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文献名1霊界物語 第60巻 真善美愛 亥の巻
文献名2第2篇 東山霊地よみ(新仮名遣い)あづもすれいち
文献名3第9章 夜光玉〔1534〕よみ(新仮名遣い)やこうのたま
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日2016-09-04 20:14:47
あらすじ
三人がさらに進んで行くと、青白い玉が二つ三つ現れて、ワックスの一二間前で爆発した。エルは驚いて倒れてしまった。

伊太彦は、自分たちはタクシャカ竜王への赦免を伝える使いだから、悪魔がそうそう苦しめることはないだろうと安堵させた。そして元気をつけるために宣伝歌を歌い始めた。

一行が進んで行くと、雷のような音が聞こえた。そこには相当に広い河があって、冷たい水が流れていた。岩のすき間から明りが指しているので探してみると、一丈もある鍾乳石の上に夜光の玉が輝いていた。

伊太彦は天津祝詞を奏上して神慮を伺った。神示によると、これはタクシャカ竜王の宝物・夜光の玉であり、この玉を竜王に持たせると再び風水火の天災を引き起こすから、月照彦の神がここに安置したのだという。

そして、この玉は伊太彦が持ち帰って玉国別に渡すようにとのお告げであった。伊太彦は喜んで玉を懐に入れ、地底を指して進んで行った。岩窟の奥底には岩蓋が施してあり、ここにタクシャカ竜王が封じられていた。

伊太彦は神示を述べ伝え、心の底より悔悟するなら救われると竜王に呼びかけた。するとタクシャカ竜王は恐ろしい九頭一体の巨躯を表し、たちまち白髪赤面の老人となって伊太彦の前に進み、恭しく目礼しながら歌をもって答えた。

竜王は改心の情を歌に込めて表した。伊太彦は歌でもって、地上に上るように竜王を促した。互いに歌を交換し、一行は竜王を従えて隧道を戻って行った。
主な人物 舞台 口述日1923(大正12)年04月07日(旧02月22日) 口述場所皆生温泉 浜屋 筆録者加藤明子 校正日 校正場所 初版発行日1925(大正14)年8月12日 愛善世界社版107頁 八幡書店版第10輯 633頁 修補版 校定版114頁 普及版60頁 初版 ページ備考
OBC rm6009
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本文  エルは怪物に肝玉を取られ、色青冷め、臆病風に誘はれて、そろそろ慄ひ出した。
ワックス『オイ、エルの奴、些と確りせぬかい、睾丸を提げた一人前の男が、蜘蛛の化物位に驚いて、どうして此探険が出来ようか。今迄俺達が所在悪業を尽した罪を償ふ為に今度は抜群の手柄を現はさにやならぬぢやないか、本当に腰抜ぢやなア』
エル『さう叱るものぢやないワ、今迄の俺ならもつと勇気を出すのぢやけれど、ブラ下げる睾丸が無くなつて居るのぢやから、サウ註文通りにゆかないワ。そこは一つ同情して呉れないと困るぢやないか』
ワックス『何だ、その間抜た面は、僅の顔面に、免役地や、未開墾地や、荒蕪地が沢山現はれとると思へば矢張り間に合はぬ代物だつたワイ。モシ伊太彦さま此んな奴、これから奥へ連れて行かうものなら、吾々の迷惑ですから、此処から一層帰してやつたらどうでせうか』
伊太彦『それも好からう。サア エル是から免役だ。トツトと帰つたら好からうぞ』
エル『ハイ有難う。そんなら何卒、入口迄送つて下さいますか』
伊太彦『そいつは些と困つたなア』
ワックス『オイ エル確りせぬかい、人は心の持ちやう一つだ。サア一人帰つたがよからう。此金剛杖一本あれば大丈夫だから』
エル『そンなら仕方がない、三人の中間になつて跟いて行く事にしよう』
ワックス『ハヽア、たうと屁古垂れやがつたな。そンなら、伊太彦さま、悪にも強けりや善にも強い此ワックスが先頭に立ちませう、こいつは面白い』
と、四股踏み乍ら、燐光に光る岩窟の隧道を、一歩々々探るやうにして進み入る。向の方から二三個の光つた玉が地上三尺許りの所を浮いたやうに此方に向つて進んで来る。よくよく見ればその青白い玉の中には、嫌らしい顔がハツキリと現はれて居る。エルは腰を屈め、ワックスの背に顔を当て乍ら、足もワナワナ跟いて行く。青白い火団は強大なる音響と共に三個一度にワックスの一二間前の所で爆発した。エルはキヤツと叫んでワックスの肩を掴んだ儘倒れた。止を得ずワックスも其場にドンと倒れて仕舞つた。
伊太彦『オイ、ワックスさま、エルさま、起きた起きた、敵は粉砕の厄に遭つて消え失せて仕舞つた。もう大丈夫だ。神様の御威光に怖れ脆くも滅亡したと見える、アハヽヽヽ』
ワックス『これしきの事に驚くワックスぢやありませぬが、エルの奴人の首筋を掴ンだまま倒れやがつたものだから、可惜勇士も共倒れの厄に遭ひました。オイ、エル確りしやがらぬか』
エル『イヤもう確りする。哥兄お前確りして居て呉れよ。お前と伊太彦さまとさへ強ければ大丈夫だからなア』
ワックス『何と云うても数千年来密閉されてあつた魔の岩窟だから、種々の奇怪千万な珍事が勃発するのは覚悟の前だ。サア行かう、タクシャカ竜王に対し吾々は赦免のお使だから、さう無暗に悪魔が俺達を困める筈がない。エルが怪物に手を噛まれたのも矢張りエルが悪いのだ、弄はぬ蜂は螫さぬからなア。サア一つ機嫌を直して宣伝歌でも歌つて元気をつけようぢやないか。俺が歌ふから後から共節について来い。何だか何処ともなしに気分の好い、事はない魔の岩窟だ。
 朝日は照るとも曇るとも  月は盈つとも虧くるとも
 岩窟の蜘蛛は化けるとも  何か怖れむ三五の
 神の使と現はれし  伊太彦司を始めとし
 ワックス、エルの三柱だ  三千世界の其間
 アヅモス山の底津根に  封じ込まれた竜王の
 罪をば赦し救ひ上げ  尊き神の御使と
 なさむがために来りけり  仮令如何なる怪物が
 雲霞の如く潜むとも  神の力を身に浴びて
 進む吾身は金剛不壊  如意の宝珠の玉なるぞ
 水に溺れず火に焼けず  錆ず腐らず曇らずに
 幾万年の後迄も  天地の宝と光りゆく
 来れよ来れ曲津神  蜘蛛も蛙も虫族も
 神力無双の吾々に  手向ふ事は出来よまい
 今現はれた三つの玉  怪しき面を晒しつつ
 吾等が前に進み来て  木つ端微塵に粉砕し
 煙と消えし哀れさよ  吾神力は此通り
 岩窟に潜む曲神よ  吾言霊を聞きしめて
 決して無礼をするでない  洒落た事をば致すなら
 決して許しはせぬ程に  ワックスさまの身魂には
 鬼も大蛇も狼も  ライオン迄も棲んで居る
 さうかと思へば天地を  完全に委曲に固めなし
 造りたまひし大御祖  尊き神が神集ひ
 無限の神力輝かし  控へて厶るぞ気をつけよ
 あゝ惟神々々  息が塞がりそになつた
 伊太彦司よ今此処で  一寸休息仕り
 天津祝詞や神言を  奏上なして岩窟の
 妖気を払ひ参りませう  あゝ惟神々々
 叶はぬ時の神頼み  誠に済まぬと知り乍ら
 斯うなりやもはや仕様がない  此処で一服仕る』
 伊太彦一行は又もや隧道をドンドンドンと下り行く。其処には雷の如き音が聞えて居る。ハテ不思議と、一町許り又平坦な隧道を下つて行くと、相当に広い河があつて岩から出て岩に吸収さるる如く氷の如き冷たい水が流れて居る。三人は流れを渡つて向うへ着いた。此処には大小無数の色々の形をした岩が、キラキラ光つて立つて居る。さうして何処ともなしに岩の隙間から明がさして居るのは一つの不思議である。ハテ不思議と三人は四辺を見廻せば、鐘乳石の一丈も有らうといふ立柱の上に、夜光の玉が輝いて居るのが目についた。伊太彦は此処にて天津祝詞を奏上し、神慮を伺つて見た。神示に依れば此玉は夜光の玉であつて、タクシャカ竜王が宝物である。されど此玉を彼に持たせ置く時は、再び天地の間に跋扈跳梁して風水火の天災を誘起するをもつて月照彦の神がこれを取り上げ、此処に安置しおき、岩窟の底深く竜王を封じ置かれたとの事であつた。さうして此玉は伊太彦が自ら持ち帰り玉国別に渡せとの神示である。伊太彦は大に喜び、種々と工夫を凝らして其玉を手に入れ恭しく懐に納め、又もや天の数歌を歌ひながら、地底の岩窟をさして際限もなく進み行く。懐に蔵せし玉の光によつて地底の岩窟も明くなり、崎嶇たる、或は細く、或は狭き岩穴を潜つて最低の岩窟についた。此処には岩蓋が施して、タクシャカ竜王、即ち九頭竜が堅く封じ込めてあつた。
 伊太彦は佇立して神示を宣り伝へたり。
『神代の昔高天にて  天地の主と現れませる
 大国常立大神は  宇宙万有造りなし
 神の形の生宮を  最後に造りなさむとて
 天足の彦や胞場姫の  珍の御子をば生みたまふ
 かかる所へ天界の  海王星より現はれし
 汝タクシャカ竜王は  神の御国を汚さむと
 胞場の身魂に憑依して  神の教に背かしめ
 蒼生草を悉く  罪の奴隷と汚したる
 悪逆無道を矯めむとて  皇大神の勅もて
 月照彦の大神は  汝を此処に封じまし
 世の禍を除かれぬ  さはさりながらタクシャカの
 霊の邪気が世に残り  八岐大蛇や醜狐
 曲鬼数多現はれて  神の造りし御国をば
 汚し曇らす果敢なさよ  此世の曲を清めむと
 厳の御霊の大御神  瑞の御霊の大神は
 千座の置戸を負ひたまひ  汝が犯せし罪科を
 宥して地上に救ひ上げ  尊き神の御使と
 なさせたまはむ思召  汝タクシャカ竜王よ
 吾が宣り伝ふ言の葉を  心の底より悔悟して
 喜び仰ぎ聞くならば  今こそ汝を救ふべし
 善悪邪正の分れ際  完全に委曲に復命
 申させたまへ惟神  神の御言を蒙りて
 茲に誠を述べ伝ふ  一二三四五つ六つ
 七八九つ十百千  万の神はアヅモスの
 此聖場に集まりて  三千世界を水晶の
 世に立直し天地の  一切衆生を救ひます
 畏き御世となりけるぞ  あゝ惟神々々
 此処に伊太彦現はれて  汝が清き返答まつ』
と宣り終れば、タクシャカ竜王は、見るも怖ろしき九頭一体の巨躯を現はし、各二枚の舌を吐き出し乍ら、口許から、青、赤、紫、白、黄、橄欖色などの煙を盛んに吐き出し、忽ち白髪赤面の老人となり、赤色の衣を全身に纒ひ、岩窟の戸をパツと開いて伊太彦の前に進み恭しく目礼しながら、歌をもつてこれに答へた。
タクシャカ『三千年の古より  月照彦の大神に
 押し込められし吾こそは  タクシャカ竜王魔の頭
 暴風起こし火を放ち  豪雨を降らして天地を
 自由自在に乱したる  吾は悪魔の霊ぞや
 罪障深き吾こそは  八千万劫の末迄も
 常暗なせる岩窟に  捨てられ苦しむものなりと
 覚悟を極め居たりしが  茲に一陽来復し
 仁慈の神の御恵に  再び吾を世に出し
 救はむ為の御使  謹み感謝し奉る
 いざ此上は一日も  早く地上に救はれて
 天地の陽気を調節し  蒼生草や鳥獣
 草木の末に至る迄  神のまにまに守るべし
 救はせたまへ神司  今迄犯せし罪を悔い
 茲に至誠を吐露して  改心誓ひ奉る
 あゝ惟神々々  御霊の恩頼を給へかし』
と言葉も爽かに答へた。伊太彦は、

伊太彦『タクシャカの神は心を改めて
  服ふと云ひし言の葉尊き。

 いざさらば早く此場を出でまして
  登らせたまへ地の表に』

タクシャカ『有難し花咲く春に廻り会ひ
  君に遇ひたる今日の嬉しさ。

 今迄の悪しき行改めて
  誠一つに神に仕へむ』

伊太彦『此頃の知辺なしとも地の上に
  因縁ありせば安くかへらせ』

 斯く互に歌を交換し、タクシャカ竜王を従へ、ワックス、エルの両人に先頭をさせ乍ら、隧道を、或は登り、或は下り、左右に屈曲し乍ら漸くにして、元の入口に登りついた。
(大正一二・四・七 旧二・二二 於皆生温泉浜屋 加藤明子録)
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