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文献名1霊界物語 第77巻 天祥地瑞 辰の巻
文献名2第2篇 十一神将よみ(新仮名遣い)じゅういちしんしょう
文献名3第12章 月下の森蔭〔1944〕よみ(新仮名遣い)げっかのもりかげ
著者出口王仁三郎
概要
備考
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あらすじ
神々らは、月照る泉の森をさまよいながら、美しい夜の眺めに眠りもせず、歌を口ずさんでいた。

やがて神々も眠りについたが、雲川比古の神は一人寝ずの番を仰せつかい、征途の決意を述べ、神々の休息する様子を歌に歌いこんだ。
主な人物 舞台 口述日1933(昭和8)年12月13日(旧10月26日) 口述場所大阪分院蒼雲閣 筆録者内崎照代 校正日 校正場所 初版発行日1934(昭和9)年3月30日 愛善世界社版 八幡書店版第13輯 640頁 修補版 校定版199頁 普及版 初版 ページ備考
OBC rm7712
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本文  山跡比女の神は月照り渡る泉の森を、彼方此方と彷徨ひながら美しき夜の眺めに憧憬れ眠りもやらず、御心頓に浮き立ち給へば、思はず知らず御歌を口ずさみ給ふ。
『久方の御空は清く
 雲の海原青々と
 御空の奥に澄みきらひ
 星の真砂はいろいろに
 夜をかがよひ天の河
 北より南に流るなり
 天の河原を安々と
 横ぎり給ふ月舟の
 光はさやかに澄みきらひ
 兎と猿の餅を搗く
 杵と臼との形まで
 いやあきらけく見ゆるかな
 泉の森の清庭を
 御空の月は隈もなく
 伊照らし給ひ百千々の
 泉のことごとさやかなる
 月の御光を浮べける
 ああ天国か楽園か
 庭の真砂は露にぬれ
 その露さやかに伊照らせる
 月の光ぞ尊けれ
 この清庭を踏むさへも
 月の御光のうつらふと
 思へば畏し惟神
 神のまにまに月の夜を
 吾は楽しみ遊ぶなり
 御空にさやる雲もなく
 大地を閉す霧もなく
 醜の嵐も吹きやみて
 御樋代神に仕へ来つ
 かかるさやけき月の森に
 一夜を楽しみ遊ぶとは
 夢か現かまぼろしか
 吾身ながらも解し得ぬ
 嬉しきことの限りかも
 楽しきことの極みかも』
 千貝比女の神は御歌詠ませ給ふ。

『泥の海に浮びて広き万里の島に
  今宵はさやけき月を見るかな

 八雲立つ八重霧立ちたつ万里の島に
  天降りし吾も月に息せり

 天地の水火は隈なく清まりて
  わが魂線も冴え渡りける

 斯の如清き清しき水火吸ひて
  わが魂線はよみがへりたり

 言霊の水火の命に生れたる
  吾は濁れる水火を苦しむ

 形あるものは食はねど澄みきらふ
  水火を吸ひつつわが生きるなり

 天津神吾は清けき水火を吸ひて
  千代の命を保ちこそすれ

 国津神その外諸の生物は
  木の実草の実食ひて生くるも

 天界に生れ初めて冴え渡る
  御空の月に水火栄えぬる

 御樋代の神は常磐の楠の蔭に
  息安らけく眠らせ給へり

 吾もまた明日の旅立ち重ければ
  月のしたびに臥してやすまむ』

 湯結比女の神は御歌詠ませ給ふ。

『諸神は各も各もにいねましぬ
  月の下びにいびき聞えて

 斯の如おだひに澄める空の下に
  月を仰ぎて眠る楽しさ

 山も野も月の降らせる玉露に
  よみがへりつつ夜を照らへり

 大空の月日の光をさへぎりし
  曲津見の水火の雲晴れにつつ

 月も日も清しく明し照り渡る
  この稚国土は永久の楽園か

 この森は御樋代神の住ませ給ふ
  万里の丘にもましてさやけし

 万里の丘の聖所を此処に移しまして
  主の大神の宮居つくりませよ

 主の神の御舎仕へまつるには
  ふさはしき森よ泉の森は』

 正道比古の神は御歌詠ませ給ふ。

『久方の空は澄みきり荒金の
  地は𪫧怜によみがへりたり

 夜嵐の風の響きも消え失せて
  御空の清しき月を仰ぐも

 あちこちに月にかがよふ玉泉を
  わが手に掬べば和く甘しも

 この水は吾等が永久の命守る
  生ける清水よ真の水よ

 斯の如澄みきらひたる真清水は
  万里の島には見当らぬかな

 この森は瑞の御霊の守ります
  月の泉の生ける森かも』

 雲川比古の神は御歌詠ませ給ふ。

『御樋代の田族比女神始めとし
  諸神等はいねましにけり

 小夜更けて御空を渡る月舟は
  白馬ケ岳に傾きにけり

 冴え渡る月に夜ごろを囀りし
  小鳥の声も静まりしはや

 森かげに匂ひ気高き白梅も
  小夜を眠るか花は萎めり

 虫の音もいや次ぎ次ぎに細り行きて
  泉の森の夜はふかみかも

 ただ一人泉の森に眠もやらず
  十柱神の夜を守らむ

 駿馬の嘶く声も足掻の音も
  早とどまりにけり寝ねにけらしな

 明日されば魔棲ケ谷に進まむと
  思ふ心の雄健びやまずも

 主の神の任しの神業と思ふより
  わが魂線は雄健びなすも

 玉の緒の生の命は失するとも
  醜の曲津見を譴責めでおくべき

 御樋代の神の御息は静かなり
  如何なる夢を結ばせ給ふか

 黒雲の非時湧きて立ちのぼる
  魔棲ケ谷を明日は襲はむ

 輪守比古神の寝姿眺むれば
  口をへの字に結び給へり

 霊山比古神は木の根を枕して
  右の脇腹を下にいねませり

 右腹を下にさの字に眠らへば
  生きの命の長しとぞ聞く

 若春比古神の寝ませる面の上に
  楠の病葉一葉落ちたり

 保宗比古神の鼾は雷の
  轟く如く高かりにけり

 直道比古神は手足を大の字に
  いやひろげつつ寝言宣らせり

 山跡比女の神は御腹を地に伏して
  月の光を背に負はせり

 千貝比女の神は折々双の目を
  開き閉ぢつついねませるかも

 湯結の比女神は大地に端坐して
  左右の手を組み眠らせ給へり

 正道比古神は折々太き息を
  吹き出し吾を驚かせにけり

 太き息を時々ふき出し口の辺を
  もがもが動かす正道比古の神よ

 雲川比古吾は夜守を任けられて
  諸神等の息を守るも

 曲津見の襲ひ来らば雲川比古の
  生言霊に斬り放りてむ

 東雲の空はほのぼの明らみぬ
  再び天津日昇らせ給はむ

 月読の神は白馬ケ岳の背に
  かくろひまして東雲めにけり』

 斯く雲川比古の神は夜警の役を仰せつけられ、一目もいねず、忠実に夜の明くるまで仕へ給ひける。
(昭和八・一二・一三 旧一〇・二六 於大阪分院蒼雲閣 内崎照代謹録)
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