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文献名1霊界物語 第76巻 天祥地瑞 卯の巻
文献名2第3篇 孤軍奮闘よみ(新仮名遣い)こぐんふんとう
文献名3第13章 朝駒の別れ〔1930〕よみ(新仮名遣い)あさこまのわかれ
著者出口王仁三郎
概要
備考
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あらすじ
栄城山の五柱の神々は、朝香比女をねぎらおうと、八尋殿に集まってご馳走をならべ、にぎやかに歌い舞い、宴を張った。

機造男の神が歌を歌えば、四柱の神々は調子に合わせて足を踏み、手を打って舞い踊った。

朝香比女の顕津男の神への恋を歌った歌に、比女は恥ずかしがりながらも、顕津男の神への恋の思いを燃え上がらせ、今すぐにでも発って顕津男の神を追っていきたい、と歌った。

比女の思いの強さに、神々はその強さを驚きあきれ、またたたえる述懐の歌をそれぞれ歌った。

こうして無礼講を終え、朝香比女はもう一泊栄城山にとどまり、魂を養った後、翌朝駒に鞭を打って大野ケ原へ出立した。

五柱の神々は別れを惜しみ、また旅の無事を祈る歌で比女を送った。比女は神々に感謝の歌を歌いつつ、もや立ち込める朝の大野ケ原を進んで行った。
主な人物 舞台 口述日1933(昭和8)年12月07日(旧10月20日) 口述場所水明閣 筆録者林弥生 校正日 校正場所 初版発行日1934(昭和9)年3月23日 愛善世界社版 八幡書店版第13輯 564頁 修補版 校定版410頁 普及版 初版 ページ備考
OBC rm7613
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本文  栄城山の聖場に仕へ給ふ五柱の神司等は、朝香比女の神の長途の疲れをねぎらはむとして、又送別の宴を兼ねつつ八尋殿に集まりて、種々の美味物を机代に置き足らはし、百木百草の花を飾りて、歌ひ舞ひつつ、賑かに宴し給ふ。
 機造男の神は御歌詠ませ給へば、四柱の神は歌の調子に合せて、手を打ち、足を踏み鳴らせて踊らせ給ふ。

『朝日直射す栄城の山に
  夕陽かがよふ紅葉山

 御空碧々大地は広し
  中を岐美ゆゑ一人旅

 遠き旅路も岐美故なれば
  命死すとも恐れまじ

 岐美は万里の旅寝の枕
  一人寝る夜の夢に見る

 岐美の御後を遥々慕ひ
  まぎて来ませる朝香比女

 月は御空に星光冴えて
  比女を迎ふる栄城山

 千里万里も恋故なれば
  如何でいとはむ岐美の側』

 神々は各々手を打ち足拍手を揃へて、うたひ舞ひ給ふにぞ、朝香比女の神はやや面ほてりつつ御歌うたひ給ふ。

『はづかしき今日の宴よ百神に
  からかはれつつ面ほてるなり

 からかはれ笑はるるとも何かあらむ
  恋しき岐美に会ふ日ありせば

 かく迄も岐美を恋ひつつ玉の緒の
  命ささぐと誓ひしわれなり

 栄城山尾の上の松は枯るるとも
  岐美恋ふ心はほろびざるべし

 天地は闇となるともいとはまじ
  光明の神の岐美ましませば

 曲津神の荒びもいとはず尋ねゆくも
  われは恋しさあまればなりけり

 かくならば総ての心さらけ出して
  神々等の肝冷やさばや

 笑はれて心は変へじ謗られて
  恋路は捨てじ命のかぎりは

 わが命よし死するとも岐美許に
  魂は通ひて水火を合はさむ

 百神等如何に議らひ給ふとも
  われはひるまじ恋路の坂を

 いざさらば岐美の恋ふしくなりつれば
  一時も早くこの場を立たむ』

 朝香比女の神の思ひ切つたる御歌に、百神等は舌を巻きながら、踊の手を止めて各自御歌詠ませ給ふ。
 機造男の神の神歌。

『白梅の花にもまして美はしき
  比女の言葉のおほらかなるかも

 かくの如面勝神と知らざりき
  射向ひまつらむわれは術なし

 おほらかにおはする比女よおほらかに
  恋の御歌を詠ませたまへり

 かくの如細女賢女に慕はるる
  顕津男の神の幸をおもへり

 幾万里の道もいとはずと宣らしませし
  比女のこころの素直なるかも

 われも亦神の御許しあるならば
  かかる雄々しき比女を娶らむ』

 朝香比女の神は御歌詠ませ給ふ。

『細女に見合ひまさむとおもほさば
  しばし神魂を引き締め給はれ

 緩みたる神魂を持ちて細女に
  あはむと宣らすをかしき公かも

 眉目容姿勝れし神に非ざれば
  烏も妻にならざるべきを

 百神よわが言の葉を許せかし
  いつはりのなき真言なりせば

 此処にます神の面ざしことごとに
  女神にかなへる御姿はなし

 永久に栄城の宮居の神社に
  仕へて神業を励ませたまへ

 わが為にひらき給ひしこの宴
  白けけるかな言霊すさみて

 ともかくもわが背の岐美は恋ふしもよ
  眉目も容姿も勝れたまへば

 神々は数多あれども背の岐美と
  仰がむ魂はかげだにもなし』

 散花男の神は御歌詠ませ給ふ。

『白梅も散りたるあとは小鳥さへ
  梢にとまらぬ浮世なるかも

 かくの如醜き面を持つわれは
  つつしみ畏み恋は語らじ

 勝りたる男神なけれど優れたる
  女神またなき浮世なりけり

 朝香比女神の神言の美はしさ
  桜の花のさかりに似たるも

 何時迄も花は梢にとどまらで
  嵐に散りゆく夜半のあはれさよ

 天渡る月にも盈つる虧くるあり
  朝香の比女も今さかりなる

 時来ればやがて萎れむ朝香比女
  とく出でませよ背の岐美許に

 束の間にも桜の花は散る世なり
  いそがせ給へ背の岐美の許へ』

 朝香比女の神はこれに答へて、

『村肝の心いそげど焦れども
  万里の山河せむすべもなし

 さりながら瑞の御霊の夢見さへ
  わが魂線はよみがへるなり』

 中割男の神はあきれながら、御歌詠ませ給ふ。

『男神数多集へる蓆に比女神は
  憚りもなくのろけますかも

 かくの如雄々しき賢しき細女と
  今の今までおもはざりけり

 面白き比女神なるかも背の岐美の
  艶事のみを時じく宣らすも

 天界に生れてわれはかくの如き
  雄々しき女神に会はざりにけり

 細女にして賢女よ朝香比女の
  神は面勝射向ふ神はも

 かくの如雄々しき女神の前に出でて
  伊竦みにけり男神のことごとは』

 小夜更の神は御歌詠ませ給ふ。

『比女神のこれの聖所に来ませしゆ
  栄城の山は花満ちにけり

 いさぎよく雄々しく宣らす言霊に
  うたれて返さむ言の葉もなし

 比女神のこの雄健びに曲津見は
  雲をかすみと逃げ去りにけむ

 憚りもなく真心をさらけ出して
  恥らひ給はぬ比女の雄々しさ』

 親幸男の神は御歌詠ませ給ふ。

『顕津男の神の御樋代比女神は
  さこそあらむと思ひけるかな

 顕津男の神も驚きたまふらむ
  はろばろ訪ひし比女のまことに

 世の中は勇み進みて己自
  行くべき道を拓くべきかな

 朝香比女神の雄建び勇ましく
  醜の雲霧かげをひそめむ

 一つ目の八口の曲津も比女神の
  生言霊に逃げ散りしとふ

 潔よき比女の神言を迎へまして
  栄城の山に春よみがへる

 比女神と倶にしあれば常春の
  花咲き匂ふ心地するかも』

 神々は他愛もなく、心の丈を互に打開けながら、無礼講を終り給ひける。
 ここに朝香比女の神は、其日を一日これの神山にとどまり給ひ、百鳥の声、百木の花の香りに魂を養ひながら、翌日の朝又もや駒に鞭うちて、靄立ち昇る荒野ケ原を立ち出で給はむとして御歌詠ませ給ふ。

『三日三夜わが魂線を遊ばせし
  栄城の山はあこがれの山よ

 百神のあつき心にほだされて
  思はず知らず日を重ねけり

 栄城山に楽しく嬉しく遊びてし
  この思ひ出は千代につづかむ

 大空のあらむ限りは青雲の
  空なりにけりわが立つよき日は

 百神よさらばこれより草枕
  旅に立たなむ安くましませ

 大宮居に朝な夕なを仕へつつ
  生言霊に世をひらきませ

 懐かしく親しくなりし神々に
  別るる今朝の名残惜しまる

 何一つ心にかかる雲もなし
  はばかりもなく語らひにつつ』

 機造男の神は御歌詠ませ給ふ。

『なつかしの朝香の比女は今日を限り
  旅に立たすと思へばさびしも

 幾年も倶に居まして語らまく
  思ひしことも夢なりにけり

 国土生みの神業に仕ふる比女神を
  止むるよしもわれなかりける

 比女神よ顕津男の神に会ひまさば
  𪫧怜に委曲に吾等をつたへよ

 顕津男の神の御幸を祈りつつ
  神に仕ふとつたへませ公

 雨降れば比女神おもひ風吹けば
  汝を偲ばむ機造男われは

 比女神の立たせ給ひし栄城山は
  又もや日々に淋しくならむを

 行く水の止めもあへぬ公ゆゑに
  われあきらめて見送りまつるも』

 散花男の神は御歌詠ませ給ふ。

『春の野に咲く百花も散る世なり
  こころして行け大野の旅を

 雄々しくも出で立ちますか朝香比女
  神の神言は世を照らしつつ

 駿馬の嘶き高く進みます
  公の行手を安かれと祈る』

 中割男の神は御歌詠ませ給ふ。

『何時までも名残り惜しけれど詮もなし
  いざや女神よ別れまつらむ

 西方の国土は曲津見棲むと聞く
  心注ぎて出でませ比女神よ

 汝こそは面勝神と射向ふ神よ
  如何なる曲津もやらひますらむ

 一日なりと泊らせ給へと祈りつつ
  惜しき別れとなりにけらしな』

 小夜更の神は御歌詠ませ給ふ。

『わけもなき事語り合ひて親しみし
  比女神今日を旅に立たすも

 惜しめども今日の別れは詮もなし
  神の依さしの神業なりせば

 長き世に又会ふ事のあらむかと
  当なきことを頼みて待たむ

 小夜更けて天地しづまる頃とならば
  比女のすがたの目に浮ぶらむ

 ともかくも公を門辺に送り来つ
  別れのなみだ雨と降るかも』

 親幸男の神は御歌詠ませ給ふ。

『はろばろと出でましし比女ははろばろと
  旅に立たすか別れ惜しまる

 折々は栄城の山の松ケ枝に
  汝が魂線を移させたまへ

 今日の日の別れ惜しむか真鶴の
  うたへる声も悲しかりけり

 百鳥の鳴く音も今日はしめりたり
  公の出で立ち惜しむなるらむ

 高照の山ははろけし心して
  旅に出でませ朝香比女の神よ』

 朝香比女の神は駒に跨り、諸神に黙礼しながら、

『ゆかりあるこれの聖所を後にして
  旅ゆくわれはかなしかりけり

 百神のあつき心は忘れまじ
  岐美にし会へば詳細に伝へむ

 いざさらば百神等よ永久に
  命栄えてかがやきたまへ』

と御歌詠ませつつ駒に鞭うち、栄城山を後に、靄立ち籠むる朝明の大野ケ原を、進ませ給ふぞ雄々しけれ。
(昭和八・一二・七 旧一〇・二〇 於水明閣 林弥生謹録)
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