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文献名1霊界物語 第75巻 天祥地瑞 寅の巻
文献名2第3篇 真鶴の声よみ(新仮名遣い)まなづるのこえ
文献名3第16章 鶴の訣別(五)〔1910〕よみ(新仮名遣い)つるのわかれ
著者出口王仁三郎
概要
備考
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あらすじ
顕津男の神が玉藻山を去りつつあるとき、玉野比女は寂しさに耐えかねて、玉野宮の大前にうずくまって神言を奏上し、静かに歌を歌った。

その歌は、顕津男の神を慕い、その姿を偲ぶ述懐の歌であった。また、自分は八十比女の一人でありながら、御子神を授かったのは生代比女だったことを悔やみ、ねたみの心が湧いてくるのをどうともしようがなくなってきた。

すると、玉藻山の松の枝を左右に揺らし、二柱の神が玉野宮居に天から下ってきた。

二柱の神は、それぞれ魂結(たまゆい)の神、中津柱の神と名乗り、主の神の言により、玉野比女を助けるために降ってきた、と明かす。

玉野比女は二神の降臨に驚きかつ喜び、また神に仕える身でありながら、神前に繰言を述べた自分を恥じた。

魂結の神は、玉野比女の真鶴国の将来を愁う真心が天に通じたのであり、自分は玉野宮に仕えて玉野比女を助けるために、主神より下されたのだ、と歌う。

中津柱の神は、顕津男の神の願いを主の神が容れて、自分は下ったのだ、と歌った。また、国魂の神は生代比女の御子なのではなく、八十比女である玉野比女の御子であると心得るよう諭した。

中津柱の神は、真鶴国を廻って神業の継続を助けよう、と歌い、遠見男の神が国事の全ての司であり、玉野宮居の司は玉野比女である、と役割を明らかにする。

そして、自分は真鶴国を隅々まで廻り、国の詳細が固まったならば天へ帰る、と自分の役割を明らかにした。

最後に、主の神の神言によって、魂結の神とともに、幾億万の年月を経てようやく「皇国」・「大やまとの国」として固めるというのがこれからの神業である、と結んだ。
主な人物 舞台 口述日1933(昭和8)年11月27日(旧10月10日) 口述場所水明閣 筆録者林弥生 校正日 校正場所 初版発行日1934(昭和9)年2月3日 愛善世界社版 八幡書店版第13輯 370頁 修補版 校定版303頁 普及版 初版 ページ備考
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本文  ここに顕津男の神は、その神業の成れるを機会に、諸神におくられて玉藻山をしづしづ下り給ひければ、玉野比女の神は淋しさに堪へかねて、玉野宮の大前に蹲まりつつ神言を奏上し終りて、静に御歌詠ませ給ふ。

『顕津男の神は国土生み御子生みの
  神業終りて帰りましける

 神の世を固めむとして出でましし
  瑞の御霊の後姿なつかしも

 冴え渡る月日の光も何処となく
  淋しかりける岐美のなければ

 高地秀の山より下りし瑞御霊
  その御姿は雄々しかりける

 南の国土を固めむと出でましし
  岐美は今なし白梅は散る

 春の陽は静に更けて夏草の
  萌ゆる玉藻の山の淋しさ

 圓屋比古の神は三笠の山の根に
  帰らせ給ひていよよ淋しも

 八洲国ことごとめぐり神生ます
  岐美はやさしも又つれなしも

 わが岐美と名乗る言葉も口ごもり
  ただ一言の名乗りさへせず

 いすくはし神の姿の目に浮きて
  いよよ恋ふしく淋しくなりぬ

 岐美の姿玉藻の山に現れしより
  早も百日を過ぎにけらしな

 白梅の花にも似たる粧ひを
  持たせる岐美は懐かしきかも

 主の神の誓ひは重しさりながら
  気永く待ちて年さびにける

 西東南や北とめぐらして
  神生みのわざ仕へますはも

 日を重ね月をけみしてわが岐美は
  四方の国々めぐりますかも

 右り左契りなけれどわが岐美の
  御姿思へば恋ふしかりける

 水火と水火合せて御子をたしたしに
  生まむ術なきわが身を悲しむ

 いろいろに花は匂へど白梅の
  薫り床しも主の種宿せば

 梅は散り桜は散りて夏の日も
  いや深み草深くなりぬる

 奇びなる縁の綱にからまれて
  背とし名のれど水火あはざりき

 主の神はわれをたすけむ司神
  天降らせ給ふと聞くぞ嬉しき

 独りのみ只独りのみ清庭に
  神世を祈れどうら淋しもよ

 月と日と二つ並べる世の中に
  われは淋しもひとり住まひて

 奴婆玉の闇は迫りぬわが心
  岐美に別れしそのたまゆらに

 再びは会はむ術なきわが心に
  別れし今日のつれなさおもふ

 結比合の神はあれども年さびし
  われには何の甲斐なかりけり

 豊なる岐美のよそほひ見送りて
  ふたたび涙あらたなりける

 浮雲の流るる見つつ思ふかな
  わが行く道のはかなかる世を

 玉野丘は瑞の御霊の言霊に
  ふくれ上りつ淋しさまさる

 景色よき玉藻の山の眺めさへ
  今日はうれたく思はるるかな

 背の岐美は今やいづくぞ大野原
  醜草わけて鞭うたすらむ

 天地にひとりの岐美を慕ひつつ
  長の訣別を生きて見るかも

 虫の音もいとど悲しく聞ゆなり
  わが目の涙かわき果てずて

 隔てなき岐美の心を悟りつも
  かすかにうらみ抱きけるはや

 愚なるわが魂線をたしなめて
  笑顔に迎へし時のくるしさ

 生代比女の神は国魂神の御子
  安々生ませ給ひけるはや

 生代比女若しなかりせば真鶴の
  国魂神は生れざるべし

 生代比女神の功を喜びつ
  何かうらめし心の湧くも

 恐ろしきものは恋かも心かも
  よしとあしとの差別なければ

 わが心乱れけむかも生代比女の
  貴の功をうらやましみおもふ

 背の岐美と水火を合せて生みませる
  千代鶴姫の命めぐしも

 わが腹に宿らす御子にあらねども
  わが子となりし国魂神はや

 国魂の御子の生ひたつあしたまで
  生代の比女は育くみ給はむ

 生代比女国魂神の乳母神と
  なりて仕へむさまのめぐしも

 常磐樹の松の心を持ちながら
  ややともすれば色褪せにつつ

 長閑なる春の心も恋ゆゑに
  曇ると思へば恥づかしのわれよ

 愛しさと恋ふしさまさり背の岐美の
  御前にふるふ言の葉うたてき

 百千々に砕く心を語らはむ
  暇もあらに別れけるはや

 主の神にいらへむ言葉なきままに
  われは許しぬ恋の仇神を

 起きて見つ寝て思ひつつ御子のなき
  われを悲しむ玉藻の山に』

 斯く歌ひ給ふ折しも、玉藻山の常磐の松の梢を前後左右にさゆらせつつ、雲路を別けて玉野宮居の清庭に、二柱の神悠然として天降りまし、玉野比女の神の御側近く立たせ給ひつつ御歌詠ませ給ふ。

『われこそは主の大神の神言もて
  ここに降りし魂結の神

 中津柱神は天降りぬ主の神の
  神言畏み汝たすけむと』

 玉野比女の神は、且つ喜び且つ驚きつつ、謹みて二柱の神に向ひ御歌詠ませ給ふ。

『朝夕のわが願ぎ言の叶ひしか
  尊き神の現れませしはや

 中津柱神の天降りしと聞くからに
  わが魂線はよみがへりつつ

 魂結の神のこの地に天降りまさば
  わが神業も易く成るべし

 背の岐美の旅に立たせる淋しさに
  われは神前に繰言宣りぬ

 二柱神の神言の耳に入らば
  吾は消えなむ思ひするかも

 さすがにも女神なるかもかへらざる
  ことをくどくど繰返しつつ

 今更にわが身恥づかしくなりにけり
  神に仕ふる身ながらにして』

 ここに魂結の神は御歌詠ませ給ふ。

『真鶴の国漸くになりたれば
  汝たすけむとわれは天降りぬ

 玉野比女心安けくおはしませ
  汝の真心天にかよへり

 主の神は汝が真心をさとりまし
  神業たすくとわれを降せり

 真鶴の国は広けし遠見男の
  神一人して如何で治め得む

 今日よりは玉野宮居の清庭に
  仕へて汝を補けまつらむ

 有難き神世となりけり主の神の
  折々天降らす玉藻の神山』

 中津柱の神は御歌詠ませ給ふ。

『真鶴の広国原の中津柱
  神と現れわれ天降りけり

 主の神の厳の言霊畏みて
  われ治めむと降りけるはや

 顕津男の神のまことの願ぎ言を
  主の大神は許し給ひぬ

 顕津男の神の御水火の正しさに
  われ紫微宮ゆ天降りたり

 新しく造り固めし真鶴の
  国土の木草の稚々しもよ

 主の神の神言守りて気永くも
  待たせる玉野の比女のかしこさ

 国魂の神生れませり生代比女の
  御子には非ず汝が御子なり

 汝が腹ゆ生れます御子と諾なひて
  めぐしみ給へ国魂の御子を

 今日よりは真鶴国を経巡りて
  汝が神業をあななひまつらむ

 遠見男の神は総ての司ぞや
  玉野宮居の司は汝ぞや

 永久に玉野宮居に仕へまして
  国魂神を守らせたまへ

 三笠山真鶴山と経巡りて
  国土のはしばしひらき守らむ

 真鶴の国原詳細に固まらば
  われは帰らむ天津高宮へ

 顕津男の神に代りてわれは今
  国土固めむと降りつるはや

 多々久美の神はあちこち経巡りて
  何時か姿をかくしましける

 多々久美の神の功に真鶴の
  国土すみずみまでひらかれて行く。

 アカサタナ
 ハマヤラワ
 ガザダバパ
 いく言霊の幸ひて
 真鶴国は生れましぬ
 国魂神は健かに
 生れましける千代八千代
 栄ゆる神世は真鶴の
 千歳の齢と諸共に
 月日と共に動かざれ
 国の宮居の清庭は
 雲井の上にいや高く
 そそり立ちつつ主の神の
 光を四方に照らすなり
 われは主の神神言もて
 中津柱と現れつ
 魂結の神と諸共に
 これの聖所を永遠に
 守り守りて主の神の
 栄を委曲に開くべし
 幾億万の年月を
 隔ててやうやう皇国
 大やまと国固むべき
 今日の神業の尊さよ
 今日の神業の畏さよ
 ああ惟神々々
 言霊御稜威尊けれ』
(昭和八・一一・二七 旧一〇・一〇 於水明閣 林弥生謹録)
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