翌日、伊太彦一行はアスマガルダの船に乗ってスーラヤ山指して進んでいく。アスマガルダは舟歌を歌い、伊太彦とブラヷーダは竜王を言向け和すという神業への決意の歌を歌った。
一行は島に上陸し、しばらく登ったところの大岩石の陰に身を潜めて湖上の旅の疲れをいやした。そして明朝登山することと決めた。
深夜になると、あたりの密林の枝をガサガサとゆすり、青い舌を垂らし錫杖をついた怪物が一行の寝所に近づいてきた。怪物は雷のような声を張り上げて、伊太彦を怒鳴りつけた。
伊太彦は目を覚まし、怪物を認めるととどろく胸をぐっと抑え、「惟神霊幸倍坐世」を高唱すると、怪物に向かって言霊で応酬した。
伊太彦は怪物に言い負けると敗北すると聞いていたので、空元気を出してこちらから言霊の問答を仕掛けた。
怪物は伊太彦の粗を並べ立てて責めたてた。またスーラヤ山の中腹に死線という毒が充満する恐ろしい場所があることを明かして登山の意気をくじこうとした。
しかし伊太彦も屁理屈で応戦して一歩もひかなかった。ついに怪物は捨て台詞を吐いて、いずこへともなく消えてしまった。
アスマガルダ兄妹とカークス、ベースは恐ろしさにふるえながら問答を聞いていたが、怪物が伊太彦を言い負かせず消えたので、やっと胸をなでおろした。
その後は何事もなく夜が明け、五人はウバナンダ竜王が潜む岩窟を目指して進んでいくことになった。