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文献名1霊界物語 第56巻 真善美愛 未の巻
文献名2第3篇 月照荒野
文献名3第14章 方岩〔1444〕
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日2018-06-09 11:55:54
あらすじヘルはベルを介抱し、目を覚まさせた。二人はデビスが死んだものと思って、宝石を残らずはぎとってしまった。するとベルとヘルは、分け前を巡ってその場で争い始めた。激しい格闘の末、二人ともその場に倒れてしまった。
そこへ宣伝歌を歌いながら求道居士とケリナがやってきた。求道とケリナは倒れている三人を見つけ、ケリナは一人が姉のデビスであることを認めた。求道はデビス姫を方岩の上に運び、介抱した。
デビスは目をさまし、修験者が自分を助けてくれたこと、妹のケリナも一緒にいることを知った。そして二人に、こんなところに荒行に来て、盗賊二人に襲われたいきさつを話した。
求道は、倒れている盗賊が自分を殺そうとしたベルとヘルだと認めながら、神様はこの両人を使って我々に苦集滅道の真諦をお示しになったのかもしれないと宣し直し、水をくんで介抱した。
ヘルは気が付いて、涙を流して求道に謝罪した。そしてデビスから奪った宝石を懐から出して、返そうと差し出した。ベルはそれを横合いから奪い取り、足をチガチガさせながら長く伸びた草丈のなかに身を隠して消えてしまった。
求道はヘルにデビスを背負わせ、神言を奏上しながら月夜の道をテルモン山の神館指して進んで行った。
主な人物 舞台 口述日1923(大正12)年03月17日(旧02月1日) 口述場所竜宮館 筆録者松村真澄 校正日 校正場所
OBC rm5614
本文の文字数7248
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本文  ヘルは月影にベルの姿をよくよく見れば、目を眩してゐる。幸ひ傍に小さい水だまりがあつてそれに月が光つてるのを認め、口に水を含み来り、ベルの面や口などに幾回となく含ませた。漸くにして息を吹返し、四辺をキヨロキヨロ見廻し乍ら、
ベル『あーー、一体此処はどこだ。エライ所へ行つて来た』
と不思議相にヘルの面を覗き込んでゐる。ヘルは声を励まして、
ヘル『オイ、ベル、確りせぬか、汝今、ナイスに喉を締められ、目を眩してゐやがつたのだ。俺が今いろいろと介抱して助けてやつたのだ。サア、早く立たぬか、何時追手が来るか知れないぞ。此処は夜とはいへど通道だ、サア、確りした確りした』
と背中をポンポン叩いてゐる。
ベル『ああ矢張り夢だつたか、エライ所へ俺は行つて居つた。沢山な赤や青の鬼が鉄棒持つて四方八方より俺を追かけて来る其苦しさ、まア夢でよかつた。併しあのナイスは何うなつたか、取逃しただらうな』
ヘル『ナニ、汝が喉を締められヂタバタやつてるのを見るに見かねて、後から棒千切れでポンとやつた所、脆くも倒れよつたのだ。それみよ、そこに倒れてるだないか』
 ベルはダイヤモンドの光を見るより早く、
『ヤツ』
と云つたきり、猿臂を伸ばして頭の飾をむしり取り、矢庭に懐に捻込むだ。ヘルは、
『エー、毒をくはば皿までだ。人殺の大罪を犯したのだから宝石を盗んでも矢張り同じ事だ。同じ罪になるのなら、之でも奪つて太く短く暮さうかい』
と悪胴をすゑ、デビスのコルプスを探つて、光つた物は残らず剥ぎ取つて了つた。
ベル『アハハハハ、脆いものだな、併し之丈沢山な宝石を体につけやがつて、実に贅沢な者ぢやないか、今日の貴族生活をしてる奴は皆是だからのう、下の人間が苦むのも無理はないワイ。俺達は此宝石をどつかの町へ持つて行つて売とばし、罪亡ぼしに天下の貧民を与ふ限り助けてやらうぢやないか。そすりや人の一人位殺したつて万民を助けるのだから、大罪所か却て天から御褒美を頂くかも知れないぞ』
ヘル『天から御褒美を頂くことは到底望まれないとしても、せめて罪を軽うしてもらふ事は出来るだらう。兎も角汝の持つてゐる宝石を皆俺に渡せ、汝に持たしておくと又愛我心を起しよつて、貧民救済に用ゐないかも知れない。俺に持たしておけば此宝を善用して、汝の罪も軽くなり俺の罪も軽くなるやうにしてやるからなア』
ベル『馬鹿云ふな、汝のやうな風が吹いても慄うてるやうな人間に持たしておくのは険呑だ、剛胆不敵の俺のやうな人間の懐に持つてをれば、如何なる悪魔も狙ふこた出来ない、サア、スツパリこちらへ渡せ』
ヘル『馬鹿云ふない、俺が助けてやらなかつたら汝は此世に生きてるこた出来ぬのだ。そんな執着心はやめて、皆俺に渡すのだ』
ベル『汝はそんな態のよい事をいつて、俺から宝石を奪ひ取り、一人で猫婆をきめこむ積りだらう。今日の奴は慈善会だとか、或は孤児院だとかぬかして金を集め、皆自分の懐中を肥す奴許りだ。一旦泥坊に成り下つた人足が、慈善なんか夢にもあり相な事はないワイ。そんな偽善者に宝を持たしておくと、天下の宝を悪用するから、スツパリ俺に渡せ』
ヘル『何を吐しやがるのだい、汝も泥坊ぢやないか、俺に渡すのが険呑なら、汝に渡すのも険呑だ。サア、早く出さぬかい』
ベル『ヘン、一旦懐へ捻ぢ込んだ以上はメツタに渡さないぞ。第一黄金や宝石は此ベルのテースト物だから、仮令命が亡くなつても渡す気遣ひがないワ。グヅグヅぬかすと、汝の命も取つてやらうか、さすれば全部俺の懐へ這入るのだからなア』
ヘル『何猪口才な、美事取るなら取つてみよ、俺も汝の命を取つて、此宝石を全部私有物となし、ハルナの都へ帰つて、天晴れ紳士となる積だ。そして多額納税議員にでもなつて巾を利かす積だ。台泥でさへも衆議院議員に当選した例があるぢやないか。渇しても盗泉の水を呑まずとは、昔の奴のほざく言葉だ。俺は之から逐鹿場裡に立つて、此金を撒き散らし、社会の優者となる考へだから、其第一着手として、汝の所持品をスツカリ取つてやるのだ。汝の物を奪つた所で別に罪にもなるまい。又命を取つた所で元々だ。汝の死んでる所を助けたのだから……』
ベル『コラ、汝は宝をみると俄に噪ぎやがるのだ。汝は已に改心したと云つたぢやないか』
ヘル『きまつた事だい、つまらぬ時には誰だつて改心するが、宝を見て改心する奴があるかい。サア腕づくで之から奪り合だ』
ベル『ヨーシ、面白い、見事取つてみせう』
と両方から四股を踏み、手に唾し乍ら、辻相撲を取るやうな調子で、四つにからみ、組んづ組まれつ転げ廻る。互に固い爪で目をひつかく、鼻を削る、手も足も面も血達磨の様になつて格闘を始め双方共、グニヤグニヤになり半死半生の態で、其場にドツカと倒れて了つた。
 宣伝歌の声は夜嵐につれて、千切れ千切れに遠く聞えて来る、之は求道居士、ケリナ姫が夜道を急ぎ此方に向つて行進しつつ歌ふ声であつた。
求道『神が表に現はれて  善神邪神を立分ける
 此世を造りし神直日  心も広き大直日
 只何事も人の世は  直日に見直せ聞直せ
 世の過は宣り直せ  ここは名に負ふフサの国
 御空は高く月照彦の  神の命はキラキラと
 輝き玉ひ吾々が  淋しき野路を帰りゆく
 行手を照らさせ玉ふなり  ああ惟神々々
 三五教を守ります  高天原の霊国の
 珍の司と現れませる  稜威も殊に大八洲彦
 神の命の御神徳  忽ち下り来りまし
 吾等二人の危難をば  救はせ玉ひ久方の
 天つ御空に輝きつ  帰り玉ひし尊さよ
 バラモン教のカーネルと  選ばれハルナを立出でて
 鬼春別や久米彦の  両将軍に従ひつ
 山野を渡り河を越え  雨には浴し荒風に
 髪梳ずりやうやくに  河鹿峠の麓まで
 旗鼓堂々と進み行く  至善至愛の大神は
 善をば助け悪神を  懲め玉ふか吾々の
 率ゆる軍は悉く  治国別の言霊に
 打亡ぼされ這々の  態にて脆くも敗走し
 浮木の森やビクトリヤ  猪倉山にチクチクと
 予定の退却始め出し  三千余騎を従へて
 堅磐常磐の岩窟に  千代の固めと立籠もる
 又もや来る宣伝使  治国別の一行に
 誠の道を諭されて  曇りし胸も漸くに
 黎明告ぐる鶏の声  旭の豊栄昇る如
 霊もあかくなりにけり  鬼春別を初とし
 久米彦スパール両司  手もなく神の正道に
 帰順されたる不思議さに  吾も心を翻し
 バラモン教の御教は  げに美はしき道なれど
 不言実行と知りしより  すまぬ事とは知り乍ら
 掌の裏返す藤堂式  忽ち味方の軍隊に
 鉾を向けたる果敢なさよ  さはさり乍ら天地の
 誠に敵する事を得ず  大黒主の神様に
 言ひ訳立たずと意を決し  三五教の宣伝使
 たるを憚り中間の  法螺吹立てる修験者
 墨の衣に身を纒ひ  頭を円く剃りこぼち
 百の罪をば消滅し  天地の神に三五の
 誠を尽し奉らむと  照国山の谷間に
 百日百夜の荒行を  勤めて遂にビクトルの
 山にまします大神に  朝な夕なに仕へつつ
 ゼネラル様の許しをば  蒙り茲に宣伝の
 漸く旅路につきにけり  エルシナ川の畔迄
 スタスタ来り谷底を  見下す途端に訝かしや
 渦まく淵に浮びゐる  四人のコルプス見るよりも
 見逃しならぬ修験者  神に祈りて助けむと
 危き路を谷底に  降りてやうやう三人が
 命を助け喜びて  荒野ケ原を打わたり
 ここ迄進み来りけり  道の行手に諸々の
 悩みに会ひて玉の緒の  命も危き所をば
 月の光に助けられ  ケリナの姫と諸共に
 心勇みてテルモンの  山に現れます大神の
 宮居をさして進みゆく  吾身の上ぞたのもしき
 ああ惟神々々  神の恵みのいや深く
 教の露の何処までも  青人草の身の上に
 降らさせ玉へ月照の  皇大神の御前に
 赤心籠めて願ぎまつる  ああ惟神々々
 御霊幸ひましませよ』
 ケリナ姫は優しき声を張上げて又もや歌ひつつ進み来る。
ケリナ『天津日かげは西山に  傾き玉ひ東の
 草野を分けて昇ります  月照彦の御光は
 草葉の露に悉く  宿らせ玉ひて吾々が
 行手の道を守ります  野山の猛き獣や
 いと恐ろしき毒虫も  神の恵に抱かれし
 吾身を害ふ事ならず  先を争ひ逃げ出し
 吾等は無事にテルモンの  父の館に久々に
 帰りゆく身となりにけり  吾足乳根の父母は
 変らせ玉ふ事もなく  神の御前に朝夕に
 いと忠実に仕へますか  恋しき姉のデビス姫
 いかに此世を果敢みて  暮させ玉ふことならむ
 妾が今宵帰りなば  父と母とはいふも更
 恋しき姉の君迄も  必ず喜び迎へ入れ
 吾生命を救ひたる  エミシの君を尊みて
 厚く待遇し玉ふべし  思へば思へば有難や
 恋の迷ひの夢も醒め  心を月に照らしつつ
 夏の夜路を帰りゆく  吾身の上ぞ楽しけれ
 ああ惟神々々  御霊幸ひましませよ
 旭は照るとも曇るとも  月は盈つ共虧くる共
 仮令大地は沈む共  星は空より墜つる共
 吾身を救ひ玉ひたる  三五教の大御神
 求道居士が師の君の  恵はいかで忘るまじ
 命の親の師の君と  手を携へて行く野路は
 如何なる曲の現はれて  行手にさやる事あるも
 いかでか恐れむ惟神  尊き神の御守りに
 いと安々と帰りゆく  ああ惟神々々
 御霊幸ひ玉へかし』
と歌ひつつ、方岩の間近に帰つて来た。
 求道居士はケリナ姫と共に漸く方岩の傍に着いた。草の中にウンウンと怪しい声が聞えて来るのでツと立止まり、よくよく見れば何者か半死半生の態で呻吟いてゐる。
求道『ハテナ、二三人の人間が斯様な所で倒れてゐるやうだ。大方最前のベル、ヘル如き悪人に金を奪はれた上、切られて苦んでゐるのだらう、何は兎もあれ、此儘見逃して通る訳には行かぬ。ケリナさま、貴女は此岩に腰かけて待つてゐて下さい、一寸査べてみますから……』
ケリナ『ハイ、妾何だか、気にかかつてなりませぬワ、私の姉さまぢや厶いますまいかな。先づ第一女の方から査べて下さいませ。此衣類から考へますれば女らしう厶います』
 求道は月にピカピカ光つてゐる衣装を目当に近よつて見れば、耳から多量の血糊を出し、妙齢の女が倒れてゐた。
求道『ああこれはどこかの貴婦人だ。一通の家の娘ではないやうだ。コレ、ケリナさま、一寸来て御覧、此衣装と云ひ、どうも浄行の嬢さまらしう厶いますよ』
 ケリナはハツと胸を轟かし乍ら、側近く寄添ひ、よくよく顔をみれば、擬ふ方なき姉のデビスであつた。ケリナは見るよりアツと許りに仰天し、其場に倒れて了つた。求道居士は驚いて、四辺に光る水を掬ひ、先づ第一にケリナの面部に注ぎ漸くにして呼生け、ヘタヘタになつてゐる姫を方岩の上に運びおき、自分の蓑を布いて、其上に寝させ、デビスの介抱にかかつた。デビスはウンと息吹返し、四辺を見まはし乍ら修験者の姿を、不思議相に凝視てゐる。求道はヤツと安心して、
求道『モシモシ、貴女はテルモン山の神館に坐します小国別様のお嬢さまぢや厶いませぬか。拙者は三五教の修験者エミシで厶います。決して悪い者ぢや厶いませぬから、御安心なさいませ』
 デビスは此言葉を聞いて安心し、頭部の痛みを抑へ乍ら、
デビス『どうも危い所をお助け下さいまして、此御恩は海山にも譬へ難う存じます。悪者に出会し、頭部を擲りつけられ、気が遠くなつて居りました。貴方様がお通り下さらなかつたら、妾は最早千秋の恨を呑んで此世を去つたに違ひありませぬ、どうも有難う厶いました。ああバラモン大神様、よくマア助けて下さいました。惟神霊幸はひませ』
と合掌してゐる。ケリナ姫は姉のデビスと聞いて嬉しさに堪へず、方岩から下り来つて、デビスの手を執り、涙の声を絞り乍ら、
ケリナ『姉上様、お懐しう存じます、私は妹のケリナで厶います。御両親様や姉上様に御心配をかけまして誠に申訳が厶いませぬ。何卒お許し下さいませ。そして御両親は御無事でゐられますかな』
と畳みかけて問ひかけた。デビス姫は頭がフラフラとしてややもすれば気が遠くなり行くのをキツと気を張りつめて、妹の手を握り、
デビス『ああ恋しき妹であつたか、不思議な所で会ひました。ようマア無事でゐて下さいました。モウ之で私は命が亡くなつても、あなたの顔さへ見れば得心で厶います』
ケリナ『お姉様、気を確に持つて下さいませ。そんな心細い事を云はない様に頼みます。さぞエライお怪我でお苦しう厶いませうが之から私が館へ帰り、心限りの御介抱を申上げますから御安心なさいませ。キツと神様の御神徳で御全快なさいますからな。貴方は今此修験者に助けられたのですよ。私も此お方に命を助けられ、今送つて戴いて、御両親の館へ帰る途中で厶います。どうしてマアこんな惨酷しい目にお会ひなさつたので厶いますか』
デビス『実の所は大黒主様のお宝、如意宝珠の神宝が紛失致しまして、それが為に父上は大変な御心配を遊ばし、病気に取りつかれ、御老体の事とて、日に日に病は重る許り、そこへあなたの行方が分らなくなつたものですから、益々御心配を遊ばし……私はとても命は長持てはせないが、せめて生前にケリナに一目会うて死にたいものだ……とお歎き遊ばすので、私は立つてもゐてもをれなくなり、今日で三七廿一日の間、国人が恐れて昼さへも、よう近づかない、魔の山と称へられてるスガの山の森林に通ひ、アン・ブラツクの滝にかかつて、荒行をすませ、今日は行のあがりで、此処迄やつと帰り、方岩の上で満願の御礼や祈願を籠めてゐる最中、二人の悪者が現はれて、こんな目にあはしたので厶いますよ。ああ修験者様のお蔭、妹が助けられ、私迄が助けられたとは、何たる深い因縁で厶いませう。修験者様誠に有難う厶います。茅屋なれど、吾館へお越し下さいまして、緩り御逗留下さいませ。定めて両親は申すに及ばず、数多の役員や信者も喜ぶことで厶いませう』
求道『ハイ有難う厶います、申上げたい事は海山厶いますが、貴女は大変な御負傷をしてゐられますから、お気を揉ませ、種々の事を聞かせては、却つてお障になりますから御全快の後緩りと申上げます。何卒気を緩りと落着けて下さいませ』
デビス『ハイ有難う厶います、何分宜しうお願申します』
ケリナ『お姉さま、あなたを苦めた奴は此処に倒れてゐる両人では厶いませぬか』
 此言葉にデビス姫は後振返りみれば、以前の悪者が二人大の字になつて唸つてゐる。
デビス『ああ此賊で厶います。鬼春別将軍だと法螺を吹いて居りましたが、どうで碌な奴ぢや厶いますまい』
 此言葉に求道居士はハツと胸を躍らせ、真青な顔をし乍ら、
求道『ハテさて浅ましい事だ、ゼネラル様は又もや邪道に逆転遊ばしたのかなア。何した悪魔が魅入れたのだらう。何は兎もあれ、実否を査べてみよう』
と心に囁き乍ら、よくよく見れば、以前のベル、ヘルの両人であつた。
求道『ああ此奴は、ケリナさま、最前吾々を殺さうとしたベル、ヘルの両人です。テもさても困つた奴ですなア』
ケリナ『何と呆れた者ですなア。併し何程悪人だとて、此儘放つておけば死んで了ひますから、助けておやりなさいますでせうなア』
求道『尤もです、何程悪人でも見捨てて行く訳には行きませぬ。吾々が悪人か、此男が悪人か、到底人間では分りませぬ。仁慈の神様は吾々の心を矯直さむと、此等両人をお使ひ遊ばし、お前の心は此やうなものだとお示しになつてるのかも知れませぬ。此等両人を使つて、吾々に苦集滅道の真諦をお示しになつたのかも知れませぬ。さうすれば此両人は吾々の絶好唯一のお師匠様と思はねばなりませぬ。ああ惟神霊幸倍坐世』
と水をくくんで、両人の介抱を懇切にやつてゐる。漸くにして二人は気がついて起き上り、血みどろの体を曝して、求道の前に両手を突き自分の不都合を涙と共に謝罪した。求道は二人の心を憐れみ、力限りに祈願を籠め、懐より、照国山の渓間にて採取したる石綿を取出し、血糊を拭ひ取り天の数歌を二三回繰返した。ヘルは涙を流し乍ら、
ヘル『貴方は求道様で厶いましたか。命を助けて頂き乍ら、自我心の欲にからまれ、こんな不心得な事を致しました。之は姫様の衣装からぼつたくつた宝玉で厶います。スツパリお返し申します。何卒之をお受取り下さいませ』
と懐から差出すを、ベルは目敏く眺め、横合からグツと奪ひ取り懐に捻ぢ込み、足をチガチガさせ、丈余も伸びた草の中に身を隠し、何処ともなく消えて了つた。求道居士はヘルの背中にデビス姫を負はせ、神言を奏上し乍らケリナと共に後先になつて、月夜の露路を踏み分け、テルモン山の神館を指して帰り行く事となつた。
(大正一二・三・一七 旧二・一 於竜宮館 松村真澄録)
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