一行五人はスーラヤ山の中腹まで登ってきた。夜前妖怪が言っていた死線地帯にたどり着いた。
死線を突破するために伊太彦を導師として天津祝詞を奏上し、天の数歌を歌いながら勢いにおまかせて駆け上った。一行は死線を乗り越えられたことにそれぞれ感謝の歌を歌った。
伊太彦は一行を励ましながら岩窟の側近くにやってきた。深い井戸のように縦穴があいており、底には夜光の玉がいくつともなく光っているのが見えた。
伊太彦は藤蔓を切って太い縄にない、岩窟の一端にくくりつけて底深く降りて行った。一行も勇気を鼓して伊太彦に続いた。
岩窟の底からまた横穴がい開いていて無数の玉が光っている。奥を見ると、ウバナンダ竜王がたくさんの眷属をつれて蜿蜒とわだかまっていた。
伊太彦はもろ手を合わせて柏手を打ち、天津祝詞を奏上しようとした。しかしどうしたものかにわかに舌はこわばり、一言も発することができなくなってその場に昏倒してしまった。
一行五人も同様にその場に枕を並べて昏倒してしまった。