ登り  沼河数多打渡り
 浮木の森に屯して  吾れは片彦将軍と
 馮河暴虎の勢で  河鹿峠を登り行く
 神の守りし此軍  いかでか敵に破れむや
 進め進めと下知しつつ  河鹿峠の八合目
 進む折しも宣伝使  治国別が現れて
 生言霊を打出し  其神力に圧倒され
 全体くづれ逃出す  其光景の惨めさよ
 おぢけついたる吾々は  進みもならず退くも
 吾神軍の体面に  拘り来る一大事
 暫くここで痩我慢  張つて時節を待つべしと
 鬼春別の将軍に  謀りて来るビクトリヤ
 渠が居城を襲撃し  凱挙げたる其時に
 天津乙女か天人か  但は神の御化身か
 譬方なきヒルナ姫  カルナの姫の両ナイス
 駕籠に舁がれ出で来り  吾等二人をいろいろと
 恋の魔の手にあやなして  吾全軍を紊しけり
 神ならぬ身の吾々は  女と思ひ気を許し
 いと残酷な恥をかき  男の面に泥を塗り
 悔しまぎれに猪倉の  山の岩窟に立籠り
 玉木の村のテームスが  館に美人ありと聞き
 部下の兵士遣はして  苦もなく奪ひ帰らせつ
 千変万化の秘術をば  尽して挑み戦へど
 挺でも棒でも動かない  意想外なるスガール姫の
 清き誠の剛情に  流石の吾等も辟易し
 持あぐみたる時もあれ  道晴別の宣伝使
 シーナと共に現れて  言霊車押出せば
 味方は一時に驚いて  一時のがれの窮策に
 前後見ずにふん縛り  千尋の深き陥穽に
 押込みたるぞ浅ましき  又もや第二の候補者を
 あさりて軍の無聊をば  慰めやらむと謀る内
 再び聞ゆる宣伝歌  雷の如くに響き来る
 吾身に巣ぐふ曲神は  驚き慌てふためきて
 肉体見すてて逃げ出す  それより吾等は夢も醒め
 曇り切つたる魂に  忽ち日月輝きて
 吾身の愚眛を自覚しぬ  ああ惟神々々
 尊き神は吾々を  未だ棄てさせ玉はぬと
 悟つた時の有難さ  旭は照る共曇る共
 月は盈つ共虧くる共  仮令大地は沈む共
 一旦神に従ひし  此久米彦はどこ迄も
 前非を悔いて三五の  教の為に身をつくし
 心を砕き只管に  真の務めに仕ふべし
 先づ第一に吾々は  神に帰順の首途と
 シーナの司を背に負ひ  此急阪を下りつつ
 行かれる道ぢやなけれ共  鍋をかぶつてテームスの
 館に進み今迄の  百の罪をば謝罪して
 三五教の信徒と  仕へ奉らむ惟神
 許させ玉へ大御神  国治立の大前に
 謹み敬ひ願ぎまつる』
と述懐を歌ひ乍ら下り行く。松彦は先頭に立ち、心静に小声で歌ひ乍ら降り行く。
松彦『音に名高き猪倉の  山の砦に三五の
 教の司四人連  スミエル、スガール両人を
 救はむ為に出でませし  道晴別の宣伝使
 シーナの司を救はむと  玉木の村のテームスが
 依頼を受けて登り行く  バラモン教の軍人
 三千余騎が立籠り  天地も震ふ勢に
 おめず恐れず惟神  神のまにまに出でゆけば
 無人の野辺をゆく如く  足も安々気も軽く
 事なく岩窟に立向ひ  思ひもよらぬゼネラルが
 清き心の御光に  吾等の胸も晴れ渡り
 敵と味方の隔てをば  科戸の風に吹払ひ
 恨も夏の山路を  神の恵の露に濡れ
 下りて来る勇ましさ  ああ惟神々々
 猪倉山の谷水は  いや永久に淙々と
 飛沫をとばし水晶の  玉を岩間にかざしつつ
 自然の音楽相奏で  吾等一行の凱旋を
 宛然祝する如くなり  木々の梢は青々と
 天津御風に吹かれつつ  清き音楽合唱し
 彼方此方に鳴き渡る  山時鳥声清く
 名さへも知れぬ諸鳥が  歓喜の声を張り上げて
 天の岩戸の御前に  楽を奏上したる如
 勇みの声は遠近に  耳をすまして聞え来る
 天国浄土の真相を  今目のあたりみる心地
 げにも楽しき次第なり  ああ惟神々々
 神の恵に包まれて  四人の難を救ひつつ
 玉木の村を指して行く  今日の旅路の楽しさよ
 ああ惟神々々  神の御前に成功を
 慎み感謝し奉る』
 万公は一行の最後より、山道を下り乍ら、歌ひ出したり。
万公『猪倉山の岩窟は  世に聞えたる大魔窟
 鬼が棲みしと世の人の  怖れてよらぬも無理ならず
 鬼雲彦の大棟梁  大黒主に仕へたる
 鬼将軍と聞えたる  鬼春別が陣取つて
 鬼か大蛇か曲津見か  八岐大蛇のする様な
 人の娘を誘拐し  酒の肴に朝夕に
 供へむものと企みたる  其計略も曝露して
 三五教の宣伝使  治国別の一行が
 案内もなしに穴の中  穴面白や面白や
 あんなを狙うた蛇蛙  今や呑まむとする時に
 ヌツと現はれ万公司  捻鉢巻もいかめしく
 ドンドンドンとつめよつて  鬼春別のゼネラルの
 肝を冷した健気さよ  ああ勇ましや勇ましや
 これから万公神司  玉木の里に立向ひ
 手柄話を打明けて  テームス夫婦を驚かせ
 其軍功を誇りつつ  金鵄勲章の代用に
 スガール姫を頂戴し  夫婦が手に手を取かはし
 御伴の役を辞職して  玉木の村の里庄とし
 傍神を念じつつ  安く一生を送らむと
 期待したりし吾願  漸く成就の暁に
 向つて来たか有難や  神の御為道の為
 お菊の奴を思ひ切り  又もやダイヤを諦めて
 三遍蛇の子のスガール姫  如何に無情な師の君も
 今度は聞いてくれるだろ  万公の様な人格者
 神の司は荷が重い  霊相応といふことを
 考へ遊ばし治国の  吾師の君よ改めて
 此縁談の斡旋を  すすめて下さい頼みます
 旭は照る共曇る共  月は盈つ共虧くるとも
 仮令大地は沈むとも  此事聞いて下さらば
 霊相応の働きを  致してお目にかけませう
 ああ惟神々々  キツと願望成就して
 里庄の家の婿となり  名を末代に輝かし
 村人達を三五の  誠の道に救ひやり
 三五教の神徳を  堅磐常磐にあらはさむ
 許させ玉へ師の君よ  金勝要の大御神
 イドムの神の御前に  今から願ひおきまする』
と自分勝手な脱線歌を歌ひ乍ら、山路を下り行く。道晴別、シーナ、スミエル、スガールは万公の歌を聞いて吹き出し、背に負はれ乍ら負傷の苦を忘れて、『アハハハ、オホホホ』と笑ひ出した。併し乍ら万公の此外のいろいろ面白き、間断なき歌に、一同は面白可笑しく笑ひに紛れ、いつとはなしに玉木の村のテームスが門前に無事に帰ることを得た。
(大正一二・二・二六 旧一・一一 於竜宮館 松村真澄録)
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