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文献名1霊界物語 第69巻 山河草木 申の巻
文献名2第3篇 神柱国礎よみ(新仮名遣い)しんちゅうこくそ
文献名3第14章 暗枕〔1759〕よみ(新仮名遣い)やみまくら
著者出口王仁三郎
概要
備考
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あらすじ
霧や大雨、大風に悩まされる中、国照別と浅公は互いに弱音を吐いたりからかったり強がったり、面白いやり取りを交わしている。

すると、怪しい口笛のような声が聞こえてくる。浅公はてっきり魔神の出現とおびえ出す。

実は梢を渡る風の音であった。国照別は風だとわかっていたが、面白半分に浅公をからかっている。

国照別は、浅公に言う。『魔神は退却したけれど、浅公がうまいものを沢山食って脂がのったら、またやって来て食おうと言っていたよ。だからこれからの道中、うまいものはみんな俺に食わせろ。』

主従、滑稽なやりとりをするうちに夜は明け、二人は急坂を下り、アリナの滝の懸橋御殿を指して進んでゆく。
主な人物 舞台 口述日1924(大正13)年01月24日(旧12月19日) 口述場所伊予 山口氏邸 筆録者松村真澄 校正日 校正場所 初版発行日1927(昭和2)年10月26日 愛善世界社版200頁 八幡書店版第12輯 347頁 修補版 校定版209頁 普及版66頁 初版 ページ備考
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本文  国照別主従はアリナ山の中腹に止むを得ず一夜を明す事となつた。咫尺を弁ぜざる濃霧は陰々として身に逼り来るかとみれば、忽ち空は黒雲漲り、夕立の雨が礫の如く二人の衣を打ち、吹き飛ばすやうな風がやつて来る。深霧、靄、大雨、大風と交る交る走馬燈の様に迫つて来る其淋しさ苦しさに、流石の国照別も初めて知つた旅の悩み、心の底より天地に拝跪して一時も早く黎明の光を仰がむ事を祈願した。されども時の力は何程祈願しても左右することは出来ず、夜は深々として更ゆく計り、四辺は益々暗く互の所在さへ目に入らなくなつて了つた。
国照『雨風にさらされ霧につつまれて
  行手に迷ふ吾身魂かな』

浅公『気の弱い親分さまのお言葉よ
  いつ迄暗の続くものかは』

国照『浅公の生言霊をめで給ひ
  朝日の御空恵ませ給はむ。

 朝茅生の野辺を渡りて今ここに
  誠アリナの峰に休らふ。

 夜の雨峰の嵐におびえつつ
  ふるひゐるかも木々の梢は』

浅公『主従がふるひゐるかと思ひしに
  木々の梢で先づは安心。

 親分が慄ふ様では曲神の
  すさぶ世の中渡るすべなし』

国照『ふるふといふ吾言霊は世の中の
  あらゆる塵をふるふ謎なり』

浅公『負ぬ気の強い国照別さまよ
  気をつけ給へ漆の木蔭を。

 右左前も後も見えわかぬ
  暗の山路はいとど静けき』

国照『浅公よ静かなりとは嘘だらう
  心の淋しさ語るにやあらむ』

 両人は何となく寂寥の気に打たれ、膝をすり合して阿呆口を駄句つてゐる。どこともなしに細い淋しい糸の様な声が聞えて来た。浅公は国照別の腰に喰ひつき、ビリビリと慄うてゐる。
浅『オヽ親分さま、デデ出ましたぞ』
国照『ウーン、出たの』
浅『どうしませう』
国照『何うでも可いワ、惟神に任すのだな。屹度神の試練だよ。お前のやうな臆病者を伴れてゆくと、俺の手足纒ひになると思つてアリナ山の魔神が気を利かし、お前を片付けてやらうと思つて、出現したのかも知れないよ、アツハヽヽ、テモ扨も暗い事だワイ。若し汝と間違へられて、俺が頭からガブリとやられちや大変だから、オイ浅、二三尺間隔をおいて喋らうだないか。之丈暗くては化物だつて、目が見え相な道理がない。声さへ出しておればそれを標的にかぶるだらうから、フツフヽヽ』
浅『親分さま、貴方は随分水臭い事を云ひますね。乾児の難儀を助けて下さるのが親分ぢや厶いませぬか。自分が助かる為に乾児を魔神に喰はさうとなさるのですか』
国照『勿論だよ、お前は俺の乾児になる時、何と云つて誓つた……親分さまの御身に一大事があれば、命をすてて尽します。命は親分に捧げました……と云つて、小指迄切つて渡しただないか、御苦労だなア、ハツハヽヽ、持つべき者は乾児なりけりだ。若しも汝がゐなかつたなれば、身代りがない為、俺が喰はれて了ふのだ。浅公のお蔭で俺も命が全ふ出来るワイ。南無浅公大明神、殺され給へ、喰はれ給へ、叶はぬから霊幸はへませ、エツヘヽヽヽヘ』
浅『ソヽそれは、チヽチツと違ひませう。親分が喧嘩の時とか、又強きを挫き弱きを扶け遊ばす時に、お伴にいつて命をすてるのなら、捨甲斐もありますが、こんな淋しい山の奥で、エタイの分らぬ化物に喰殺されちや本当に犬死ですからなア』
国照『そりや汝のいふ通り、全くの犬死だ、縁の下の舞だ。然し乍らそれを犠牲といふのだ。親分がまさかの時に犠牲にする為、汝を乾児にしておいたのだ。俺だつて、たつた一人の乾児を魔神に喰はしたくはないが、それでも自分の命をすてるよりは辛抱がしよいからのう、ホツホヽヽヽ』
 最前の怪しい口笛を吹くやうな声は細い帯の様に地上七八尺の上の方に線を劃して聞えてゐる。
『ヒユーヒユー、ヒーユー』
 実際は梢を疾風の渡る音であつた。されど浅公の身には妖怪とより聞えなかつた。国照別は始めから風の声だといふ事は承知してゐたが、余り浅公が驚くので、面白半分に揶揄つてみたのである。浅公は慄ひ声を出して、
『国治立大神様、瑞の御霊大神様、何卒々々只今現はれました怪しき神を追ひのけて下さいませ。親分も大切なら、私の体も大切で厶います。親分の代りに私が喰はれますのは少しも厭はぬことは……厶いませぬが、同じことなら、親分乾児共にお助け下さいませ。今私がここで喰はれましては、親分さまも知らぬ他国で一人旅、御苦労御艱難をなさるのがお気の毒で厶います。私だつてこんな所で死にたくは厶いませぬ、惟神霊幸倍坐世、惟神霊幸倍坐世』
と祈つてゐる。暗は益々深くして、なまぬるい風が腰のあたりを嘗めて通る。
国照『人の命を取り食ふ  曲津の数多アリナ山
 暗の帳に包まれて  茲に二人の石枕
 眠る間もなく人食ひの  怪しき神が現はれて
 其泣く声を尋ぬれば  国照別の肉の宮
 一目見てさへうまさうだ  それに従ふ浅公の
 奴の体はどことなく  味が悪さうな穢なさうな
 こんなヤクザ者喰た所で  腹の力になりもせぬ
 腹を損じて明日の夜は  七転八倒せにやならぬ
 それ故浅公の肉体を  食つてやるのは止めておかう
 本当に食ひたい食ひたいと  喉がなるのは親分の
 国照別の肉の香だ  さはさり乍ら神徳が
 体一面充ち満ちて  歯節の立たぬ苦しさに
 此場を見すてて帰りゆく  之から浅の乾児等に
 うまい物をば沢山に  喰はして肉を肥満させ
 脂の乗つた其上で  改めお目にかかるだらう
 国さま浅さま左様なら  之でおいとま致します
……と唄ひもつて魔神の奴、下駄を預けて帰りよつた。オイ浅公、確りせぬと助からぬぞよ』
浅『オヽ親分、そんな事を魔神が云ひましたか、嘘でせう』
国照『お前の耳には聞えなかつただらう、俺が魔神の言霊を翻訳すると、つまりあゝなるのだ。珍の国の人間とテルの国の人間とは日々使ふ言葉が変つてるやうに、人間と魔神とは又言葉が違ふのだ。鳥でも獣でも皆言葉があつて互に意思を通じて居るのだからなア』
浅『さうすると親分、貴方は神さまみた様な御方ですな。結構な城中に生れ、珍の国の国司になる身を持ち乍ら、物好にも程があると思ひ思ひ、乾児に使はれて来ましたが、魔神の言葉が分るとは、本当に感心致しました。親分々々といふのも勿体なくなりましたよ』
国照『兎も角、お前の体は穢しうて、味が悪くつて、喰へないと云つたから、マア安心せい。険呑なのは俺だ。俺は若い時から栄耀栄華に育てられ、体が柔かく出来てるとみえ、国の体が喰ひたいと云つたが、お蔭で御神徳があるので、屁古垂れて帰りよつた。併し浅公は甘い物をくはせ充分脂を乗せておいて呉れ、其時に又現はれて、バリバリとやると云つてたよ。随分用心せないと可けないよ。だから甘い物があつたら、皆俺に食はせ、お前は糟計り喰つてゐたら脂ものらず、魔神も見すててくれるのだ、イヽか。命が惜くなければ精出して美食をするのだな、ハヽヽヽ』
 浅公は思ひの外の正直者である。国照別の言葉を一も二もなく丸呑にして了つた。
浅『親分さま、貴方は神さま侠客だからメツタに嘘は仰有る気遣ひはありますまい。さうすりや、わつちや、之から一つ考へねばなりますまい。うまい物は喰はれませぬなア』
国照『さうだ、うまい物は皆俺に食はせと云つたよ』
浅『ヘーン、うまい事をいひますね。魔神の奴仲々気が利いてるワイ』
国照『魔神も退却したなり、之から一つ宣伝歌を歌つて暗を晴らし、東雲を待つことにせうかい』
浅『宜しう厶いませう』
国照別『故郷の空遥に出で行く二人の仁侠
 あはれ今宵はアリナ山の
 野宿に肝をひやす
 比較的融通の利く侠客の睾丸
 人間の想念界に於けると同様
 伸縮自在なるも亦可笑し
 仁侠を以て誇る浅公親分の
 股間の珍器今何処にかある
 珍の荒野に彷徨ふか
 但しは遠く海を渡つて
 竜宮に走るか聞かまほし、珍器の所在
 雨はしげし、靄は深く包む
 魔神の怪声は頻りに至り
 寂寥の空気刻々身に迫る
 あゝ人間の腋甲斐なさ
 暗夜に会へば
 忽ち寂寥にをののく
 いかにして天地の奉仕者
 万物の霊長たるを得む
 故里の空遠く回顧すれば
 珍の都に残れる相思の人々
 吾魂を引き留むるが如く覚ゆ
 進まむとせば小胆なる浅公のあるあり
 退かむとせば故郷の友人に恥かし
 あゝ如何にせむ
 アリナ山の夜露の宿
 星もなく月もなく
 八重雲のふさがる下に
 臆病武士と相共に
 ふるふて一夜を送る吾ぞ果敢なき
 あゝ惟神々々
 御霊幸はひましませよ』

浅公『アリナ山下りてここに来てみれば
 暗の帳に包まれて
 行手も知れぬ苦しさよ
 魔神は夜半に現はれて
 親分乾児の胸冷す
 健気にもわが命
 取り食はむといひし魔神の叫び
 一寸味をやりよるワイ
 さり乍ら此浅公は
 全身骨を以て固めたる
 歯節も立たぬ剛力に
 呆れたのか魔神の群
 豊かに育ちし親分の君
 肉柔かく血の香芳ばしく
 わが身の食料には最適当だと
 言葉をのこして帰り行く
 魔神も仲々食へぬ奴
 味な事をいひよるワイ
 思へば思へば
 あぢ気なき浮世だなア
 暗は益々深くして胸は益々打ふるふ
 血管の血は凍り肉は引きしまり
 髪の毛は立つ
 あゝ惟神救はせ給へ
 わが弱き魂を
 あゝ惟神開かせ給へ
 わが清き強き魂の光を』
 斯く二人はいろいろな事を口ずさみ乍ら一夜をあかし、ホンノリと足許の見ゆる頃、又もや急阪を下り、アリナの滝の懸橋御殿を指して進み行く。
(大正一三・一・二四 旧一二・一二・一九 伊予 於山口氏邸、松村真澄録)
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