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文献名1霊界物語 第68巻 山河草木 未の巻
文献名2第2篇 恋火狼火
文献名3第6章 信夫恋〔1730
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日2018-06-17 21:19:52
あらすじそこへ、奥女中のシノブが、太子の話し相手になろうとやってくる。アリナは断るが、シノブは引き下がらない。
シノブは太子とアリナの話を聞いており、アリナの変装を見破っていた。シノブはアリナに思いを寄せていたのだが、秘密を知ったのを幸い、アリナに恋の強談判に来たのであった。
アリナはとっさに決心して、シノブを受け入れることにする。シノブはあろうことか、アリナが太子と成り代わり、シノブを王妃としてタラハン国を乗っ取ろうと持ちかける。アリナはシノブの大胆不敵さにかえって意気投合する。
シノブは一度女中部屋へ帰るが、深夜になって、アリナのところへ忍んでくる。アリナとシノブがいちゃついている最中、警鐘が乱打され、二人は左守の館方面に、大火災が起こっているのを認める。
主な人物 舞台 口述日1925(大正14)年01月29日(旧01月6日) 口述場所月光閣 筆録者松村真澄 校正日 校正場所
OBC rm6806
本文の文字数5712
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本文  夕陽山の端に傾いて、遠寺の鐘ボーンボーンと鳴り響き、諸行無常の世の有様を警告してゐる。間毎々々に照り輝く銀燭の光に、変装太子の面貌は益々清く麗しく、錦衣を着用したる其姿は、スダルマン太子にも一層優りて威風備はり見えた。アリナはどことはなしに心引かれ、咳払ひさへも忍ぶ様な気になつてゐた。そこへ衣摺の音しとやかに簾の外に頭を下げ、二拍手し乍ら、
女『恐れ乍ら殿下に申上げます。今晩はお伺ひ申す所、御寵臣のアリナ様はお宅へ御帰り遊ばし、殿下御一人、御淋しさうな御面持、御話相手にでもならして頂きませうと存じ、女の身を以て、恐れ気もなく、私かに忍んで参りました』
 此奥女中はタラハン城市の豪商の娘で、行儀見習ひとして、殿中に女中勤めをしてゐる者である。そして其名をシノブといふ。アリナは言葉も荘重に、
『アイヤ、其方は奥女中のシノブではないか。余は女に用向はない。すぐ様罷りさがつたが可からう』
シノブ『イエイエ、どう仰せられましても、今晩はアリナ様の御不在を幸ひ、殿下に親しくお目にかかつて、申上たい事が厶いますので、何と仰せられましても、一歩もここは引下がりませぬ』
アリナ『不届千万な、其方は余の言葉を用ひないのか』
シ『ホヽヽ、どうして殿下のお言葉が用ひられませう。妾が此殿中へ女中奉公に参りましたのは何の為だと思召しますか。貴方に会ひたさ、お顔が見たさに』
ア『これは怪しからぬ。苟くも神聖なる殿中に於て、なまめかしい其言葉、不貞腐れ女奴、淫奔者奴。其方は身分を心得ぬか、さがり居れツ』
 シノブは、『ホヽヽヽ』と笑ひ乍ら、押強くも簾をポツとはね上げ、アリナの膝近く進みより、穴のあく程アリナの顔を見て、ニタニタ笑ひ乍ら、
『オツホヽヽヽ、何とマア、能く御似合遊ばすこと、なア変装太子様。私本真者の様に思ひましたよ。狐の七化狸の八化よりも上手ですワ』
ア『コリヤ シノブ、見違ひを致すな。余は決して偽者ではない。正真正銘のスダルマン太子だ。女の分際として、玉座の前を恐れぬか』
 シノブは横目をし乍ら、アリナの膝をグツとつめり、
シ『モシ、アリナさま、駄目ですよ。サアどうか私の云ふ事を聞いて下さいますか、聞いて下さらな、何もかも大王様の御前で素破抜きますよ』
ア『アツハヽヽ、たうとう尻尾をつかまれたか、エー仕方がない。之程よく化けてゐるのに、なぜお前は俺の変装太子たる事が解つたのだ。コリヤうつかり油断は出来ぬワイ』
シ『大王様が御覧になつても、現在のお父上が御覧になつても、本当の太子様とより御見えにならないのですから、誰だつて偽太子と思ふものはありませぬワ。併し、私が殿中へ御奉公に参りましたのは実は貴方に御近づき申したい許りで厶います。何時ぞや園遊会の時右守司の御屋敷でお目にかかつてから、恋とかいふ曲者に魂を取りひしがれ、寝ても醒めても貴方のお姿が忘れられないので、父母にいろいろと無理を云うてねだり、右守に沢山の賄賂を贈り、ヤツとの事で奥女中になつたので厶います。一度親しくお目にかかつて、吾思ひの丈を申上げたいと、間がな隙がな伺つて居りましたが、何時も貴方は太子様のお側付、お一人になられた事がないので、ここ一年許りはお話する機会もなく、煩悶苦悩の結果、此通り身体がゲツソリと痩せました。今日は貴方のお後を慕ひ、一間に忍んで様子を考へてゐれば太子様との秘密話、正しく太子様の身代りとなつて、貴方はゐられることと堅く信じ、簾越によくよく窺へばまがふ方なきアリナ様、サアもう斯うなつた以上は厭でも応でも妾の恋を遂げさして下さいませ。スバール姫様とかいふ天成の美人を、貴方はお迎へにゐらつしやつたやうですが、何程美人だつて、体が金で拵へても厶いますまい。妾だつて、まんざら捨てた女ぢやあるまいと自信して居ります。アリナ様、何うで厶いますか、手つ取り早くお返詞を願ひます』
 アリナは心の中にて、
『ヤア失敗つた。コリヤ一大事が突発した。併し乍ら、のつ引ならぬシノブの強談判、ムゲに排斥する訳にもゆこまい。否之を排斥せうものなら、恋の仇、身の怨敵となつて吾身に迫り来り、終ひには身の破滅になるかも知れぬ。そして又此シノブはスバール姫に比べては、容色少しく劣つてゐるやうにもあるが、縦から見ても横から見ても十人並以上の女だ。一歩進んで此奴を恋女にした所で、余りアリナの沽券が下がるでもあるまい』
と咄嗟の間に決心を定め、ワザと言葉やさしく、
ア『ヤア、シノブ殿、人目を忍ぶ二人の仲、あたりに気をつけめされ。此アリナも木石ならぬ身の、一目其方の姿を見染てより、煩悩の犬に取りつかれ、心猿意馬は狂ひ出し、矢も楯もたまらなくなつて、今日が日までも堪え堪えし恋の淵、涙に沈むアリナが胸、何として其方に言ひよらうか、女にかけては初心の吾、恋てふものの心に芽を出してより、其方に会ふも心恥かしく、文の便さへも、躊躇してゐたのだ。今日始めて其方のやさしい心を聞いて、余も満足に思ふぞや』
シ『ホヽヽヽ、余も満足とはよく出来ました。そんなら私の恋はキツと叶へて下さるでせうな』
ア『シノブどの、余の恋を、其方も叶へてくれるであらうなア』
シ『ハイ、殿下の思召、何しに反きは致しませう。どうかエターナルに愛して下さいませ』
ア『併しシノブどの、かうなつた以上は太子のお身代りになつて、高麗犬然とこんな窮屈な目をしてゐる訳には行かない。今頃は太子様もスバール姫と甘い囁きを交換してゐられるだらう。アーア、それを思へば、本当に馬鹿らしくなつて来た。一層の事、お前と手に手を取つて九尺二間の裏店住居、世話女房とお前はなつて、簡易な平民生活を送らうぢやないか。お前の為なら、私は乞食をしても満足だから』
シ『ホヽヽヽ、スダルマン太子と同じやうな事を仰有いますな。モシ、アリナ様、物も相談ですが、太子様は平民生活が好きだと云つてゐらつしやつたぢやありませぬか。之を幸ひに、貴方はどこ迄も太子となりすまし、タラハン国の王者となり、そして妾を王妃にお選び下さいませぬか、こんな嬉しい事はないぢやありませぬか』
ア『何と肝の太い事をいふぢやないか。流石の俺も肝をつぶしたよ』
シ『ホヽヽヽ、能うそんな事が仰有られますワイ。貴方は最前から、「一層の事、太子になりすまして、天一坊も跣足で逃るやうな陰謀を遂行してやらうか」と、独語して厶つたぢやありませぬか。其お言葉を聞いて、益々貴方の偉大な人物たる事を知り、恋慕の念が一層高まつて来たのですよ。どうか心の底から打とけて何も彼も仰有つて下さいませ。妾は町人の娘だつて天下を覗うてゐる大化物ですよ。女子大学を卒業して、才媛の誉を取つたシノブ姫ですもの。唯単なる恋愛のみに魂を奪はれませうか。現在のタラハン国を根本的に救済せむとする大人物はなきやと、平常も気の利いたらしい男の性行を調査して居りましたが、其適当な人物は貴方を措いて外にない事を悟りました。初めは貴方を大人物と知り、将来大事を成すべき大人格者と信じ、接近の機会を得むと、種々と手だてを以て、此殿中の女中勤めと迄成りおうせ、太子様や貴方の御行動を監視して居りましたが、余り立派な御心掛を悟り、貴方に対する真の恋愛心が燃立つて来たのですよ、ホヽヽヽ。どうか永久に可愛がつて下さいませ。そして妾と共に国家改造に力を尽して下さいますでせうね』
ア『足許から鳥が立つとは此事だ。此殿中に奉仕してゐる老若男女は、何奴も此奴も虫の喰つた古い頭のガラクタ許りだと思つてゐたのに、お前のやうな新知識に生きた天才が潜んでゐるとは、流石の俺も、今の今迄気がつかなんだ。ヤ頼もしい、願つてもない事だ。では余は飽く迄もスダルマン太子となりすまし、お前はここ暫くの間奥女中となつて、時々顔を見せて呉れ。そして看破されないやう、影になり日向になり、余の身辺を保護するのだよ』
シ『冥加に余る太子殿下のお言葉、謹んでお受仕ります。必ず必ず御心配遊ばしますな』
ア『ヤ、出かした出かした、汝の一言、余は満足に思ふぞよ』
と早くも太子になつた心持で、言葉使迄改めて了つた。
シ『モシ、殿下様、余り永らくなりますと、疑はれる虞が厶いますから、今晩は之にて罷り下がりませう。何分宜しく願ひます』
ア『ヤ、満足々々、汝が居間に帰つて安眠したが可からう』
シ『左様ならば、殿下にもお寝み遊ばしませ。妾は女中部屋へまかり下りませう』
とソロリソロリと心を後に残して、ニタツと微笑乍ら吾居間さして帰り行く。
 アリナはシノブが帰り行く姿を見送り、
ア『アヽ、何と良いスタイルだらう。ああして裾を引きずり、シヨナリ シヨナリと歩いて行く姿は俺の欲目か知らね共、スバール姫以上だ。ヤツパリ俺も色男だなア。今晩は太子様があの若々しい、淡雪のやうなスバール姫の胸を抱いてお寝みになるのに、自分は独り膝坊主を抱いて、けなり相に夜の目もロクに眠られず、こがれ明すかと思つたに不思議なものだ。ヤツパリ一つある事は二つある。太子様も満足なら、俺も満足だ。併しあのシノブ、気が利かない。人目を恐れて女中部屋へ帰つて了ひよつた。俺の方から私かに通ふ訳にも行かず、さうすれば太子の権威はゼロになる。もし彼奴にして俺をどこ迄も熱愛してゐるならば、今夜は一睡もようしまい。キツと恋愛といふ曲者に引つけられて、のそりのそりと吾居間へ忍んで来るかも知れない。
 もえさかる胸の焔を打消して
  しばし忍ばむしのぶ恋路を。

 人の目をしのぶ二人の仲ならば
  しばし忍ばむ恋の暗路を。

あーあ、何だか妙な気分になつて来たワイ。モ、夜も更けた様だし、夜分に御機嫌伺ひもあるまい。サアゆつくりと今日は此太子も寝んでやらうかい』
と云ひ乍ら、寝所に入り、ソファーの上に横たはり、疲労れ果てて、鼾声雷の如く眠についた。
 夜は森々と更けわたり、水さへ眠る丑満の刻限となつた。満天の雨雲の堤を切つて、土砂ぶりの雨は館の棟を音高く叩き初めた。恋の曲者に捉はれて、まどろみ得ざりし女中頭のシノブは雨の音を幸ひに他の女中の寝息を考へ、足音を忍ばせ乍ら、ソロリソロリとアリナが寝所に忍び入つた。アリナは何事も白河の夜舟、荒波のほえたけるやうな鼾を立てて熟睡に入つてゐる。シノブはソファーの傍に寄り、ソツとアリナが胸に手を当て、小声になつて……
シ『モシ……モシ、アリナさま アリナさま』
とゆすり起した。アリナは驚いて、アツとはね起き、目をこすり乍ら、
ア『ナヽ何だ、何事が起つたのだ』
と早くも駆け出さうとするのを、シノブは袖をひき止め乍ら、
シ『先づ先づおちつき遊ばしませ、別に怪しい者では厶いませぬ。妾は貴方のお嫌ひなシノブで厶います。妾の声を聞いて、倉皇として逃出さうとは余りぢや厶いませぬか。貴方夕私に詐つたので厶いますか。エー悔しい、残念で厶います。モウ此上は何も彼も打ちあけて了ひますから、其お覚悟なさいませ』
と早くも泣声になる。アリナは吃驚して、
ア『ヤア、お前はシノブだつたか、ヤ、それで安心だ。決してお前を嫌ふ所か、お前の事許り思つて寝んでゐた所、父の左守がやつて来て、俺の化の皮を現はし、ふん縛らうとした夢を見て吃驚したのだ。どうしてお前を嫌ふものか、そして殿中は何事もないのか』
 此言葉を聞いてシノブも稍安心せしものの如く、
シ『あゝそれ聞いて、貴方のお心が解りました。御安心なされませ。殿中は極めて平穏無事で厶います。妾は寝所へ這入りましても、貴方のお姿が目にちらつき、一目も眠られず、夜の明けるのを待ちかね、お顔見たさに人目を忍んでここ迄伺つたので厶います』
ア『ウン、さうか、それで俺もヤツと安心した。能う来て下さつた。俺も碌に夜の目が眠られなかつたよ。お前の事が気になつて………』
シ『ホヽヽヽ、何とマア調法なお口だ事。妾が忍んで来るのも知らずに、夜中の夢を見てゐらしたくせにどこを押へたらそんな上手な事が言へますか。本当に憎らしい殿御だワ』
と云ひ乍ら、膝のあたりを力を入れて、継子抓りに抓つた。
ア『アイタヽヽヽ、ひどい事するぢやないか、さう男を虐待するものぢやないワ。ヤツパリお前は私を苦しめるのだな。人を痛い目にあはして、お前は心持が可いのか』
シ『そらさうです共。憎らしい程可愛いですもの……可愛けりやこそ一つも叩く、憎うて一つも抓られうか……といふ俗謡があるでせう。モツトモツト抓つて上げませうか』
と今度は二の腕を力一杯継子抓りで捻た。
ア『アイタヽヽヽ、コラコラひどい事するな。可愛がつて貰ふのも結構だが、痛いのは御免だ』
シ『女に抓られて閉口するやうな腰の弱い男子は、恋を語るの資格はありませぬよ。本当の恋と恋とがピツタリ合つた男女は、何時も生疵の絶え間のないのが親密な証拠ですよ』
といひ乍ら、頬べたをガシリとかいた。
ア『チヨツ、痛いワイ。何程惚たというても、そんな毒性な目に会はされちや やり切れないワ。面に蚯蚓腫れが出来るぢやないか』
シ『ホヽヽヽ蚯蚓腫位が何ですか、男と云ふものは大事な宝まで、突破るだありませぬか、その方が何程痛いか知れませぬよ』
ア『エー、何とマア、可いお転婆だなア。今時の女子は之だから嫌はれるのだ……イヤ好かれるのだ、エヘヽヽヽ』
 斯くいちやついてゐる折しも、ヂヤンヂヤンヂヤンヂヤンと警鐘乱打の声。ハツと驚き窓を開いて見れば、左守の館の方面に当つて、炎天をこがし大火災が起つてゐる。
(大正一四・一・六 新一・二九 於月光閣 松村真澄録)
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