悪酔怪員はあちらこちらに三々五々集まり、犬に噛まれた無念話の花を咲かせており、中には怒る者もあり、酒をあおって蛮声を張り上げ、自暴自棄的にさざめいている。
そこへワックスが、包帯を腕に巻き付けて驢馬にまたがり、オークスとビルマをしたがえてやってきた。ワックスは十字街頭に立ち、豆太鼓と摺り鉦をはやし立て、馬上に立って大喝し、悪酔怪員を呼び集めた。
またたくうちに怒れる老若男女は数百人集まってきて鬨の声を上げた。オークスがまず大道演説を始め、三五教をやっつけよと群衆をたきつけた。群衆がオークスに賛同すると、ワックスは包帯をほどいて傷を見せ、自分の働きを語って鼓舞した。
ワックスはめいめい得物をもって館に押し寄せ、三千彦を捕えようと言葉巧みに説きたてた。群衆は竹槍や長剣をふるって、ワックス指揮のもとに列を正して館の門前に押し寄せた。
門前に押し寄せた群衆を前に、ワックスはふたたび馬上演説をなし、小国別、、小国姫、姫たちをはじめ、三千彦ら三五教徒を捕縛するよう下知した。群衆がわっと門内に乱入しようとするとき、スマートがいずこよりともなく現れて、山岳も揺れるばかりの唸り声を発した。
群衆がこの唸り声に辟易して進みかねていると、スマートは群衆の中に矢のように飛び入って縦横無尽に駆け回り、悪酔怪員のみを目がけて咬み倒した。
群衆は驚きあわてて色を失い、おのおの思い思いに命からがら逃げ散って行った。ワックスはオークス、ビルマ、エルをしたがえて自分の館に帰って行く。