奥の一間には小国姫、ニコラス、三千彦ほか一同が打ち解けて神徳話に余念なく、茶をすすりながら懇親を結んでいる。そこへ門前が騒がしくなり、猛犬の叫び声が聞こえた。三千彦は悪酔怪員の暴動と見て、様子を見に表に駆け出した。
ニコラスはハンナを三千彦と共に向かわせた。すると三千彦が昼夜念頭を離れなかった恋しい師の君玉国別が、良友の真純彦、伊太彦とともにニコニコとして門内に入ってくるところに出くわした。
三千彦は声も出ないばかりに驚いた。伊太彦に呼びかけられてようやく三千彦は胸をなでおろし、涙を流しながら、一行に分かれてからバラモン教の聖場に入り込んで種々雑多の苦労をしたことを報告した。
玉国別はバラモン軍と悪酔怪員の同士討ちを鎮めなければと心配したが、ここはスマートに一任することにして、三千彦に案内されて館の奥の間に進んで行った。
バラモン軍の副官ハンナは部下たちが味方と戦闘しているのを見逃すわけにも行かず、驢馬にまたがって混戦の中に入り、声をからして鎮まるように下知を下した。この声に敵味方ともに水を打ったようにぴたっと戦闘は停止した。
スマートは駆けてきてワックス、エキス、ヘルマン、エルの四人を引き倒してハンナの前に引き出し来て、これらを縛れ、とワンワン吠えたてた。ハンナは四人を縛り上げて馬場の前の大杭にしばりつけた。悪酔怪員は弱きをくじき強気に従う会則を順守し、一人も残さずこそこそと家路についた。
トンクは驢馬にまたがり、十字街頭の鐘路に現れ、臆病風に吹かれた数多の男女を集めて一場の訓戒演説をはじめた。そして、三五教は三千彦に加えて三人の宣伝使が加わり、またニコラスも三五教と同盟した上に猛犬スマートが付いている以上、悪酔怪会則にしたがって降参して三五教側につくべきだと説いた。
多数決を取ったトンクに対し、人々を黒い尻をまくって否決の意を表した。そこへタンクが現れて金銀をまき散らし、自分を会長に推挙するよう人々に呼びかけた。タンクが新会長に選ばれ、トンクは副会長になりそこねてすごすとと姿を隠した。
タンクは強きについて三五教に従うのだと滑稽な歌を歌いながら、群衆の先頭に立って門内に進んで行った。