ワックスが我が家に馳せ帰ると、父のオールスチンはほとんど虫の息となっていた。ワックスは驚き、病床に駆け寄って涙の声でいつになく優しく加減を尋ねたが、オールスチンは瞑目してしまった。
ワックスは看護婦に当たり散らし、出て行くようにと怒鳴りつけた。ワックスは、出て行こうとする看護婦の荷物に難癖をつけて荷物改めをした。すると中から白い煙が音を立てて立ち上がり、中からデビス姫とケリナ姫がニコニコしながら立ち現われた。
ワックスは驚いて腰を抜かし、のどが詰まって震えている。オークスとビルマはその間にソファーを取り除け畳をめくり、オールスチンが隠しておいた金銀の小玉を引っ張り出して、看護婦のトランクに詰めると、倒れているワックスを嘲笑して表に駆け出してしまった。
エルはこの有様を見ると慌てて面に駆け出して、自分が見たことをわけのわからない歌にして歌って、十字街頭で触れ回っている。
親爺がせがれに渡さずに残した金銀は天下の所有品だと触れ回るのを聞いた群衆は、葬式がてら金銀をせしめようとワックスの館に集まってきた。