スマの浜辺では、バーチル家の僕アキスとカールが水平線を眺めていた。バーチル家では、主人のバーチルと僕のアンチーが漁に出たまま三年も帰らないため、二人を死んだものとして葬儀を出していた。
しかし女主人のサーベルが三日前から突然、旦那のバーチルが帰ってくるから浜に迎えに行けと僕たちに命令し始めた。二人は命令にしたがって浜に来ているが、合点がゆかず、サーベルの命令への文句やバーチル家の行く末についてあれこれ話している。
そこへ酒に酔ったテクという男がやってきてアキスとカールに絡み始めた。テクはバラモン軍から金をもらって目付をやっている男であった。テクは二人をひとしきり言い争いをした後、ひょろひょろと千鳥足で港方面を指して去って行った。
アキスとカールはその様子を見て笑い歌っている。するとはるか向こうの水面に船の白帆が見えだした。二人は半信半疑で近づく船を眺めて待ちあぐんでいる。
白帆の形は次第に大きくなり、へさきに立っている人の影も見えるくらいに近づいてきた。二人は何とはなしに心勇み磯端に飛び回っている。