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文献名1霊界物語 第78巻 天祥地瑞 巳の巻
文献名2第1篇 波濤の神光よみ(新仮名遣い)はとうのしんこう
文献名3第1章 浜辺の訣別〔1957〕よみ(新仮名遣い)はまべのけつべつ
著者出口王仁三郎
概要
備考
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あらすじ
万里(まで)の大海原に浮かぶ万里の島は、面積八千方里。豊葦原の瑞穂の国の発祥地である。

八十曲津神がこの島に発生し暴威を振るっていたが、八十御樋代神の一人、田族(たから)比女の神が、主の神の命により十柱の女男の神将を率いて荒ぶる曲津神たちを追い伏せ追い払った。

その後、やはり御樋代神である朝香比女の神が万里の島を訪れ、国の形が改まり、また曲神の恐れる天の真火の火打石をもたらした。

この巻では、その後太元顕津男の神が西方の国を治め、朝香比女に国魂神の養育を任せて万里ケ島に降り立ち、田族比女の神と御水火をあわせて国魂神を生み、再び高照山北面の稚国原を修理固成するべく進んで行く、その大略を示す。

朝香比女の神とその従者神男女四柱の神々が、万里ケ島を立ち去ろうとすると、田族比女の神は十柱の神々を率いて御来矢の浜辺まで見送り、別れの歌を互いに交わした。

朝香比女は、万里ケ島の栄を祈り、顕津男の神に出会えたら、田族比女のことを伝えようと歌った。また、天の真火によって国を守るように諭した。

田族比女以下、みな朝香比女への名残おしさと天の真火を賜ったことへの感謝を歌った。

田族比女の従者神、直道比古は、せめて西方の国の国境まで、朝香比女一行を遅らせてくれるようにたのんだ。しかし朝香比女は、残って万里ケ島を守るように諭した。

一同はさらに訣別の歌を交し合い、朝香比女の神と四柱の従者神は、駒とともに磐楠船にひらりと乗り移れば、すがすがしい陽気に満ちた風がたちまち吹いて来て、櫓や櫂を使わずに、舟は海上に静かに動き出した。
主な人物 舞台 口述日1933(昭和8)年12月20日(旧11月4日) 口述場所大阪分院蒼雲閣 筆録者加藤明子 校正日 校正場所 初版発行日1934(昭和9)年5月5日 愛善世界社版 八幡書店版第14輯 29頁 修補版 校定版3頁 普及版 初版 ページ備考
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本文  万里の大海原に浮びたる万里の島ケ根は、その面積約八千方里にして、豊葦原の瑞穂の国の発祥地なりければ、土地殊に肥え、春夏秋冬の四季の順序正しく、万物の発育又極めて良好なりければ、味よき果物や美しき花に害虫の好んで簇生するが如く、八十曲津見は千代の棲処と此処に暴威を振ひ居たりけるが、八十柱の御樋代神の一柱とまします田族比女の神は、主の大神の神宣を畏み給ひ、十柱の女男の神将を率ゐて此島ケ根に降臨し、生言霊の剣を抜き持ちて、荒ぶる神等を山の尾ごとに追伏せ河の瀬ごとに追攘ひて打ち譴責め給ひ、心安く心楽しき神国と定め給ひける。折しもあれ高地秀の宮居に親しく仕へ給ひし八柱御樋代神の中にても最も美はしく最も面勝神と射向ふ神なる朝香比女の神が、女男四柱の神を従へ、しばし此土に御跡をとどめ給ひしより俄に国形新まり、其威光を日に月に加へ給ひけるこそ目出度けれ。加ふるに曲神の最も忌み恐るる真火を切り出づるべき燧石を、此国土の御宝として朝香比女の神御手づから授け給ひしより、日日に国土治まり、総ての国津神等は其恩恵に浴し、火食の道を盛んに行ひにける。主の大神の生み給ひし八十国八十島の中にて、最も早く火食の道を始めたるは狭野の里なれども、国内一般に火食の道を開きたるは、この万里の島をもつて濫觴となす。故に一名火の国とも称へける。
 是より程経て朝香比女の神の勧めにより、太元顕津男の神は西方の国土を治め、朝香比女の神に国魂神の養育を任せおき、照男の神をして西方の国土を守らしめ置き、潮の八百路を渡りて万里ケ島に天降り給ひ、茲に田族比女の神に御水火を合せ給ひ、左右りの大神業を終へて国魂神を生ませ給ひ、国土の基礎定まるを見すまして再び高照山北面の稚国原を修理固成すべく進ませ給ひしなり。本巻に於て其経緯を略序せむと欲す。
 朝香比女の神及び女男四柱の神々が、万里ケ島を立ち去らむとし給ふや、田族比女の神は十柱の神々を率ゐて御来矢の浜辺まで馬上豊に見送らせ給ひ、訣別の御歌を互に交し給ひける。
 茲に朝香比女の神は御舟に乗らせ給はむとして駒を下り、田族比女の神に対して御歌詠ませ給ふ。

『新しき国土の栄えを祈りつつ
  別れてゆかむ西方の国土へ

 田族比女御樋代神は平けく
  安らけくませ国魂生ますと

 四方八方の雲霧晴れて月日稚き
  国土の栄の思はるるかな

 顕津男の神にしあへば汝が神の
  功を審さに語り伝へむ

 美はしく雄々しくいます田族比女の
  神の真心伝へまつらな

 短かけれどこの新国土に留まりて
  吾が魂線は足らひけるかな

 御樋代神手づからたまひし宝石を
  清き御魂と朝夕仰ぐも

 曲津神荒び狂はむ事あらば
  真火の力に追ひそけたまへ

 海原の雲霧晴れて浪の秀は
  天津日光にかがやき渡るも

 別れゆく今日の名残は惜しめども
  留まるよしなき吾なりにけり』

 田族比女の神は酬の御歌詠ませ給ふ。

『雄々しくて優しくいます朝香比女の
  神に別ると思へば悲しも

 顕津男の神に吾事まつぶさに
  宣らすと言ひし公に感謝す

 此国土の千代の固めの宝なる
  燧石をたまひし嬉しさに泣く

 何よりの貴の宝よ燧石もて
  治まる国土に曲神はなし

 公が御行天津日光も祝ぎまして
  大海原を晴らさせたまへり

 朝宵に公の御幸を祈りつつ
  神の御前に仕へまつらむ

 万里ケ丘に公が記念と美はしき
  宮居造りて仕へまつるも

 八柱の御樋代神の天降りましし
  此の島ケ根は特に尊し

 万世に伝へ伝へて朝香比女の
  御魂を祀り守り神とせむ

 火の神と御名を称へて朝香比女の
  大宮柱太しく仕へむ

 永久に公が御魂を止めおきて
  この新国土を守らせたまへよ

 千早振る神世も聞かず朝香比女の
  八柱神のいでまし尊し

 今日よりは御空の月日も光清く
  照り渡るらむ公の御稜威に』

 霊山比古の神は御歌詠ませ給ふ。

『御来矢の浜辺に公を見送りて
  名残惜しさに涙こぼるる

 如何にしても止めむよしなき朝香比女の
  神のいでたち惜しまるるかな

 永久にこの新国土に御魂を
  止めて吾等を守らせたまへ

 新しき国土の宝を賜ひつつ
  旅に立たすよ光の神は

 いざさらば潮の八百路も恙なく
  進ませたまへ面勝の神』

 輪守比古の神は御歌詠ませ給ふ。

『天晴れ天晴れ光の神は帰りますかと
  思へば惜しき今日の別れよ

 田族比女神に賜ひし燧石は
  公の光と千代を照らさむ

 天地に又なき宝を賜ひつつ
  出で立たす公を送る淋しさ

 曲神は如何に伊猛り狂ふとも
  光賜ひし国土はやすけむ

 曲津見の伊猛り狂ふ暁は
  焼き滅さむ山に火をかけて

 百万の曲の猛びも何かあらむ
  ただ一点の真火の光りに』

 若春比古の神は御歌詠ませ給ふ。

『国土稚く春の陽気の漂へる
  国土に仕ふる若春の神

 若春の神も悲しくなりにけり
  朝香の比女の旅立ち送りて

 瑞御霊一日も早く天降りませと
  伝へたまはれ面勝の神よ

 かくのごと雄々しく優しく美はしき
  女神に別ると思へば悲しも

 惟神また時あらば此の島に
  天降らせたまへ光の女神よ』

 保宗比古の神は御歌詠ませ給ふ。

『天地の一度に晴れし思ひせし
  公帰らすと思へば淋し

 田族比女神に賜ひし御宝に
  吾は仕へむ公と仰ぎて

 万里の島の生の命の燧石こそ
  千代万代の宝なりけり

 国向の鋒にもまして尊きは
  公の賜ひし燧石なりける』

 直道比古の神は御歌詠ませ給ふ。

『久方の御空はさやかに晴るれども
  吾魂線は曇らひにけり

 幾千代も万里の島根におはしませと
  祈りし心も夢となりしか

 尊かる八柱神の天降りましし
  万里の国原は輝きにけり

 此の島の森羅万象おしなべて
  今日の別れを惜しみつつなく

 許しあればせめて西方の国境まで
  御樋代神を送りたきかな

 田族比女神の功は尊けれど
  一入貴き公が御光

 万世の記念と公が賜はりし
  燧石は国土の光なるかも』

 田族比女の神は朝香比女の神に向ひて御歌詠ませ給ふ。

『朝香比女神の神言よ直道比古の
  願ひをつばらに許させたまへ

 直道比古神の御供に仕ふるは
  吾御手代と思し召しまして』

 朝香比女の神は酬の御歌詠ませ給ふ。

『雄々しかる直道比古の真心を
  吾嘉すれど許すすべなし

 惟神神の定めし十柱の
  万里の島根の柱ならずや

 束の間も十柱神の欠くるあらば
  万里の島根は又も動かむ

 四柱の神を従へ出でてゆく
  吾には何の艱みなければ

 十柱の神を手足と朝夕を
  国土生みの神業に使はせ給へ

 御樋代神の御言葉否むにあらねども
  万里の新国土思ふが故なり』

 田族比女の神は御歌詠ませ給ふ。

『明らけき公の言葉に照らされて
  答の言葉吾なかりけり

 御教を畏みまつり十柱の
  神と諸共国土を拓かむ

 直道比古の神よ心を落ち付けて
  公の御教に従ひまつれよ』

 直道比古の神は御歌詠ませ給ふ。

『二柱の女神の神言畏みて
  高鳴る胸の火を鎮めなむ

 万里の海は到る処に曲津棲めば
  心し行きませ朝香比女の御神』

 正道比古の神は御歌詠ませ給ふ。

『浪の音はいやさやさやに響かへど
  心の海に浪たち騒ぐも

 公が御舟かくるるまでも佇みて
  見送る外にすべなかるべし

 浪の上潮の八百路も安かれと
  吾真心に祈るのみなる

 果しなき広き稚国土万里ケ島の
  記念と賜ひし燧石はも

 田族比女神の御言葉をかしこみて
  公が宮居を仕へまつらむ』

 雲川比古の神は御歌詠ませ給ふ。

『顕津男の神に会はすと出でたたす
  公が旅路の遥けくもあるか

 八潮路の潮の八百路も恙なく
  進ませたまへ朝香比女の神

 四柱の御供の神等おはしませば
  心やすけく御舟を送るも

 をりをりは思ひ出して万里ケ島に
  清き御魂を通はせたまはれ』

 初頭比古の神は御歌詠ませ給ふ。

『田族比女神の神言の真心に
  別れの涙止めあへぬも

 朝香比女神の神言の御尾前を
  守り進まむ御心安かれ

 いろいろと生言霊のもてなしに
  わが魂線はよみがへりつつ

 なつかしき万里の島ケ根を後にして
  潮の八百路を進みてゆかむ

 此島は紫微天界の真秀良場と
  千代に八千代に栄えますらむ

 朝香比女の神に仕へて美はしき
  万里ケ島根の国形見しはや

 いざさらば名残は尽きじ吾公の
  御尾前守りて神国に別れむ』

 起立比古の神は御歌詠ませ給ふ。

『幾年もこの島ケ根に村肝の
  心清けく住ままく思ひし

 吾公の御供なれば村肝の
  心に任せぬ吾なりにけり

 牛頭ケ峰白馬ケ岳に立つ雲を
  遠行く舟に仰ぎて偲ばむ

 霊幸はふ神世の初めの田族国と
  吾は思ひぬ万里の島根を

 雲霧を吹き払ひたる万里ケ島は
  光にみつる貴の国原よ

 吾は今光の国土を後にして
  光の公と海原進まむ

 田族比女神は光の神とまして
  万里の新国土を照らさせたまへ』

 立世比女の神は御歌詠ませ給ふ。

『新しき国土の光を見ながらに
  吾は御供に仕へて行くも

 鳥獣草木の端に至るまで
  なつかしく思ふ万里の島根は

 森羅万象皆吾友と親しみし
  この新国土に別れむとすも

 主の神の許しありせば吾も亦
  この新国土に再び来らむ

 田族比女神の神言の顔を
  いや永久に若く守らむ

 この島の別れにのぞみ田族比女の
  神の優しさ若さを守らむ

 十柱の神の御姿永久に
  いや若かれと吾は祈るも』

 天晴比女の神は御歌詠ませ給ふ。

『田族比女の神十柱の神いざさらば
  名残を惜しみて今や別れむ

 心若く永久にましませ万里ケ島の
  守りの神と光らせたまひつ』

 かく互に歌もて訣別の辞を述べたまひ、朝香比女の神初め四柱の神は駒諸共に磐楠舟にひらりと移らせたまへば、春とも初夏とも知れぬ陽気にみてる清しき風は忽ち吹き来り、艪櫂を用ひたまはぬに御舟は波上静に動き出でにける。
(昭和八・一二・二〇 旧一一・四 於大阪分院蒼雲閣 加藤明子謹録)
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