一行はあばら家を借りて住み、子分たちが畑で野菜を作り、国照別がそれを町に売りに出て、一年ほど暮らしていた。
しかし、ふとしたことから一行の素性が秋山別・モリスの耳に入り、両老中は清香姫に自分の至誠を表すために地位・名望を投げ捨てて共に耕作に従事し、その上で城に帰るように懇願した。
城に帰った清香姫は、両親に自分たち兄妹の意中を明らかにした。楓別命夫婦は吾が子らの誠に感じ入り、自分たちは退隠して清香姫、国照別に政治を譲った。
清香姫・国照別らは仁恵を行い、徳政を施し、貧富を収まるべきところに収め、上下の障壁を取り、老若男女に選挙権を与えた。ここに騒乱はたちまち収まり、地上の天国が実現した。
国照別は選ばれて、ヒルの国の大王となった。
一方、その後珍の国では、上下の乖離がますますはなはだしく、国愛別・岩治別、春乃姫・常盤姫らの活動により人心はやや緩和したけれども、いよいよ状況は厳しくなってきていた。
そこへ、ヒルの国の大王となった国照別は多数の部下を従えて、救援に駆けつけた。国照別は三年ぶりの故国の惨状に心を痛めたが、民衆は国照別の行軍に恭順の意を示して迎えた。
国愛別らは、国照別を導いて城内深く入り、ここにおいてようやく、松若彦・伊佐彦は今までの地位・爵位を投げ打って、民衆の前に罪を謝すこととなった。
国愛別は春乃姫と夫婦となり、また民衆に推されて珍の国の大王となった。ここに貧富の懸隔は打破され、上下の待遇は改善され、ようやく珍の国は平安無事に治まった。