生代比女は、顕津男の神と共に導かれていたが、なんとなく玉野比女が自分を快く思っていないのではないか、との念から、松の木陰に身を潜めていた。そして、自分のしたことのおろかさを悔い、大神にお詫びの歌を歌っていた。
瑞の御霊を悩ませつづけ、ついには玉野比女の神業であった神生みを奪ってしまった自分の罪に涙していた。
すると、白砂の庭を、大幣を打ち振りながら一人の神人が近づいてきた。そして大幣を打ち振りながら、自分は力充男の神であり、何事も神の心として勇んで来るように、と生代比女に声をかけた。
力充男の神は、自分は力を添え充ちさせる神、と歌い、罪穢れのある身であれば、そもそもこの聖所には登って来れないのだから、と生代比女を励ます。
力充男の神の歌に心の晴れた生代比女は、先に顕津男の神が禊をした清泉に導かる。生代比女は清泉を前に喜びの歌を歌い、天津祝詞を奏上した。
すると、待合比古の神がやってきて、主の大神が待っているので、早く来るように、と生代比女を迎えに来る。
生代比女は、自分を主の神が待っていることを知り、喜びによみがえったような心地のありがたさを歌った。
生代比女は、待合比古の神に導かれ、力充男の神に守られて、白砂を踏みながら大宮居に静静と進んで行った。