真鶴山は、まだ若い山で、つきたての餅のように湯気がもうもうと立ち昇っている。山の姿もまだ固まっていない。周りには、底深い沼が広がり、そこからも湯気が立ち昇っている。
山に近づくにしたがい、柔らかい土に馬の足がとられ、沈んでいく。
顕津男の神は馬上より、カコクケキ、ガゴグゲギの言霊歌を歌うと、ぬかるみは次第に固まり、沼から出る霧も薄らいで、真鶴山の姿が日の光を浴びて現れた。
遠見男の神はこの奇瑞をたたえる歌を歌った。
ウ声の言霊から生まれたという多々久美の神が言霊歌を歌うと、沼の水はみるみる煙となって高く昇り、一滴の湿りもないまでに乾ききった。
美波志比古の神はタトツテチ、ダドヅデヂの言霊歌で沼の底土を乾燥させた。
一行は、先発していた国中比古の案内で、真鶴山の頂上に登った。