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文献名1霊界物語 第70巻 山河草木 酉の巻
文献名2第2篇 千種蛮態よみ(新仮名遣い)せんしゅばんたい
文献名3第14章 賓民窟〔1781〕よみ(新仮名遣い)ひんみんくつ
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日2020-05-28 02:01:57
あらすじ
テイラとハリスは、千草姫の変わりよう、また受けた命令のあまりのことに、太子に相談にやってくる。

太子は千草姫が発狂したと見なして、テイラ・ハリスに向上主義者レールとマークのところに隠れるように薦め、紹介文を書いて二人に渡す。

二人は貧民窟のレール・マークの隠れ家に行き、かくまわれることとなった。
主な人物 舞台 口述日1925(大正14)年08月24日(旧07月5日) 口述場所丹後由良 秋田別荘 筆録者加藤明子 校正日 校正場所 初版発行日1925(大正14)年10月16日 愛善世界社版176頁 八幡書店版第12輯 454頁 修補版 校定版180頁 普及版89頁 初版 ページ備考
OBC rm7014
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本文  千草姫の命を受け、キユーバーの捜索に向はむとするテイラ姫は、母モクレンの意を含み王様に面会せむものと思へども、千草姫の警戒厳しく到底近よる事が出来ぬので、チウイン太子の館を訪ひ、
『御免なさいませ。太子様テイラで御座います』
 太子は机にもたれ、三五の経典を頻りに読誦して居たが、テイラの声が門口に聞えたので、直ちに門口に迎へ出で、さも嬉しげに、
チウイン『ヤア女将軍テイラ殿、まあまあ此方へ……。よう来て下さつた。何だか最前から其方に会ひたいと思つて居た処だ。今日はゆつくり話しませう』
テイラ『ハイ、有難う御座います。急用が出来ましたので一寸御相談に参りました。失礼さして頂きます』
と、一室に立ち入り太子と向ひあつて、
テイ『時に太子様、今日は妾は母と共に王妃様に招かれ沢山の御馳走を頂きました処、王妃様の様子が俄に変り「妾は三千世界の救世主だ」とか、「日の出神の生宮だ」とか、妙な事を仰せられ、其上に妾に対し「彼の妖僧キユーバーの所在を探して来よ」との厳しき御命令、否み奉る事を得ず、ひそかに御相談に参りました。どうか御意見を承はり度う御座います』
太子『はて、困つたなあ、母上は発狂されたのであらう。どうも様子が此間から変だと思つて居た。母上は何故か彼の悪僧を大変に可愛がつて居られるのだ。併し乍ら、彼の如きものを城中に引き入れなば、益々母上の心を乱し、如何なる悪智慧を注ぎ込むかも知れない。夫故吾計らひにて或所にキユーバーを押込めておいたのだから、捜索などは止めたがよからう』
テイ『ハイ、有難う御座います。妾も何だか変だと思つて居りました。併し乍ら、左守家に居る訳にも参りませぬ。何時王妃様が人を派し、妾の行動をお調べなさるか知れませぬから』
太子『成程それも困る。お前の姿が見えさへせねば分らない、母上はキユーバーの捜索に行つて居るのだと安心せられるだらう』
テイ『妾は何処へ匿れたら宜敷う御座いませうか』
太子『いや心配するな。私が今手紙を書くから之をもつて名宛の人の処へ行つて世話になれ。暫くの間だから』
テイ『ハイ、仰に従ひ、さうさして頂きませう』
 太子は何事かすらすらと巻紙に書き認め、三百円の金を封じ込み、
太子『サア、之を持つてお出なさい。屹度世話をして呉れるだらうから』
 テイラは、書面の表書を見て倒れむ許りに驚いた。
テイ『もし太子様、レールと云ふ男は、向上運動の張本人では御座いませぬか』
太子『如何にもさうだ。彼はトルマン国の救世主も同様だ』
テイ『太子様は又このレールと云ふ男に御交際が御座いますか』
と不思議さうに問ふ。
太子『別に交際と云ふ程でもないが、一度会ふた事がある。其時彼の心の底迄見抜いておいた。屹度大切にして呉れるよ。此書面の中に三百円封じ込んであるから、これは其方の賄料としてレールに与へるのだ』
テイ『ハイ、有難う御座います。兎も角行つて参りませう』
と挨拶する折しも門口より、
『右守の娘ハリスで御座います。太子様にお目に掛りたう御座います』
と女の優しき声が聞えて来た。太子は直ちに立つて自ら入口の戸を開け、
太子『ヤア、ハリス殿か、よう来て下さつた。今テイラ将軍が来て居て下さるところだ。サア、ハリス将軍お入りなさい』
と気軽に招き入れ、ここに三人巴なりに対坐した。
ハリス『太子様、御勉強中をお邪魔を致しました。ヤ、貴方はテイラ様、先刻は失礼いたしましたね』
テイ『いやどう致しまして、貴女も王妃様の御命令に関して、お越しなさつたので御座いますか』
ハリ『ハイ、左様で御座います。大変な事を仰つかつたので、実は困り入つて居るので御座いますよ』
太子『ハヽヽヽヽヽ、ハリス将軍もキユーバー上人の所在の捜索隊でも仰せつかつたのだらう』
ハリ『いえいえ どうして どうして、捜索隊はテイラさまに大命が下りました。妾はもつともつと六ケしい御用を仰せつけられたので御座います』
太子『それや一体どんな用だ。差支なくば聞かして貰ひたいものだなあ』
ハリ『ハイ、妾は、太子様を生擒る御用を仰せつかりました』
太子『ハヽヽヽヽヽ、遉はハリス女将軍だけあつて、それ相当の御用を云ひつけられたものだなあ。其美貌をもつて攻撃されるものなら、瞬く間にチウイン砲台も滅茶々々に壊されて仕舞ふかも知れないよ』
ハリ『王妃様のお言葉には「紅、白粉、油を惜まず、盛装をこらし抜け目なく太子を恋の淵に陥いれ、首尾よく成功致したならば、汝を太子妃にしてやらう」との有難い御恩命、いやはや畏れ入つて居りまする』
テイ『何とまあ、粋なお母さまぢや御座いませぬか。ハリス様、羨ましう御座います』
ハリ『どうか貴女、妾が捜索に参りますから、貴女代つて下さいませぬか。到底この使命は妾が如き者の挺子には合ひませぬ。又太子を生擒るなどの大野心は、王家を思ひ、右守家を思へばどうして出来ませう。実に困り入つて御座います』
太『これや一通ぢやない。母上には何か悪神が憑依して、トルマン城を攪乱せむと企らんで居るに違ひない。いやハリス殿、余が手紙を書きますから、宛名人の処へ暫く身をお忍びなさい。後は都合よく母の手前を取なしておきます。どうやら両将軍の身の上に危険が迫つて来たやうに余は考へる』
と云ひ乍ら、すらすらと巻紙に何事か認め、これ又三百円の紙幣を封じ込み、
『サア、ハリス殿、暫く此宛名人の処へ行つて身を忍んで居て下さい』
と差出す書状、ハリスはハツと首をさげ押し頂き、名宛を見ればマーク殿と認めてある。ハリスは仰天せむ許り吃驚して太子の顔をつくづく見守り乍ら、
ハリ『太子様、御冗談では御座いませぬか。マークと云ふ人間は首陀向上運動の首謀者、ラマ本山の注意人物、彼様な人間の所へ、どうして忍んで居る事が出来ませうか』
太子『いや心配は要らぬ。彼は決して悪人でない。吾トルマン国の将来重鎮となる人物だ。この書状をもつて行けば屹度世話して呉れるだらう』
ハリ『テイラさま、妾、どうしませう。太子様も、あまりぢや御座いませぬか。彼の様な所へ島流しとは余り甚う御座いますわ』
テイ『妾だつて有名な向上会のレールさまの家へ預けられるのですもの。何かこれには太子様に於て深いお考へがお有りなさるのでせう。兎に角いつて見ようぢやありませぬか』
と、二人は早くも太子に暇を告げ、
『太子様暫く行つて参ります』
と黄昏を幸ひ裏町通りを伝うてレール、マークの住家をさして出でて行く。
 レール、マークの両人は其の日の生活に追はれ、九尺二間の裏店に、二人一組の世帯をやつて居る。二人は荒井ケ嶽の麓なる岩窟の番人を了へ、固く錠をかけおき、帰つて来た所であつた。両人はやれやれと腰を卸し、夕飯の箸を執らむとする時、門口に優しき女の声、
『御免なさいませ。レール、マークさまのお宅は此処で御座いますか』
 薄暗がりにレール、マーク二人は此声を聞くより、
レール『オイ、マーク、艶めかしい、しかも高尚な女性の声が門口に聞えて居るぢやないか。さうして「レール、マークさまのお宅は」と、ほざいて居るやうだ。一体何だらうか』
マーク『ヘン、馬鹿云ふな。こんな所へ誰が尋ねて来るものか、しかも日の暮れ間際に、大方狐か狸のお化だらうよ』
レ『いやいや、確に女の声だ』
と云つて居る時しも、再び優しき女の声、
『レールさま、マークさまのお宅は此所で御座いますか』
マ『如何にも女性の声だ』
と云ひ乍ら、つつと立つて菱になつた破れ戸をがらりと引き開け、見れば盛装を凝らした二人の美人、ニコニコとして、
女『妾は、一寸様子あつて貴方のお家へお世話になりに参りました。どうか宜敷う願ひます。見れば奥さまもお子達もおはさぬ様子、どうかお世話にして下さいませ』
マ『どこの貴婦人か知りませぬが、冗談云つてはいけませぬよ。私はお粥腹を抱へて飢に泣き寒に慄へて居る貧民窟の主人公、どうして人様のお世話する余裕が御座いませう。大方人違ひで御座いませう。お帰り下さいませ。オイ、レール大変な事になつて来たぢやないか。貴婦人が、しかも二人、盛装を凝らしお前と俺とを尋ねて来られたのだが、どうも承知出来ぬぢやないか。大方それ、キユーバーに関係のある、お安くない連中ぢやなからうか』
と、小声に囁く。
レ『成程さうかも知れぬよ。此奴はうつかり相手になつては駄目だ。スコブツエン宗のキユーバーと云ふ奴、沢山の貴婦人を胡麻化しよつたと云ふことだ。その貴婦人が俺等二人が牢番をして居る事を嗅つけ、尋ねて来よつたのだらう。そんな事をしては太子様に対して申訳が無いからなア。断つて逐ひ帰せ』
マ『折角乍ら、二人の女中さま、レール、マークは当家に居りませぬ。トツトとお帰り下さいませ。こんな破れ家を尋ねると云ふ女性は人間ぢやありますまい。狐か狸かの化けた奴と認めるからトツトといんで下さい』
と云ふより早く破れ戸をピシヤリと閉め、戸に突張りをかうて了つた。
マ『ハヽヽヽヽヽ、此破戸一枚が鉄の門より高うと云ふ処だ、ハヽヽヽヽヽ』
と大声に笑ふ。
テイ『もし御両人様、どうか此手紙を読んで下さいませ。さうすれば貴方等のお疑ひが晴れるでせう』
と、戸の隙間より二通共投げ込んだ。二人は二通共拾ひ上げ、薄暗いランプにすかして見れば、一通にはレール殿、チウイン太子より、一通にはマーク殿、チウイン太子より、と記されてある。急ぎ封押しきつて見れば、正しくチウイン太子の手紙に間違ひない。さうして枯れきつた貧乏世帯へ、大枚三百円宛、女の賄料として封じ込んである。二人は慌てて戸を押し開け、
レ『ヤこれはこれは失礼いたしました。むさくろしい処で御座いますが、どうかお這入り下さいませ。オイ、マーク手箒でそこらを掃かないか、珍客だぞ。これは左守家のお嬢さまと、右守家のお嬢さまだ』
と云ひ乍ら、二人は一生懸命、黒ずんだ畳の表や庭を掃出した。
テイ『どうぞお構ひ下さいますな。今日から私がお掃除も致します。御飯も炊きます。男さまがなさいますと見つともなう御座います』
レ『いや勿体ない、貴方等に飯炊をさせたり、掃除をさしたりして耐りますか。しかし折角来て貰ひましたが寝具もなし、食器も無し、まあ暫くお待ち下さい。マークに買にやりますからな。オイ、マークこの頂いたお金で絹夜具を二組買ふて来い。そして上等の食器を二組揃へて来るのだぞ』
マ『よし来た』
と飛び出さうとするをテイラは細い柔かい手で、マークの袖を控へ乍ら、
テイ『もしマーク様、失礼乍ら、彼様なお住へ絹夜具を入れたり、立派な食器をお入れになつては、直様其筋の疑ひをうけ迷惑をなさいませう。妾等二人は貴方等と同じ生活が致したう御座います。どうか食器の最も悪い欠げたやうなものを購めて下さい。さうして寝具も最も悪い、これより悪いものはないと云ふやうなものを買つて来て下さい。さうせねば向上会の貴方等が、其筋の疑を受けられては妾等、長いお世話になる事は出来ませぬからなあ』
マ『オイ、レールどうせうかな、なんぼなんでもこんな貴婦人にまさか破れ布団も着せる訳にゆかぬぢやないか』
レ『何、構やしないよ。今迄浄行階級の生活をなされて居たお姫様、些とは吾々貧民窟の生活を味はしてやつてもいいぢやないか。そんな遠慮をして居つて、どうして目的の貫徹が出来ようか』
テイ『ホヽヽ、レールさまのお言葉、私ぞつこん気に入りましたよ。ねえハリスさま』
ハ『さうですねえ、本当に貧民窟の生活は愉快なものでせうよ』
マ『これお姫さま、貧民窟の生活が愉快だなんて、何を云うて居るのだ。まあ二三日やつて見なさい、吠面かわいて逃げて帰らにやならぬやうになりますよ』
ハリ『何程つらくても構ひませぬよ。国家の柱石ともなるべき立派なお二人さまと共同生活をすると思へば、どんな辛い事でも辛抱致しますわ』
レ『やアお出たな、これやまあ、何のこつた。今日只今より貧乏神の御退却、福の神の御入来、まるで夢のやうだわい』
 四人一度に『ハヽヽヽヽヽ、ホヽヽヽヽヽ』三日の月は西山に隠れ、暗の帳は四辺を包み、近所合壁の婆嬶の囀る声も次第々々に消えて行く。
(大正一四・八・二四 旧七・五 於由良海岸秋田別荘 加藤明子録)
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