すると、玉野湖の水が二つに割れた。湖の底から大きな竜が現れ、顕津男の神一行の馬前に道を作った。竜の頭上には、美しい女神が立っていた。
それは、生代比女であった。顕津男の神の厚き心によって、怨恨は感謝の念となり、美しい女神の姿に更生したのであった。
以前にも増して神々しい比女の姿に、顕津男の神は恍惚として、敬虔の念が止みがたく起こってきた。
生代比女の神は、顕津男の神の心に満悦し、その歓喜はたちまち凝って、体内に御子を宿した。すると、今まで燃えていた炎は消え去り、月が清涼の空気を全身に注ぐような心地とともに、完全に解脱した。それとともに竜体も消え去った。
生代比女は、蛇体から解き放たれた喜びを歌い、また、玉野森の玉野比女は、国生みの神であると明かす。
顕津男の神は、生代比女の更生を喜びつつ、神生みの御樋代は実は生代比女であり、玉野比女は国生みの役であることを知る。主の神の許しがなければ御子をはらむことはないこと、神業の道は一つではないこと、また国生みと神生みとのけじめがあることを悟った。
従者の神々はそれぞれ、これまでの真鶴国での出来事を振り返り、感慨を歌い、また国の繁栄の予感に喜びを歌った。