真善美を尽くした二棟の宮殿は、玉国別以下一同の丹精によってようやく完成した。東の宮には大国常立大神を祀り、西の宮には大国彦命を鎮祭することになった。
玉国別は斎主となり、荘厳な遷宮式を挙行した。大国常立尊の御神体としてはバーチルの家に古くから伝わる直径三尺三寸の瑪瑙の宝玉に神霊をとりかけた。大国彦命の御神体としては、直径三寸ばかりの水晶の玉に神霊をとりかけた。
バーチルは東の宮の、サーベル姫は西の宮の神主となり、朝夕心身を清めて奉仕することになった。
祭典は無事に終了し、直会の宴が開かれた。おのおの神酒をいただきながら、思い思いに今日の盛事を祝した。バーチルは祝歌を歌い、サーベル姫は花を手に取り音楽に和して歌いながら舞った。
サーベル姫は歌い終わると一同に拝礼し、里人への財産提供の準備をなすべく、数多の猩々に前後を守られて館に引き換えした。