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文献名1霊界物語 第65巻 山河草木 辰の巻
文献名2第4篇 神仙魔境よみ(新仮名遣い)しんせんまきょう
文献名3第19章 谿の途〔1675〕よみ(新仮名遣い)たにのみち
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日----
あらすじ
主な人物 舞台 口述日1923(大正12)年07月17日(旧06月4日) 口述場所祥雲閣 筆録者加藤明子 校正日 校正場所 初版発行日1926(大正15)年4月14日 愛善世界社版212頁 八幡書店版第11輯 685頁 修補版 校定版222頁 普及版96頁 初版 ページ備考
OBC rm6519
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本文  神の教の三千彦は  行き疲れたる折柄に
 白骨堂の大前に  見知らぬ女に廻り遇ひ
 悲しき女の境遇に  同情し乍らスタスタと
 センセイ山の谷間を  冷たき風に吹かれつつ
 右に左に飛び越えて  漸く広き田圃道
 チヤムバカ(黄色花)バータラ(重生花)バールシカ(夏生花)
 ナワマリカー(雑蔓花)やスマナー(悦意花)の
 所狭きまで匂ひたる  野道をスタスタ進み往く。
三千彦『何と此辺は珍らしい花が咲き、馨しい香を放つて居るぢやありませぬか。まるで第一天国の原野を旅行して居るやうで厶いますなア』
スマナー『ハイ、此処は仙聖山の麓の仙聖郷と申まして、此世の楽土と称へられた秘密郷で厶いますが、今は薩張人間の心が悪化して了ひ、油断も隙もならない修羅道となつて仕舞ひました。此の道にいろいろの香ばしき花は艶を競ふて咲いて居りますが、村人の心の花はいつの間にか薊の花となり、刺だらけでうつかり手出しも出来ないので厶います。村の名は仙聖郷でも、人の心は修羅道ですから、其積りで居て下さい。油断も隙もならない所で厶いますからなア』
三千『物質万能主義の空気が、斯様な仙郷迄襲ふて来たと見えますな。世の中も是では終りで厶いますわい。大神様のお言葉には「神のつくつた結構な神国が指一本入れる所も、片足踏み込む所もない」と大国治立の神様のお歎きですが、いかにもすみずみ迄もよく汚れたもので厶いますなア』
スマナー『あまり村人の同情心が無いので、妾もこの仙郷が嫌になつたので、お恥かし乍ら夫の後を追ふて、冥途往きをせうと思ふたので厶います。私の従弟に、テーラと云ふ、それはそれは意地の悪い男が厶いまして、両親、夫の無くなつたのを幸ひ、朝から晩迄吾家に平太り込み、酒をつげ、肩をうて、足をもめ、○○○を○○○と無体の事を申ますので、夫れが嫌さに家を飛び出し、死を決したので厶います。何れ吾家へ帰ればテーラが主人顔をして頑張つて居りませうから、其お積りで来て下さいませや』
三千『ハイ承知致しました。これから宣伝使の武器と頼む、言霊の宣伝歌を謡ひ乍ら参りませう』
スマナー『どうかお願ひ申ます。歌と云ふものは何となく心の勇むもので厶いますからなア』
 三千彦は声を張り上げて謡ひ出した。
三千彦『天地万有悉く  霊力体の三元を
 もつて創造なし給ひ  蒼生や山川の
 御霊を守りたまはむと  千々に心を砕きまし
 海月の如く漂へる  陸地を造り固めつつ
 神人和楽の天国を  地上に建設なしたまひ
 教を開きたまふ折  天足彦や胞場姫の
 醜の身魂になり出し  八岐大蛇や醜神の
 曲の猛びに世の中は  日に夜に月に曇り果て
 常世の暗となりにけり  荒ぶる神の訪なひは
 五月蠅の如くわきみちて  山の尾上や河の瀬に
 うらみ歎きの声許り  醜神達は時を得て
 いとも尊き皇神を  世の艮に逐ひ下し
 吾物顔に世の中を  乱し行くこそ憎らしし
 音に名高き仙郷も  醜の曲霊の醜魂に
 かき紊されて修羅道の  現出したるか浅ましや
 斎苑の館を立ち出でて  曲の征討にたち向ふ
 三千彦司此処にあり  いかなる曲の猛びをも
 生言霊の神力に  言向け和し仙郷の
 御空を包む雲霧を  伊吹払ひに払ひのけ
 神代乍らの仙郷に  ねぢ直さむは案の中
 確に胸にしるしあり  喜びたまへスマナー姫
 三千彦現はれ来る上は  仮令テーラの三五人
 万人一度に攻め来とも  如何で恐れむ敷島の
 神国魂打ち出して  郷の空気を一洗し
 小鳥は謡ひ花匂ふ  昔の儘にかへすべし
 あゝ惟神々々  神は吾等と共にあり
 人は神の子神の宮  大御心に叶ひなば
 地獄畜生修羅道も  天国浄土の心地にて
 やすやす浮世を渡り得む  喜びたまへスマナー姫』
と謡ひ乍ら、稍広き原野を、家の棟の見ゆる所迄進んで来た。スマナーは後振り返り、
スマナー『もし宣伝使様、あの山の麓にバラバラと家棟が見えるで厶いませう。そして一番高い所の山のほでらに可なり大きな家が見えるで厶いませう。あれが妾の住家で厶います』
三千『成程黄昏の事とてハツキリは分りませぬが、余程大家と見えますな』
スマナー『イエイエお恥かしい、破屋で厶います。サアもう一息で厶いますが、貴方も随分お疲れのやうで厶いますから、此処で一休みして帰る事に致しませうか。何れ心の悪いテーラが頑張つて居りませうから、日が暮れてからの方が様子を考へるに都合がよいかも知れませぬからなア』
三千『成程なア、夫がいいでせう。都合によつては一つ面白い芝居が出来るかも知れませぬからなア』
 茲に二人は半時許り雑談に耽り、黄昏の暗を幸ひ、村中で一番高い屋敷に建つた、スマナーの館をさし帰り往く。
(大正一二・七・一七 旧六・四 於祥雲閣 加藤明子録)
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