元ビク国右守のベルツとその部下シエールは、反逆の罪で百日の閉門を申し付けられた怨みにより、照国岳の清めの滝に籠り、妖幻坊の魔法を習ってビクトリヤ城を転覆しようと水垢離を取っていた。
二人の前に妖沢坊と名乗る魔神が現れ、百日の間、蟹・イモリ・カエルのみを食して修業をしたら魔法を授けると託宣した。ベルツは三十日ばかりすると、毒に当たったか腹痛を起こして苦しみ出した。
シエールは主人の病気を治そうと滝に打たれていると、十一、二才の少女が現れて滝に飛び込んだ。シエールは、自分の祈りを聞き届けたエンゼルが現れたと勘違いして喜び、ベルツに報告に行った。ベルツも、その姿を見て天津乙女が助けに降ってきたを思い込んだ。
乙女はビクトリヤ王の娘・ダイヤ姫であり、父刹帝利の病気平癒の願掛けに来ていたのであった。そうとも知らず、ベルツとシエールは帰ろうとするダイヤ姫の前に出て、自分たちの大望を遂げさせて欲しいと、野心と計画の内容を話してしまった。
ダイヤ姫はベルツとシエールの企みを聞いて、名乗りを上げて正体を明かし、二人に改心を迫った。ベルツとシエールは、少女が仇と狙うビクトリヤ王の娘であると知って、姫を捕えてしまった。
二人は自分たちの企みや居場所を知ってしまった姫を害そうとしたが、姫の胆力と美貌を認めて、命が惜しければベルツの妻となってビク国簒奪の計画に参加するように口説いた。
ダイヤ姫はこれを拒絶し、ベルツとシエールは剣を引き抜いて姫に切りかかった。姫は剣をかわし、樫の大木を盾にして防いでいる。
そこへほら貝を吹きながら四人の山伏が観音経を称えながら登ってきた。ベルツとシエールは山伏の姿に驚いて、山頂をめがけて逃げて行った。山伏たちは治道、道貫、素道、求道の四人であった。