三千彦と伊太彦はデビス姫とともにチルテルの館を抜け出そうと、庭先を木蔭に隠れながら進んで行った。すると足元の落とし穴にかかり、滑り落ちてしまった。三人は怪我もなく地底の一間に安着した。そこには思いもよらぬ広い洞があり、燐光がきらめいていた。
辺りには燐鉱があってその光が洞窟内を照らしている。三人が出口を探していると、伊太彦は広い岩室があるのを見つけた。筵が敷き詰めてあったので、三人はそこで休んだ。
地上が明るくなると、どこからともなく光がさしてきて、燐鉱は弱まった。伊太彦は岩室の入り口に宿屋の番頭を気取って頬杖ついて横たわっている。そこへヘールが落ちてきた。
落とし穴の底で声をかけられたヘールは驚いたが、伊太彦は近頃ここで岩窟ホテルを開業したのだとからかう。ヘールは面白がって部屋に入って行く。
次にチルテルが落ち込んできた。チルテルは、ここは自分の館内の落とし穴だと伊太彦にくってかかるが、伊太彦は番頭ぶった滑稽を並べ立て、煙に巻いてしまう。チルテルもいぶかりながら部屋に入って行く。
部屋に入ってきたヘールが、三千彦とデビス姫をホテルの従業員扱いするので、二人はいぶかっている。チルテルがやってきたのを見たヘールは、テクに相撲で負けたことをからかう。