テルモン山麓の楠の岩窟には、姉のデビス姫を悪孤の化け物として押し込めてあった。ワックスは夜ひそかに燈火を点じて訪れた。デビス姫は窟内に端座して述懐を歌っている。
ワックスは述懐の歌にデビス姫がどれだけ自分を恨んでいるかを知った。そこで悪事をすべてエキスとヘルマンに押し付けて、自分はさもデビス姫を助けに来た風を装って話しかけた。デビス姫はワックスと知ると聞く耳持たず、厳しく罵った。
ワックスは嘘の説明が通用しないと見てとると、あからさまに姫を脅してものにしようと本性を現してきた。デビス姫は怒って、岩片をワックスめがけて投げつけた。
ワックスは怒り、デビス姫を竹槍で突き殺そうとした。あわやというときに猛犬スマートが駆け来たり、ワックスの利き腕にかじりつき、ワックスはその場に倒れてしまった。スマートはうなりながら姿を隠した。
しばらくしてワックスは気が付き、腕の血をぬぐってあたりの草で応急処置をすると、ほうほうの態で館に帰って行った。