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文献名1霊界物語 第64巻上 山河草木 卯の巻上
文献名2第4篇 遠近不二よみ(新仮名遣い)えんきんふじ
文献名3第20章 福命〔1649〕よみ(新仮名遣い)ふくめい
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日2017-12-05 12:00:01
あらすじ
主な人物虎嶋寅子、菖蒲のお花、曲彦、守宮別 舞台小北山のユラリ教 口述日1923(大正12)年07月13日(旧05月30日) 口述場所 筆録者北村隆光 校正日 校正場所 初版発行日1925(大正14)年10月16日 愛善世界社版227頁 八幡書店版第11輯 462頁 修補版 校定版227頁 普及版62頁 初版 ページ備考
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本文  虎島寅子は待ち焦れてゐた守宮別が瓢然と帰つて来たので、雀躍りをし乍ら、いそいそと座敷中を舞ひ歩き、
『サアお花さま、お酒の用意だ。曲彦さま、お肴の用意だよ。コレ久之助さま、何をグヅグヅしてる、大広木正宗さまのお帰りだよ。男と云ふものは気の利かぬ者だな』
と口汚く指図してゐる。バタバタゴトゴトガタガタチヤランチヤランと音をさせ乍ら、漸く酒肴の用意が出来た。守宮別は洋服を脱ぎ棄て、洗濯物の袷と着替へて、ドンと胡座をかき、つり上つた目を一入小さうしてキユウキユウと喉を鳴らせ乍ら盛に左を利かしてゐる。守宮別は酒に酔へば何もかも忘れて了ふ困つた男である。酔が廻つて、そろそろ唄ひ出した。菖蒲のお花もお寅も曲彦も車座となつて「ヤートコセイ、ヨーイヤナー」で唄ひ始めたり。
『日の出神のお頼みで  世界の端々きはめむと
 乞食のやうな姿して  一人の女をちよろまかし
 香港上海北京まで  うろつき廻つて尋ねて見たが
 寅子姫さまの云ふやうな  肉体持つた日の出さま
 根つから見当り申さ何だ  懐ダンダン淋しうなり
 飲み度い酒まで飲めぬやうに  なつて来たので是非もなく
 自分の惚れたクリスチヤンの  黒い顔した別嬪と
 再び支那の上海に  せうことなしに引返し
 いろいろ雑多の各国の  人の話を聞いて見たが
 如何しても斯うしても分らない  此奴ア駄目だと決心し
 転覆丸に乗り込んで  日出の島へ帰つて見れば
 過激団から一万両  金を貰ふたに違ひない
 ちよいと此方に出て来いと  可憐い女と一所に
 暗い処に放り込まれ  いろいろ雑多と調べられ
 今は晴天白日の  身となつて帰つて参りました
 ホンに外国行きと云ふ事は  気骨の折れた事だわい
 俺はもう之から外国は  仮令日の出神さまが
 行けと云つても行きはせぬ  ホンに馬鹿をば見て来たものだ
 今日はドツサリ酒飲んで  旅の疲れを直さねば
 腹の虫奴が承知せぬ  ヤツトコサのウントコシヨ
 ウントコ、ドツコイお寅さま  ヤツトコ、ドツコイお花さま
 世界が転覆したとても  酒さへあれば守宮別は
 誠に天下は太平だ  飲めよ騒げよ一寸先や暗だ
 暗の後には月が出る  月はつきぢやが運のつき
 愛想のつきた瑞の月  お前等の知らぬその中に
 西の都のエルサレム  橄欖山の山麓に
 日の出神の再臨が  間近くなつたと云ひ乍ら
 桶伏山の聖地から  チヤンダーさまの内命で
 ブラバーサが行つたと云ふ  新聞記事を上海で
 私は一寸見て来たよ  グヅグヅしてるとチヤンダーに
 折角仕組んだ計画を  打壊されるに違ひない
 皆さま気をつけ成されませ  ウントコ、ドツコイ、ドツコイシヨ
 ドツコイ辷つて灰小屋へ  転げて倒れて灰まぶれ
 アフンとしたとて仕様がない  夜食に外れた梟
 六かし顔をせぬやうに  忠告しやうと思た故
 荒波渡つて遥々と  ここ迄帰つて来ましたよ
 あゝ惟神々々  目玉飛出しましませよ
 旭は照るとも曇るとも  月は盈つとも虧くるとも
 仮令大地は沈むとも  此結構なお仕組を
 日の出神が知らぬとは  世間へ顔出しなるまいぞ
 早く用意をするがよい  アハヽヽハツハ阿呆らしい
 イヒヽヽヒツヒ異国まで  ウフヽヽフツフ、ウロウロと
 エヘヽヽヘツヘえらまれて  オホヽヽホツホ恐ろしい
 カカヽヽカツカ過激派の  キキヽヽキツキ危険をば
 ククヽヽクツク潜り抜け  ケケヽヽケツケ怪体の悪い
 ココヽヽコツコ困窮して  ササヽヽサツサ探り行き
 シシヽヽシツシしみじみと  ススヽヽスツスすかぬたらしい
 セセヽヽセツセ攻められて  ソソヽヽソツソ底抜けの
 タタヽヽタツタたわけをば  チチヽヽチツチ力の限り
 ツツヽヽツツツ尽しました  テテヽヽテツテ天手古舞ひ
 トトヽヽトツト遠い国で  ナナヽヽナツナ難儀して
 ニニヽヽニツニ二年の間  ヌヌヽヽヌツヌ盗人が
 ネネヽヽネツネ寝息をば覗ひすまして  ノノヽヽノツノ喉締める様な悪性な
 ハハヽヽハツハ放れ業  ヒヒヽヽヒツヒ昼夜も
 フフヽヽフツフ不断の活動やつて来た  ヘヘヽヽヘツヘ屁古垂れて
 ホホヽヽホツホほろほろと  ママヽヽマツマまごつき乍ら
 ミミヽヽミツミ身の苦しみも  ムムヽヽムツム無理に忍んで
 メメヽヽメツメ名誉の為に  モモヽヽモツモ唐土の空まで
 ヤヤヽヽヤツヤやつとの事で  イイヽヽイツイ行て来た私
 ユユヽヽユツユ夢にだも  エエヽヽエツエ会得の出来ないお仕組を
 ヨヨヽヽヨツヨよく探り  ラリルレロの濁り水
 ワワヽヽワツワ渡つて越えて  ヰヰヽヽヰツヰ今ここへ
 ウウヽヽウツウ嬉しくも  ヱヱヽヽヱツヱヱンヤラヤツト
 ヲヲヽヽヲツヲお帰りなさつた守宮別  大切にせないと冥加が悪い
 アヽ燗酒ぢや燗酒ぢや  冷酒よりも燗がよい
 塩辛肴を出すよりも  甘鯛の一塩買ふて来て
 アツサリ飲ましたら、どうだいのう  ウントコドツコイドツコイシヨ』
とソロソロ酔がまはつて立ち上り唄ひ出し、徳利や皿鉢膳等を踏み潰し、バタリとその場に倒れグウグウと鼾をかいて寝て了つた。
 寅子、お花の両人は一生懸命に守宮別を別室に担ぎ込み、足を撫でたり、団扇で煽いだり、あらむ限りの誠を尽し、介抱を為しゐたりけり。
 小北山の松の木の欝蒼とした枝から梟が、「愚迂々々々々々々々々、阿呆々々々々」と啼いてゐる。
(大正一二・七・一三 旧五・三〇 北村隆光録)
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