高姫は地獄に籍を置き、直ちに地獄に降るべき資格が備わっていたが、大神はその精霊を救おうと三年の間修業を命じ給うたのであった。
地獄界に籍を有する精霊はもっとも尊大にして自我の心強く、他に対して軽侮の念を持しこれを外部に知らず知らずの間に現すものである。自分を尊敬せざるものにたちまち威喝を現し、また憎悪や復讐の相好を現すものである。
一言たりともその意に合わざることを言う者は、慢心だとか悪だとか虚偽だとか称して、これを叩きつけようとするのが、地獄界に籍を置く者の情態である。
現界、霊界を問わず地獄にある者はすべて世間愛と自己より来る悪と虚偽に浸っている。その心と相似たる者でなければ、一緒に居ることは実に苦しく、呼吸も自由にできないくらいである。地獄における者は、悪心をもって悪を行い、悪をもってすべての真理を表明したり説明しようとする。
このような者が地獄界に自ら進んで堕ち行くときは、地獄の数多の悪霊が集まり来たり、俊酷獰猛な責罰を加えようとする。これは現界における法律組織とほぼ類似している。悪を罰する者は悪人でなければならないからである。
幽界においては善悪はそのまま表れるので、現界と違って誤解がない。また地獄界は悪そのものが自ら進んで堕ち行くのであるから、あたかも秤にかけたごとく、少しの不平衡もないのである。
地獄界の者は虚偽をもって真と信じ、悪をもって善と感じている。神の稜威も信真の光明も、地獄に籍を置いた人間から見たときは暗黒と見えるのである。
高姫は中有界に放たれて精霊の修養を積むべき期間を与えられたにもかかわらず、地獄の境涯を脱することができず、虚偽と悪を善と信じて拡充しようと活動を続けていた。そして四人の男女を吾が居間に導き、支離滅裂な教えを説きはじめた。
ヘルとケリナは、高姫の説教に納得がいかず、いちいち反論している。高姫は手を合わせてケリナの改心を祈っていると、どら声を張り上げて門の戸を叩く者があった。高姫は表へ出て行った。