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文献名1霊界物語 第77巻 天祥地瑞 辰の巻
文献名2第4篇 歓天喜地よみ(新仮名遣い)かんてんきち
文献名3第24章 会者定離〔1956〕よみ(新仮名遣い)えしゃじょうり
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日2018-08-16 23:19:29
あらすじ
七日七夜の宴の後、生き物たちはそれぞれ帰り行き、今は御樋代神の御聖所は静寂に包まれていた。

そこへ、白馬ケ岳の背後の夕暮れ空が、一種異様の光に包まれ、田族比女は驚いて高殿に立ってこの様を見るに、たちまち尊い御樋代神の降臨であると悟った。そして、輪守比古、若春比古を遣わして、来臨した御樋代神を迎えにやらせた。(第6章からの続き)

使いの二柱の神々は、田族比女の神言のままに、白馬ケ岳西方の御来矢の浜辺に駆けつけた。すると、常盤の森で憩う神々に出会った。一行を案内して万里ケ丘の聖所にたどり着いたのは、翌日の黄昏時になってからであった。

使いの二柱の神は、御来矢の浜辺で朝香比女の神一行に出会い、案内して、無事に帰り着いたことを奏上した。

田族比女の神は、早速朝香比女の神を高殿へ招いた。二柱の御樋代神は互いに挨拶の歌を交わした。朝香比女の神は、田族比女の神が、まだ若く曲津神の猛る万里ケ島を拓いたいさおしをたたえた。答えて田族比女の神は、朝香比女のねぎらいと称えの言葉に感激し感謝を述べ、ただまだ顕津男の神に巡り合って神生みの神業をなすことができないでいる思いを歌った。

ここに、顕津男の神への思いを同じくする二柱の御樋代神は、百年の知己のように心から打ち解け、互いに同情の涙にくれつつ、日を重ねることとなった。

田族比女の神は、曲津神征伐の戦利品として持ち帰った数多のダイヤモンドを、朝香比女の神に贈り物として送った。朝香比女の神は、珍しいものとして、快く受け取ったが、その返礼として、懐中から燧石(ひうちいし)を取り出し、あたりの枯れ芝を集めて火を燃やし出した。

万里ケ島の神々は、初めて天の真火が燃えるのを見て、感嘆の声をあげた。この燧石を、朝香比女は、田族比女への返礼として送ったのである。

田族比女は、天の真火の功徳を称え、朝香比女は、鋭敏鳴出(うなりづ)の神の賜ったこの燧石を、国の鎮めとして送るのだ、と歌い交わした。

それぞれの御樋代神に仕える従者神たちは、この出来事の述懐歌をおのおの歌い、国土の前途を祝した。しかし、朝香比女の神は、ここに長くとどまることはできず、万里ケ島の神々に別れを告げると、再び御来矢の浜辺から、岩楠舟に乗って、万里の海原を東南さして静かに静かに進んでいった。
主な人物 舞台 口述日1933(昭和8)年12月17日(旧11月1日) 口述場所大阪分院蒼雲閣 筆録者内崎照代 校正日 校正場所 初版発行日1934(昭和9)年3月30日 愛善世界社版 八幡書店版第13輯 698頁 修補版 校定版413頁 普及版 初版 ページ備考
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本文  万里ケ島の天地を塞ぎたる邪神の潜みし雲霧はくまなく晴れて、日月は清く光を地上に投げ万物蘇生の思ひして、茲に新しく国名を万里の神国と称へ、総ての基礎を万世に固め給ひ、生きとし生けるものを悉く万里ケ島の聖所に集めて、寿ぎの宴を開き給ひしが、七日七夜の後、総ての生きとし生けるものは各自常住の地に帰り、水を打ちたる如く、御樋代神の御舎は静寂に帰したり。
 かかる所に西に聳ゆる白馬ケ岳の背後にあたれる夕暮の空は、一種異様の光に満ちぬれば、田族比女の神は高殿に立ちて、この様を覧はし、尊き御樋代神の降臨なりとして、直に輪守比古の神、若春比古の神をして御樋代神を迎へ奉るべく、黄昏の月下を鞭うたせ給ひける。
 茲に二柱の神は神言のまにまに、白馬ケ岳の西に当る御来矢の浜辺に馳けつけ給へば、常磐の森に憩はせ給ふ五柱の天津神等に出会ひまし、恭しく言葉を交し、万里ケ丘の聖所に神々を導きつつ、翌日の黄昏頃やうやくに復命申し給ひける。輪守比古の神は八柱の尊き御樋代神一行を導き、無事に帰りたることを田族比女の神の大前に奏上し給ひぬ。

『わが公の神言畏み二柱は
  御来矢の浜に急ぎ着きけり

 御来矢の浜辺に着けば森蔭に
  朝香比女の神休らひ給ひぬ

 恐る恐る吾御前に跪きて
  公の真言を宣り伝へける

 御樋代神朝香の比女は頷きて
  諸神を従へ此処に来ませり』

 田族比女の神はこれに答へて御歌詠ませ給ふ。

『久方の高地秀山より降りましし
  御樋代神をよくも迎へ来しよ

 兎も角もこれの高殿に導けよ
  吾も階段を下りて迎へむ』

 茲に輪守比古の神、若春比古の神の二柱は「オー」と一声畏まりつつ、御庭に待たせ給へる朝香比女の神一行の前に言葉も恭しく、

『いざさらば御樋代神の朝香比女
  進ませ給へこれの高殿へ

 四柱の神も後よりつづきませ
  吾も御後に従ひまつらむ』

 朝香比女の神は軽く目礼しながら、静々と高殿さして進みたまふ。茲に田族比女の神は高殿の階段を降りて恭しく朝香比女の神の一行を待たせ給ひけるが、比女の御姿目前に迫りけるより、

『あらたふと御樋代神の天降りましし
  尊さに吾は迎へ奉るも

 いざさらばこの高殿に案内せむ
  のぼらせ給へ五柱の神』

 茲に朝香比女の神は御歌詠ませ給ふ。

『音に聞く田族の比女の御樋代は
  汝なりしかも愛しと思ふ』

 斯く歌ひ終り、悠然として田族比女の神の後より、朝香比女の神は高殿さしてのぼらせ給ひける。朝香比女の神は御歌詠ませ給ふ。

『所々に御樋代神は八十柱
  いますと聞きしを今日会ひにけり

 地稚き国土を固むる御樋代神の
  苦しき神業を思ひやらるる

 国土は未だ定まらずして曲津見の
  猛る国原拓くは苦しき

 諸々の艱みに堪へて万里ケ島を
  拓き給ひし公の功を思ふ

 吾は今西方の国土に進まむと
  その道すがらを立ち寄りしはや

 この島に八十比女神のましますと
  かねて聞きしゆ立ち寄りて見し

 まめやかに在せる公の御姿に
  吾は嬉しさ堪へやらぬかも

 永久の命保ちて若々しく
  国魂神を生ませ給はれ』

 田族比女の神は感激に堪へず、御歌もて答へ給ふ。

『ありがたし尊し朝香比女の神の
  優しき言葉に蘇りける

 八柱神尊き比女の御自ら
  吾を訪はせし今日の畏さ

 顕津男の神の出でまし待ちまちて
  今はやうやく年さびにけり

 眺めよきこの高殿に安らかに
  光放ちて在しましませ』

 朝香比女の神は御歌詠ませ給ふ。

『吾もまた同じ思ひの御樋代よ
  背の岐美に会ふと求ぎて来れり

 背の岐美は西方あたり曲津見の
  百の軍と戦ひ給はむ

 一水火の契なれども主の神の
  依さしなりせば忘れ難く思ふ』

 田族比女の神は御歌詠ませ給ふ。

『愛くしき朝香の比女の言の葉に
  吾はおもはず涙しにけり

 背の岐美を恋ふる心の苦しさを
  味はひ給ふ女神いとしも』

 茲に二柱の御樋代神は百年の知己の如く、互に心の底より解け合ひ、同情の涙にくれ給ひつつ思はず知らず日を重ね給ひける。田族比女の神は、白馬ケ岳の魔棲ケ谷にて神々の戦利品として持ち帰りたる数多のダイヤモンドを取出し、朝香比女の神に奉りければ、実に珍しき物よと賞め讃へながら、田族比女の神の奉るままに、こころよく受け取らせ給ひぬ。田族比女の神の奉りたる宝石は、最も光り眩く、最も大いなるダイヤモンドにして稀なる珍しき物なりける。
 朝香比女の神は其の謝礼として、懐中より燧石を取出し、火を切り出で四辺の枯芝を集めて火を燃し給ひければ、田族比女の神を始めとし十柱の神々は初めて真火の燃ゆるを見給ひしこととて、何れも感嘆の声を放ち給ひけるが、朝香比女の神は宝石の謝礼として手づからのこの燧石を田族比女の神に贈り給ひける。
 田族比女の神は御歌詠ませ給ふ。

『あら尊明るき熱き火は燃えぬ
  闇夜を照らす神なるよ真火は

 この国土に真火の功のある限り
  曲津見の神は荒ばざるべし

 曲神の潜む山野を焼き払ひ
  清むるによき真火なりにける

 朝香比女の神の給ひし燧石は
  万里の神国の貴の宝よ

 石打ちて真火出づるとは今日の日まで
  愚しき吾はさとらざりけり

 この宝賜ひし上は万里の国土の
  総ての曲津を焼き滅ぼさむ』

 朝香比女の神は御歌詠ませ給ふ。

『鋭敏鳴出の神の賜ひし燧石なれば
  国土の鎮めと公に贈るも

 この燧石一つありせば稚国土も
  忽ち固らに栄えゆくべし

 穀物その外すべての食物を
  真火にてあぶれば味はひよろしも

 真清水も真火の力に湯となりて
  神に捧ぐる代となるべし』

 田族比女の神は又もや御歌詠ませ給ふ。

『朝香比女神に捧げし宝石は
  光あれども熱からず燃えず

 命なき光を公に奉り
  命ある光を賜はりしはや』

 茲に二柱の神はダイヤモンド、燧石の贈答終り、再び寛ぎて歓談に耽けらせ給ふ。
 初頭比古の神は御歌詠ませ給ふ。

『波の秀を渡りて万里の神国に
  求ぎて来つるも公を守りて

 珍しく輝く玉を見たりけり
  この新国土に着きし間もなく』

 起立比古の神は御歌詠ませ給ふ。

『高山と高山の中に斯くの如
  聖所のあるは珍しきかな

 御樋代神と御樋代神の出会ひませる
  この神国は永久に栄えむ』

 立世比女の神は御歌詠ませ給ふ。

『わが公に従ひ奉りて万里の国土に
  夜光の玉を拝みけるかも

 夜光の玉は美しかれども命なし
  燧石の真火の真言にしかざり』

 天晴比女の神は御歌詠ませ給ふ。

『諸々の曲津をやらひし燧石を
  贈らせ給ひしわが公畏し

 貴宝数多あれども真火出づる
  燧石にまさる宝なきかな』

 輪守比古の神は御歌詠ませ給ふ。

『朝香比女神の賜ひし燧石こそ
  この新国土の生ける宝よ

 宝石の光は如何に輝くも
  邪神の持ちし宝なりける』

 霊山比古の神は御歌詠ませ給ふ。

『畏しや天降りましたる八柱の
  比女神の言葉直に聞く吾は

 顕津男の神に出会ふと数万里の
  海山渡らす比女ぞ雄々しき』

 若春比古の神は御歌詠ませ給ふ。

『やうやくに雲霧晴れし万里の国土に
  二柱の御樋代神天降らせり

 わが公は尊しされど八柱の
  比女の功はひとしほ高し』

 保宗比古の神は御歌詠ませ給ふ。

『珍しや御樋代神は二柱まで
  この神国に天降り給ひぬ

 西方の国土に出でます朝香比女の
  神の心を雄々しとおもふ』

 直道比古の神は御歌詠ませ給ふ。

『一柱の瑞の御霊を恋ひ恋ひて
  ねたみ給はぬ御樋代神等よ

 惟神神の依さしの御樋代なれば
  清くすがしく在しましけるよ』

 山跡比女の神は御歌詠ませ給ふ。

『御樋代の二柱神の御面は
  月日の如くかがよひませり

 拝むもまばゆきばかり御樋代の
  神のおもざし輝き強し』

 千貝比女の神は御歌詠ませ給ふ。

『はろばろと瑞の御霊を慕ひまして
  出でます朝香比女の神雄々しも

 雲霧をいぶきわたりて海原の
  波の秀ふみて来ませし公はも』

 湯結比女の神は御歌詠ませ給ふ。

『ためしなき雄々しき御樋代神等の
  赤き心に照らされしはや

 帰りまさむ日は近づきぬ美しき
  神に別るとおもへばかなしも』

 正道比古の神は御歌詠ませ給ふ。

『御樋代神これの神国に賜ひたる
  燧石は千代の宝と仰がむ

 斯くの如尊き生ける力あらば
  万里の神国におそるるものなし』

 雲川比古の神は御歌詠ませ給ふ。

『新しく国土は生れぬ新しき
  真火輝きぬ神の恵に

 身を清め心清めて燧石の
  神霊を永久に斎かむとおもふ』

 斯く神々は各自御歌詠ませつつ、朝香比女の神の訪問や、燧石を国宝として賜ひしことなどの嬉しさに国土の前途を祝し給ひけるが、御樋代神の朝香比女の神は長らくこの国土に留まるを得ず、以前の四柱の神を従へまし諸神に別れを告げ、御来矢の浜辺より磐楠舟に乗り万里の海原を東南の空さして静かに静かに進ませ給ひける。
(昭和八・一二・一七 旧一一・一 於大阪分院蒼雲閣 内崎照代謹録)
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