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文献名1霊界物語 第77巻 天祥地瑞 辰の巻
文献名2第2篇 十一神将よみ(新仮名遣い)じゅういちしんしょう
文献名3第7章 万里平定〔1939〕よみ(新仮名遣い)までへいてい
著者出口王仁三郎
概要
備考
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あらすじ
主の大神は、七十五声の言霊を絶え間なく鳴り出でて泥海の世界を固めるにあたって、筑紫ケ岳、高地秀(たかちほ)の峰、高照山の三大高山を生み、そして万里(まで)の海に無数の島々を鳴り出でて、すべての生き物を生ませ養うべく経綸を行った。

万里の海の中心には、万里(まで)の島を生り出でた。この島は面積約八千方里、西に白馬ケ岳、東に牛頭ケ峰を抱き、その中心流れる清川を万里(まで)の河、といった。

大神はこの島に、ツの言霊によって鼠を、クの言霊で蛙を生み出でた。鼠、蛙とも古代では、牛や人間ほども大きかった。鼠と蛙は万里の島に多数増えて繁栄した。鼠は田を鋤き、蛙も鋤鍬をもって田畑を開き、穀物を作って生活していた。

この島の司として、主の大神は頭に太陽の形を印した丹頂鶴をひとつがい下した。鶴は万里河の傍らの小高い丘にうっそうと立っている一本の常盤の松に巣を作り、子を生み育てた。

しかしながら、やがてこの島に雲霧が発生し日月を塞ぎ始めた。雲と霧のために陽気は寒く、万物の発育も十分でないほどとなってしまった。陰鬱の気は次第次第に凝結し、さまざまの曲津見を発生させた。

白馬ケ岳の谷間には悪竜が多数住むようになり、大蛇はあちこちで毒煙を吐いた。また邪気が凝って鷲と山猫が発生し、鷲は蛙を、山猫は鼠を餌食として猛り狂った。鼠と蛙の一族の中でも、特に朝夕を主の神に祈り、真心を尽くして仕えた種族のみが、神の恵みによってわずかに生き残り、戦々恐々としながらも耕作に従事していた。

大神は竜・蛇・鷲・山猫ら獰猛な動物を制御するために、牛、馬、鷹、虎、狼、獅子などを島に生ましめた。そして竜・蛇を滅ぼすことに成功した。ただ鷲だけは空中にあって、制裁することができなかった。

そのうちに、肉食動物である虎、狼、獅子、熊、鷲らは、他の動物を餌食として昼夜絶え間なく争闘の惨劇を続け、収集がつかなくなってしまった。大神はここに、猪と犬の群れを下して、猛獣たちを制させた。おかげで、牛と馬はやや安全になり、牛は牛頭ケ峰に、馬は白馬ケ岳に難を避けて数を増やした。

主の大神は、この美しい万里の島を永遠の楽園に定めようと、八十柱の御樋代神の中でももっとも神力の強い田族比女(たからひめ)の神を下した。そして、十柱の従者神を比女の共として島に下した。

神々の降臨によって、肉食獣たちは逃げ散り、鼠と蛙は、犬と猪に守られて安全に耕作に従事することができるようになった。ここに、丹頂鶴は猿を使って万里ケ島の平安を守っていた。しかしながら丹頂鶴は、田族比女と十柱の神々の恩を知らず、神々を国土への侵略者ではないかと疑い、嫉視の眼を向けていた。

鶴の保護を得た猿は次第に勢力を増し、ついに鶴のように木の上に住み、鶴の地位までも汚そうと勤めるにいたった。そして、蛙に対して暴虐の限りを尽くすようになったため、万里の島は、再び混乱の巷に陥った。

犬と猪は蛙を守ろうと猿に立ち向かい、結果、猿のほとんどはかみ殺されてしまった。しかし、この惨状を窺い知った鷲、獅子、熊などの猛獣は、これを機にいっせいに迫り来て、島の動物をほとんど滅亡させてしまった。

ただ鶴、牛、馬の一族は、田族比女とその従者神の守りを得て、猛獣の魔手を免れたのであった。
主な人物 舞台 口述日1933(昭和8)年12月13日(旧10月26日) 口述場所大阪分院蒼雲閣 筆録者加藤明子 校正日 校正場所 初版発行日1934(昭和9)年3月30日 愛善世界社版 八幡書店版第13輯 618頁 修補版 校定版119頁 普及版 初版 ページ備考
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本文  天津高宮に鎮まりいます主の大神は、七十五声の言霊を間断なく鳴り出で給ひて、泥海の世界を固むべく、先づ初めに当りて、筑紫ケ岳、高地秀の峰、高照山の三大高山を生み給ひて後万里の海に無数の島々をなり出で給ひて、総ての生物を生ませ養ひ給ふべく経綸されたり。
 其の最初に当りて万里の海の中心なる万里の島を生り出で給ひぬ。此島は面積約八千方里にして、西に白馬ケ岳あり、東に牛頭ケ峰あり、其の中心を流るる清川を万里の河と言ふ。
 大神は先づ此島にツの言霊を鳴り出でて鼠を生みたまひ、クの言霊を鳴り出でたまひて蛙を生み出でたまひける。鼠と雖も未だ地稚く、国土調はざりし時代なれば、今日の牛よりも大きく、蛙と雖も現代の人間よりは体躯長大なりしなり。其他神人をはじめ、総ての動物は之に準じて知るべきなり。蛙は此島に幾百千万とも限りなく発生し、鼠又日に日に其数を増しつつ土地最も肥えたる此島の全部に棲みて、総ての穀物の耕作に従事し生活を続け居たり。鼠は田を鋤き、蛙は鋤鍬をもちて田畑を拓き、穀物を作りて生活を楽しみ居たりける。
 此の島の司として主の大神は、頭に太陽の形を印したる赤き紋を頂ける丹頂の鶴を一番下し給ひける。此の鶴は天津高宮より御空を翔りて万里の島ケ根に飛び来り、万里河の傍なる小高き丘の上に、鬱蒼として聳え立ちたる一本の常磐の松に巣籠り、数多の子を生み育て此島の主として臨む事とはなりぬ。
 さりながら、朝夕の区別なく此の島ケ根は雲霧塞がり、殆ど咫尺を弁ぜざるに至り、天に日月輝きわたると雖も、中空の雲と地上に燃え立つ深霧の為めに陽気寒く、万物の発育も亦充分ならざりにける。陰鬱の気は次第々々に凝結して、種々の曲津見発生し、白馬ケ岳の谷間には太刀膚の悪竜数多棲み、大蛇又彼方此方の谷間に潜みて非時毒煙を吐きければ、其の毒煙は雲となり霧となりて、万里ケ島に住める蛙の一族は生活を脅かされ遂には其の数を減ずるに至りたり。邪気は次第に凝りて、数限りなき鷲となり山猫となりて狂ひ廻り、鷲は蛙を餌食とし、山猫は鼠を餌食となして猛り狂ふ惨状は、目も当てられぬばかりなりける。然れども、蛙と鼠の一族の中にて、朝夕を主の大神に祈り真心の限りを尽して仕へまつれる種族のみは、神の恵によりて、僅に其の種族の存在を保ち、戦々兢々としながらも春夏秋冬の耕作に従事し居たりける。
 主の大神は此の惨状を遥かに覧はして、竜蛇、鷲等の獰猛なる動物を制御すべく、牛、馬、鷹、虎、狼、獅子等を此島に産み生はせたまひ、悪竜、大蛇、鷲の暴虐を懲らしめたまひけるが、年を経るに従ひて、虎、狼、獅子、熊などの猛獣は遂に竜蛇の種族を亡ぼし、鷲の種族をも殲滅せむとしたりけるが、鷲は大なる翼の持主なれば、地上の動物の如何ともなし難く、鷹をもつて空中よりの害を防ぐより方法なかりける。然りながら如何に勇猛なる鷹と雖も、十数倍の翼を保ち大力を有する鷲に対しては如何とも制裁の道なかりける。
 虎、狼、獅子、熊、鷲等は肉食動物なれば、遂には猫、牛、馬、羊、猿等の動物を餌食となさむとし、昼夜間断なく争闘の惨劇を続け、収拾すべからざるに至りたれば、主の大神は茲に大なる猪の群と犬の群とを下して、これ等の猛獣を制すべく当らせ給ひたるにぞ、牛、馬の族は稍小康を得て牛は牛頭ケ峰に難をさけ、馬は白馬ケ岳に難を避けて両山の周囲は馬と牛とにて充満するに至りける。遠方より之を眺むれば、白馬の集ひたる白馬ケ岳は雪に包まれたるが如く、黒き牛の集まれる牛頭ケ峰は恰も墨の山の如く見えにける。
 茲に主の大神は、如何にもして此の美しき万里の島を永久の楽園に定めむと思召し、八十柱の御樋代神の中にて最も神力強き田族比女の神に、ウの言霊より生れ出でし若春比古の神、ヱ声の言霊より生り出でし保宗比古の神、ヰ声の言霊より生り出でし直道比古の神、ヤ声の言霊より生り出でし山跡比女の神、ヨ声の言霊より生り出でし千貝比女の神、ユ声の言霊より生り出でし湯結比女の神、マ声の言霊より生り出でし正道比古の神、ワ声の言霊より生り出でし輪守比古の神、プ声の言霊より生り出でし雲川比古の神、ヲ声の言霊より生り出でし霊山比古の神の十柱神を従へて、万里の島を守るべく下したまひける。
 此の神々の御降臨によりて、万里の島の天地を掻き廻し、乱し尽したる虎、狼、獅子、熊、鷲の輩は、命辛々島より島に渡りて逃げ失せたれば、暫時の間は小康を得て、蛙と鼠は元の如く耕作に従事し、其の生活を楽しむに至りぬ。犬は蛙の家居を守り、猪は鼠の安全を守り、夕ざれば山に入りて木の葉を喰ひ、各も各もの業を楽しみ居たりける。
 茲に弥々丹頂の鶴は常磐樹に平安の生を保ち、猿をつかひて万里ケ島の平安を守り居たりける。さりながら主の大神より天降し給へる田族比女の神其の他十柱の従神等の恩徳を知らず、却つて我国土を掠奪すべく来りしものとなし、昼夜嫉視の眼を放たざりける。
 鳥はスの霊にして猿はズの霊なり。猿は鶴の幕下として常に其勢力を増大し、驕慢の気起り遂には鶴の如く樹の上に棲み、其の座席迄も汚さむと勤むるにいたりたり。又蛙に対して暴虐限りなく擅に虐げければ、やうやく小康を得たる万里の島は忽擾乱の巷と化し、数万の蛙の鳴き叫ぶ声は天地に響き、其の惨状譬ふるに物なかりける。
 茲に於て蛙の保護に任じたる犬と猪は山より野より群がり来りて、蛙等の味方となり、猿の群に向つて戦ひを挑み、遂に其大猿の群は殆ど噛み殺さるるに至りける。此の惨状を窺ひ知りたる鷲、獅子、熊等の悪鳥、猛獣は此の期逸すべからずとなし、空より地より海より一斉に迫り来りて、此島に於ける一切の動物を殲滅せしめたり。然れども主の大神の神言をかしこみて田族比女の神其他の神々は、万里の島の主と定まれる鶴の一族と牛馬羊の一族を守り給ひければ、これ等の動物は幸に悪鳥猛獣の残虐の手を免るるに至りたるぞ畏けれ。

 主の神の神言畏み田族比女の
  神天降らせし万里の島かも

 十柱の神を従へ田族比女
  神は光となりて天降れり

 四方八方の雲霧払ひ悪しき鳥
  猛き獣も滅び失せぬる

 埴安の神と現はれし田族比女の
  御樋代神は救ひ主はも

 田族比女神の御樋代天降りしゆ
  万里の島根はよみがへりたり

 田族比女この万里島に天降りまして
  朝な夕なに神言宣らせり

 十柱の神も御後に従ひて
  禊を修め神言宣らせり

 馬と牛犬と猪とを世に残し
  此生島を守らせ給ひぬ

 丹頂の鶴は常磐の松ケ枝に
  千代ことほぎて神世あれましぬ

 鷲熊も虎狼も獅子王も
  この生島は近よらざりけり

(昭和八・一二・一三 旧一〇・二六 於大阪分院蒼雲閣 加藤明子謹録)
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