霊山比古の神は、小笹の芝生に曲津神の計略を逃れ、一夜を明かした。ようやく東の空に昇る天津日の光に、蘇生の息をついた。
そこへ、保宗比古、直道比古、正道比古、雲川比古らがやってきて、昨晩の様子を霊山比古に問うた。
一同はやはり、霊山比古同様、曲津神に計略を仕掛けられたのだが、それぞれ敵を見破り、事なきを得た。その話をおのおの交換しあった。
一同は征途のかどでに、神言を上げ、笹原の細谷川でみそぎをなした。そのすがすがしさに、みな元気を取り戻し、曲津神との戦いに備えて気勢を上げる歌を、それぞれ歌った。
そこへ、三柱の比女神たちが現れて、一同に合流した。山跡比女の神は、曲津神が三女神に化けて計略をするだろうとの御樋代神(田族比女神)の計らいにより、わざと後れて進発したのだ、と明かした。
一同は田族比女の神の先見をたたえつつ、部署をそれぞれ定めて、魔棲ケ谷を指してさらに進んでいくこととなった。