ワックスは、悪友のエキスとヘルマンや、三五教の三千彦、また水平会なる団体を敵視し、これらに対抗するために悪酔怪なる団体を考え出した。弱きをくじき強気に従うという奇妙奇天烈な結社である。
ワックスは創立委員長としてテルモン山の議事堂に集まり、オークスに開会の辞を朗読せしめた。そして一条の演説を試み、三五教の三千彦、エキス、ヘルマンらは弱者なるがゆえに、悪酔怪設立の趣旨にしたがって彼らを除くべく会員たちに協力を願いたてた。
群衆の中からエキスが怒って現れ、我々に六百両を脅し取られたワックスこそ弱者だと述べ立てた。そして宮町の家々の宝が盗まれたのはワックスの仕業だと暴露した。
ワックスは経緯を詳しく知っているエキスこそ犯人に違いないと言い返した。群衆はこのやり取りを聞いて、ワックスとエキスをなぐり殺せと猛り狂った。ワックス、エキス、オークス、ビルマは細くなって抜け出し、テルモン山の山奥に逃げて行ってしまった。
エルが演壇に登って大声で演説を始め、ワックスとエキスは皆の肝玉を試そうとわざと活劇を演じて見せたのだ、と群衆を抑えにかかった。そして三五教の宣伝使こそが我々の共通の敵だとなだめた。
そして悪酔怪の設立を祝して酒宴を開くことを提案した。集まった荒くれ男たちは歓呼の声とともに踊り狂い、議事堂はたちまち床が墜落し、数百の鼠がおどろいて戸外に飛び出し、草むらに逃げて行く。