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文献名1霊界物語 第55巻 真善美愛 午の巻
文献名2第3篇 玉置長蛇よみ(新仮名遣い)たまきちょうだ
文献名3第16章 幽貝〔1424〕よみ(新仮名遣い)ゆうかい
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日2024-05-27 16:29:23
あらすじ
四人の修験者たちはシメジ峠の南麓に着いた。一通りなき、昼なお暗い坂道を、四人は宣伝歌を歌いながら登っていく。

シメジ峠の頂上に達し、四人は松の根に腰かけてしばし息を休め、述懐の歌を歌った。そして今度は峠の坂を降って行く。

四人はビクの国へは立ち寄らず、山道を分けて照国山の谷間の清めの滝に向かって進んで行った。
主な人物 舞台 口述日1923(大正12)年03月04日(旧01月17日) 口述場所竜宮館 筆録者北村隆光 校正日 校正場所 初版発行日1925(大正14)年3月30日 愛善世界社版204頁 八幡書店版第10輯 109頁 修補版 校定版215頁 普及版91頁 初版 ページ備考
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本文  鬼春別の治道居士  道貫素道求道居士
 此四柱の修験者  北の森をば立出でて
 ブーブーブーと法螺の貝  吹き立て山野の木精をば
 響かせ乍らスタスタと  杖を力に進み行く。
 治道居士は北の森を立出で、三人と共にシメジ峠の南麓に着いた。これから先は非常な難所が処々にある。人通りさへなき昼猶暗き樹木の茂る坂道を喘ぎ喘ぎ登り乍ら足拍子をとり歌ひ行く。
『猪倉山の峰続き  此処は名におふシメジ坂
 駒も通はぬ阪道を  神の手綱に曳かれつつ
 沙門の姿に身を変へて  至善至上の神の道
 治めて世人を救はむと  心の駒に鞭撻つて
 吾々四人は登り行く  ハアハアハアハアきつい阪
 御一同気をつけ成されませ  もしも転落した時は
 折角神に許された  照国山の荒行も
 サツパリ駄目になりまする  ああ惟神々々
 昨日に変る今日の空  ハアハアハアハア ウンウンウン
 実に騒がしき蝉の声  そのひぐらしの杣人も
 容易に渡らぬ此阪を  登るは苦しき様なれど
 山と積みてし罪科を  神の御水火に祓はれて
 栄え久しき天国に  上りて行かむ首途と
 思ひまはせばハアハアハア  何程阪は峻しとも
 如何でか怯まむ惟神  進めば広き平地あり
 此難関を乗り越えて  花爛漫と開きたる
 神の御園に進みなば  今絞り出す汗脂
 苦もなくここに拭き取られ  神の御国のエンゼルと
 此世ながらに健やかに  仕へて神と道のため
 世人のために面白き  尊き余生を送り得む
 悪逆無道の軍人  今は心も和らぎて
 大慈大悲の弥勒神  恵の露を蒙りつ
 ビクの神国を指して行く  ああ惟神々々
 神の恵の深くして  吾行く道に曲もなく
 悪しき獣の災も  あらずに進ませ玉へかし
 駒曳きつれて此阪を  下りし時のハアハアハア
 吾勢に比ぶれば  今は天地の相違あり
 悪鬼羅刹は忽ちに  仁慈無限のエンゼルと
 変化したるも三五の  神の司の御賜物
 仰げば高し久方の  天津御空に照り渡る
 月日の恵いと清く  四方の草木はスクスクと
 茂り栄えて天国の  姿を写す楽しさよ
 ああ惟神々々  神のまにまに進む身は
 いづくの空に至るとも  如何でか恐れむ敷島の
 大和心の照る限り  心も身をも筑紫潟
 高砂島の果て迄も  進みて行かむ神の道
 守らせ玉へ惟神  ウントコドツコイ ドツコイシヨ
 天地の主と現ませる  皇大神の御前に
 慎み畏み願ぎ奉る』
 エミシの求道居士は汗をタラタラ流し乍ら一行の前に立つて元気よく歌ひ乍ら上り行く。
求道『春は花咲き鳥歌ひ  草木の末も青々と
 茂り栄ゆる夏の日も  いつしか越えて秋の風
 木枯荒む冬の空  満天忽ち雪雲に
 包まれ月日を隠せども  軈て一陽来復の
 再び春が来る時は  又もや山野は爛漫と
 いと美はしき花ぞ咲く  世の有様を眺むれば
 これの地上に生れたる  人の身魂も何時しかに
 移り変らぬ事やある  バラモン軍のカーネルと
 数多の軍兵指揮なして  威張り散らした此エミシ
 今は全くハアハアハア  神の教に目を覚まし
 執着心を放擲し  現幽神界一体の
 救ひの道に進み入り  至善至上の御教を
 体得したる嬉しさよ  朝日は照るとも曇るとも
 月は盈つとも虧くるとも  地異天変は起るとも
 神に任せし此体  如何でか初心をドツコイシヨ
 翻さむや惟神  神に任せし此体
 照国山の谷間で  百日百夜の行修め
 神の御徳を身に享けて  世人を救ふ比丘となり
 月照彦の大神の  守らせ玉ふ月の国
 いや永久に開くべし  ああ惟神々々
 御霊幸ひましませよ』
 かく歌ひ乍らシメジ峠の頂上に達した。風に曝されて洒落きつた面白い松の木が六七本並んでゐる。四人は松の根に腰打掛け汗を拭ひ乍ら少時息を休めてゐる。

治道『見渡せば四方の山々青葉して
  心も清く晴れ渡るなり』

道貫『ライオンの川の流れは弥遠く
  帯の如くに見えにけるかな』

素道『見渡せば何処も同じ天国の
  姿なるらむ青々として』

求道『大空も大地の上も青々と
  綾を翳して塵もとどめず。

 年老いし松の木蔭に休らひて
  汗拭き払ふ峰の夏風』

治道『吹く風は天津神国の神人の
  御水火なるらむいとも涼しき』

素道『苦しみて漸くここに登り見れば
  涼しき風の吾を待ちぬる』

道貫『いざさらば此阪道を下るべし
  つづかせ玉へ神司等』

求道『これよりは愈下り阪となる
  されど身魂は神国に上る』

 かく歌ひ乍ら、四人は危き阪道を一歩々々注意しつつ下り行く。
 道貫は又歌ふ。
道貫『バラモン教の久米彦と  世に謳はれし将軍も
 時世時節の力にて  心の駒を立て直し
 自ら鞭撻つ膝栗毛  ビクビクビクとビクの国
 比丘の姿に身を窶し  心の鑑も照国の
 山の谷間に立向ひ  谷間を落ちる岩清水
 鼓の滝に身を打たせ  汚れ果てたる垢離をとり
 霊肉ともに清浄に  立直したるその上で
 ビクトル山の神殿に  参拝なして今迄の
 犯せし罪を悉く  謝り詫びてビクトリヤ
 王の御前に参向し  過ぎにし春の無礼をば
 拝謝しまつり三五の  誠の道の教へ子と
 仕へまつらむ吾心  守らせ玉へ惟神
 国治立の大神の  御前に慎み願ぎ奉る
 朝日は照るとも曇るとも  月は盈つとも虧くるとも
 仮令大地は沈むとも  誠の力は世を救ふ
 今まで悪を尽したる  心の暗き久米彦も
 忽ち日出の守護となり  吾精霊は天国に
 上りて神の栄光に  仕ふる身とはなりにけり
 ああ惟神々々  神の恵みを慎みて
 喜び感謝し奉る』
 素道は阪を下り漸く平地に着いて元気を恢復し、人並に歌はねばならぬと思つたか、妙な皺枯れ声を出して一歩々々拍子をとり歌ひ始めたり。
『三五教の宣伝使  治国別に助けられ
 誠の道を悟りてゆ  今迄つづけし罪業が
 いと恐ろしくなり来り  死後の生涯ある事を
 思へば短き現世にて  小さき欲に踏み迷ひ
 名利の奴隷となるよりも  一切万事執着の
 衣脱ぎ棄てて比丘となり  生れ赤児となり変り
 此世を捨てし修験者  本来此世は無東西
 何処有南北是宇宙  色即是空の世の習ひ
 空即是色の真諦を  漸く悟り吾々は
 剣を棄てて言霊の  神の依さしの御剣に
 持ち直したる嬉しさよ  ブーブーブーと法螺の貝
 吹き鳴らし行く嬉しさは  此世に生きて人欲に
 囚はれ居たる人の身の  転迷開悟の声聞いて
 目を覚ましたる鬨の声  そも法螺貝と云ふ奴は
 生たる時は声もなし  死んで死骸となりし時
 生言霊の息により  大なる声を張り上げて
 遠き近きの山彦を  驚かし行く健気さよ
 吾も現世に住まひては  いとも小さきものにして
 呼ばはる国は四方の国  轟く術もなけれども
 此世を去りて霊界に  復活したる其時は
 此法螺貝ぢやなけれども  其言霊は弥高く
 高天原に鳴り渡り  中有界や地獄界
 彷徨ひ苦しむ身魂をば  いとも尊き天国へ
 導き悟す瑞祥と  喜び勇み吹き立てる
 プープープープー プツプツプツ  ああ惟神々々
 御霊幸ひましませよ』
 かく歌ひ乍ら四人は列を正しうしてビクの国へは立寄らず、直ちに荊棘茂る山道を分けて照国山の谷間、清めの滝に向つて一目散に進み行く。

 死んでから大い声出す法螺の貝
 改心の言霊を吹く法螺の貝

(大正一二・三・四 旧一・一七 於竜宮館 北村隆光録)
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