バーチルの館では、番頭のアキスが来客を喜ばせようと力を尽くし、歌を歌って酒の座の興を添えていた。
チルテルはいつの間にか十数人の部下を引き連れて奥の間に闖入し、眠っているデビス姫に猿轡をはめて引っ抱え、館の裏門から抜け出して自分の館に帰り、倉の中に隠しておいた。
三千彦が目を覚ますと、デビス姫がいなくなっている。伊太彦は酒宴に興じながら裏門の方にブラリブラリと廻った。すると十数人の男たちが、女らしきものを担いで逃げて行くのが見えた。
伊太彦は、夜目にデビス姫がさらわれたのではないかと案じ、寝室に戻って三千彦に問いただした。三千彦は確かにデビス姫がいなくなっており、また眠っている間に姫がバラモン軍にさらわれた夢を見たと語った。
伊太彦は自分が見たことを話し、デビス姫がチルテルにさらわれたことを確信した。二人は玉国別に内緒で酒宴を抜け出してデビス姫を救出しにチルテルの館に向かった。