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文献名1霊界物語 第73巻 天祥地瑞 子の巻
文献名2第2篇 高照神風よみ(新仮名遣い)たかてるしんぷう
文献名3第24章 天国の旅〔1855〕よみ(新仮名遣い)てんごくのたび
著者出口王仁三郎
概要
備考
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あらすじ
眼知男の神は太元顕津男の神に一部始終を復命する。顕津男の神は、このことは主の神言によって事前に知っており、比女神は美玉姫の命を産んで神業を果たし、主の神の元に帰ったと歌い、眼知男の神を慰める。

続いて、滝の大蛇を言向けて、天界の災いを払わずにはおれない、と決意をあらわにする。

顕津男の神、大物主の神、眼知男の神が奥殿深く入っていくと、そこにはすでに御霊代が祭壇の上に納められていた。顕津男の神はあらかじめ主の神にこの遭難を知らされていたのである。

眼知男の神、大物主の神は、何事も主の神の定めとして過去を嘆かず、如衣比女の神の冥福を祈り、美玉姫の命に仕えていく心を歌う。顕津男の神も、弔いの歌を歌う。

神々は如衣比女の神の昇天を聞いて駆けつけ、各々弔いの歌を歌った。

最後に真澄の神は、滝の大蛇の言向けを提唱した。神々はみな一同賛成し、中津滝に向かって
主な人物 舞台 口述日1933(昭和8)年10月16日(旧08月27日) 口述場所水明閣 筆録者内崎照代 校正日 校正場所 初版発行日1933(昭和8)年11月22日 愛善世界社版 八幡書店版第13輯 94頁 修補版 校定版234頁 普及版 初版 ページ備考
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本文  眼知男の神は如衣比女の神の遭難を見て驚き且つ歎きつつ、一刻も早く高日の宮の神司、顕津男の神に一伍一什を報ぜむと、猿も通はぬ巌壁や岩の根樹の根をふみさくみつつ、辛うじて高日の宮に帰りつき、轟く胸をおさへ乍ら落着かむとして落着かず、宮の広庭に呆然として立ち給ひ、天を拝し地を拝し、如衣比女の神の冥福を祈る折もあれ、大物主の神を従へて、悠々と顕津男の神は御殿の階段を降り給ひ、目の神の呆然たる姿を見て、

『汝こそは眼知男の神なれや
  黙して立たすさまのあやしも』

 目の神は初めて此の御歌に心づき、

『復言申さむ術なき今日の吾を
  おもひて天に祈りてしはや

 如衣比女は滔々落つる中滝の
  滝壺ふかくかくれましけり

 滝壺にひそみて住める大蛇神は
  比女の神言を呑みてかくれぬ

 言霊の力に救ひ奉らむと
  吾がねがひさへ水泡となりぬる

 如何にして此の有様を申さむかと
  われは汀にたたずみ居しはや』

 顕津男の神は泰然自若として、色をも変じ給はず、御歌うたはせ給ふ。

『比女神の今の歎きはかねてより
  我はさとれり主の神言もて

 美玉姫の命を安く産みおきて
  天の宮居に昇りし比女神

 比女神の高き功に報いむと
  我は御霊を祀りて待ちぬ

 何事も神の経綸のみ業なれば
  泣くも悔むも詮なかるべし

 神業を全く終りて御子を産み
  天に昇りし比女ぞ尊し

 さり乍ら滝の大蛇を言向けて
  この天界の禍を祓はむ』

 目の神はこの御歌に、はつと胸を撫で下しながら、

『広きあつき岐美の心に宣直し
  見直しますぞ嬉しかりけり

 比女神のみ供に仕へただ一人
  かへらむつらさ苦しさにをり

 比女神の隠れまししを目のあたり
  打ち仰ぎつつ心みだれぬ

 八千尋の水底ふかく隠れましし
  比女の神言の悩みかしこし

 今日よりは女神いまさず如何にして
  国つくらすとおもひわづらふ』

 大物主の神は両神の仲に立ちて、涙ぐみつつ声低に謡ひ給ふ。

『比古神の今日の心の苦しさを
  おもひて吾は涙にくるる

 貴御子と夫神を遺し神去りし
  比女の神言の心しのばゆ

 如何にして御子を育み奉らむと
  大物主のこころなやまし

 目の神の心遣ひを聞く身には
  ふたたび涙あらたなりけり

 わが涙天に昇りて雲となり
  地に降りて雨となるらむ』

 斯く謡ひて両眼の涙をスーと拭はせ給ひぬ。目の神も亦悄然として再び謡ひ給ふ。

『二柱神の神言の言霊に
  吾は言ふべき言の葉もなし

 如何にせむ神の依さしの御使の
  吾は女神を見捨ててかへりし

 この上は滝の大蛇を言向けて
  み代の禍はらはむとおもふ』

 斯く謡ひ終り、三柱の神は奥殿深く入らせ給ひ、祭壇の前に端坐して、生言霊の神言を宣り給ふ。顕津男の神は比女の遭難を神命に依りて前知し、早くも御霊代を造りて祓ひ清め、祭壇の上に納め、いろいろの花を供へ、目の神の帰り来るを待ち給ひたるなりき。目の神は此のさまを見て驚きながら、

『岐美こそは真の神よ瑞の神
  比女の遭難前に知りませり

 明けき岐美の神霊を今更に
  仰ぎぬるかな目の神吾は

 語らはむ術なき身ぞと思ひしを
  前に知らせるあはれ岐美はも

 何事も主の大神のみさだめと
  おもひさだめて歎かざるべし

 滝津瀬の音滔々と吾が耳に
  今も聞ゆる恨めしきかな

 恨むまじ歎くまじとは思へども
  霊代拝せばひとしほ恋ほし』

 大物主の神は拍手を終り、声さはやかに謡ひ給ふ。

『八洲河のみ底ゆ安く生れましし
  如衣の比女はあはれ世になし

 春駒を曳きて仕へし如衣比女
  神の神言をおもへば悲しも

 幾年を高日の宮に住みまして
  御子を生ませし功績おもふ

 これよりは御子の命にかしづきて
  岐美の神業をつがせ奉らむ

 比女神の御霊は天津高宮に
  帰れど此処にいます如おもふ

 比古神の御手代となりいやますに
  仕へ奉らむ比女よ安かれ』

 比古神の顕津男の神は、儼然として霊代の前に謡ひ給ふ。

『幾年を吾に仕へてつつがなく
  御子を生ませる公ぞかしこき

 一柱御子の命のある上は
  我は力を落さざるべし

 比女よ比女あとに心を残さずに
  主の大神の大宮にゆけ

 汝に逢ひし日を思ひつつ今茲に
  くやみの涙とどめあへぬも

 さり乍ら神の定めは詮もなし
  我もこころをたて直してむ

 せめてもの我が志と霊代の
  比女神これの供物を召せよ』

 八百万の神々は、如衣比女の神の昇天と聞きて吾先にと、高日の宮に集り給ひ、弔ひの歌を次々謡はせ給ふ。遠津御幸の神、

『歎くとも詮なきものか比女神は
  天津神国に昇りましぬる

 如衣比女天国に帰りましませど
  霊は高日の宮を照らさむ

 姫御子を後に遺して神去りし
  比女神の心いたはしきかも

 神の国にかかる歎きのあらむとは
  おもはざりしよ御幸の神は』

 次に大御母の神は、比女神の昇天をいたく悼ませ給ひて、御歌詠ませ給ふ。

『八洲河の清水に生れし比女神は
  惜しや天国に昇りましける

 主の神の貴の経綸か知らねども
  われ朝夕のなげかひ絶えず

 幾千代も共にみわざに仕へむと
  わがおもひしは夢なりにけり

 顕津男の神の神言のみ心を
  おしはかりつつ涙しぐるる

 白銀の駒にまたがり迎へたる
  よき日おもへば夢か現か

 歎くとも最早詮なしこの上は
  美玉の姫を育み仕へむ

 比女神の神去りましし此宮は
  月日の光もうすら曇りつ

 天津日も月も歎かせ給ふらむ
  今日の御空はうすらくもれり』

 日の本の神は誄歌詠み給ふ。

『高照の山もくもりて比女神の
  今日のみゆきを仰ぎおくりつ

 からたまの神生みましし功績を
  のこして比女は神去りにけり

 神去りし比女の神言のけなげさよ
  平然として大蛇に呑まれぬ

 吾は今比女の神言の訃を聞きて
  日の本山より降り来にけり

 諸々の神一柱おちもなく
  比女の昇天惜しまざるなし

 比古神の心如何にと思ひつつ
  空に知られぬ涙の雨降る

 主の神の大みよさしにまつろひて
  如衣の比女は神去りにけむ』

 片照の神はまた謡ふ。

『おもひきや高日の宮の神柱
  如衣の比女の神去りますとは

 一度は見らくおもひつ比女神に
  あはで別るる事の惜しさよ

 比女神の昇天ききて吾はただ
  夢になれよと祈りけるかな

 紫微界に姿見えずも比女神は
  天の高宮に輝き居まさむ

 吾はしも片照の神高地秀の
  尾の上をわけて来り弔ふ

 主の神の神言畏み今日はしも
  比女弔ふと降り来しはや

 比女神の神去り給ふは惜しかれど
  神の経綸とおもへば尊し』

 明晴の神はまた謡ひ給ふ。

『比女神のここに現れましてより
  この天界は明晴の神

 あきらけく晴れ渡りたる天界の
  今日は曇りぬ比女いまさねば

 あけくれを仕へ奉りし比女神の
  かげだに見えず淋しき今日なり

 比古神の雄々しき心きくにつけ
  わが天界の栄えをおもふ

 美玉姫神の命に従ろひて
  吾は神国をひらき照らさむ』

 近見男の神は謡ひ給ふ。

『中滝の大蛇の神の醜業を
  比女神のために退はむと思ふ

 愛善の光に満つる天界に
  仇報ゆるは如何あるべき

 さり乍ら世の禍を打ち祓ふ
  みわざは神も許させ給はむ

 これに在す百の神達きこし召せ
  世のため大蛇の神のぞかばや』

 茲に真澄の神は声高々と謡ひ給ふ。

『ます鏡真澄の神の言霊に
  切り放るべし滝の大蛇を

 天も地も真澄に澄みてある世なり
  醜の曲霊を清めずあるべき

 われここに真澄の神と現れて
  比女を弔ひ言はかりすも

 天界に禍をなす醜神を
  打ちきためずば神世は栄えじ』

 斯く滝の大蛇の言向けを提唱し給へば、百神は一度に「オー」と答へて、真澄の神の御謀り事に参じ、これより百の神々は、中津滝に向つて大蛇を言向けやはすべく、さしも難路の高照山の谿間を進ませ給ふぞ畏けれ。
(昭和八・一〇・一六 旧八・二七 於水明閣 内崎照代謹録)
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