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文献名1霊界物語 第78巻 天祥地瑞 巳の巻
文献名2第1篇 波濤の神光よみ(新仮名遣い)はとうのしんこう
文献名3第3章 グロスの島〔1959〕よみ(新仮名遣い)ぐろすのしま
著者出口王仁三郎
概要
備考
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あらすじ
紫微天界はまだ国土が稚く、国の形も完全には定まっていなかったので、あちこちに妖邪の気が凝り固まって、種々の異様の動植物を生み、それがまた妖邪の気を四方に飛散させていた。

主の大神は、完全無欠の神の国を開設しようと、天之道立の神、太元顕津男の神の二柱に、霊界現界の神業を委任した。

天之道立の神は惟神の大道を宣布し、顕津男の神は国土を治める司神を造ろうと国土を巡った。

邪神の中には、数個の頭を持った竜や大蛇がおり、翼の生えた虎、狼、熊などが水陸両面に住んでいるものもおり、容易に正しい神の経綸を許さなかった。

そこで、主の大神は、これらの妖魔を根底的に言向け和し征服全滅しようと、英雄的な資質を持った神々を、紫微天界の四方に派遣していた。

御樋代神はすべて女神であったが、みな優美な姿とはうらはらに、勇猛剛直で神代の英雄神のみが選ばれていたので、その行動が雄々しいことは何も不思議なことでないのである。

朝香比女の神の乗った磐楠船は、日のたそがれるころ、曲津神が集まるというグロスの島に近づいた。曲神の島は、突然黒煙を四方に吹き散らし、海面を闇に包んで船さえも見えないほどになってしまった。

このグロスの島には、ゴロス、グロノスという二大曲津神があり、数多の醜神を使役して、隙あらば他の島を侵そうとかまえていた。

御樋代神の船が島に近づいてきたので、ゴロス、グロノスはあらゆる曲神を呼び集め、必死に船が近づくのを妨害しようと猛り狂っていた。

朝香比女の神は、いかに曲神が抵抗しようとも、真火と言霊により、征服しよう、と歌った。そして、闇が近づく黄昏時を避けて、明日の朝を待った。

すると、グロスの島から沸き立つ黒雲は次第次第に雲の峰が湧くように膨れ広がり、あたりの海面を真の闇と包んでしまった。そして、青白い火団が、船の周囲を蛍合戦のように飛び狂い、凄惨の気が漂ってきた。

朝香比女は少しも驚かず、平然として曲神の業を眺めながら、歌を歌った。最後に天晴比女の神が天の数歌を歌い、大空の月をあらわして曲神を照らし現そう、と歌うと、黒雲は風に吹き散らされ、天空に明るく清い月影が浮かび照らした。

グロノス、ゴロスは夜が明けるまでに船を滅ぼそうと死力を尽くし、長大な竜蛇の姿を現し、剣のような角をかざしながら、船に向かって火焔を吐いた。

朝香比女の神は平然として微笑みながら、暁まではこの船に休み安らう、と歌った。

各神々は、グロスの島に向かって明日の征途を楽しみながら歌を歌い、眠らずに船の上に安座して、さまざまなことを面白おかしく語り合い、夜明けを待っていた。
主な人物 舞台 口述日1933(昭和8)年12月20日(旧11月4日) 口述場所大阪分院蒼雲閣 筆録者谷前清子 校正日 校正場所 初版発行日1934(昭和9)年5月5日 愛善世界社版 八幡書店版第14輯 41頁 修補版 校定版48頁 普及版 初版 ページ備考
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本文  紫微天界は未だ国土稚く、国形も完全には端々に到りては定まらざりければ、あちこちの稚国原には妖邪の気凝り固まりて種々の動植物を生み、特に異様の動物数多棲息して妖邪の気を四方に飛散せしめ、森羅万象の発育を妨ぐるも是非なき次第なりける。
 ここに主の大神は完全無欠の神の国を開設し給はむとして、天之道立の神、太元顕津男の神の二柱に霊界現界の神業を委任し給ひければ、天之道立の神は惟神の大道を宣布し、日夜倦ませ給はず、顕津男の神は国土を治むべき司神を造らむとして、国土のあちこちを経廻り給ひ、主の神の生ませ配り置き給ひし御樋代神と見合ひまして、国魂神生みの神業にいそしみ給ふ神定めとはなりける。
 邪神の中には数箇の頭をもてる竜あり、大蛇あり、又翼の生えし虎あり、狼、熊等ありて島の中に棲息し、水陸両方面を兼ねて棲まへるなどありて、容易に正しき神の日々の経綸を許さざりける。故に主の大神はこの妖魔を根底的に言向けやはし、征服し、全滅せしめむとして英雄的素質を持たせる神々を紫微天界の四方に派遣し給へるなりける。
 御樋代の神は総て女神にましませども、いづれも優美なる容姿に似ず、勇猛剛直にして神代の英雄神のみを選まし給ひければ、その御行動の雄々しくましますことは自然の道理におはしましけるぞ畏けれ。
 万里の島根を永久に  基礎を固むる御樋代の
 八柱神と生れませる  朝香比女神は雄々しくも
 長の旅路に立ち給ひ  百の艱みをしのびつつ
 あなたこなたの国形を  𪫧怜に委曲に固めつつ
 狭野の島ケ根生み終へて  天中比古を司とし
 いよいよ進んで万里の島  この稚国土を固めむと
 御樋代神に迎へられ  万里ケ丘なる聖所に
 生言霊をとり交し  国土の宝と燧石
 田族の比女に贈らせつ  七日七夜の逗留を
 漸く終へて御来矢の  浜より舟に乗らせつつ
 永久の別れを惜しみまし  万里の海原静々と
 波路を分けて進みます  ああ惟神々々
 神の言霊幸はひて  朝香の比女の恙なく
 瑞の御霊の現れませる  雲霧深き西方の
 国土に出でます物語  𪫧怜に委曲に落ちもなく
 述べさせ給へと瑞月が  蒼雲閣に端坐して
 生言霊の幸はひを  大本皇大神の
 御前に畏み願ぎ奉る  うすき冬陽の輝ける
 蒼雲閣の清庭に  吾立ち居れば大空を
 轟かせつつ三台の  飛行機来りて舞ひ狂ひ
 非常時日本の光景を  しみじみ吾に思はせり
 ああ惟神々々  わが述べてゆく物語
 生言霊の幸はひて  非常時日本を救ふべき
 よすがとなれば道の為  御国の為の幸はひと
 謹み敬ひ述べてゆく  吾言霊に幸あれよ
 吾言霊に生命あれ。
 朝香比女の神の乗らせ給へる磐楠舟は、大小の島々を右に左に縫ひながら日の黄昏るる頃、曲神の集まると聞えたるグロスの島に近より給へば、名にし負ふ曲神の島は俄に黒烟を四方に吐き散らし、海面を闇に包みて御舟さへ見えずなりにける。
 このグロスの島には、ゴロスと言ふ猛悪なる大蛇の神棲息して、数多の醜神を使役し、隙あらば総ての島々を侵さむとしつつ待ちかまへ居たるに、今ぞ御樋代神の御舟、この島に近づきければ、グロスの島の曲津神グロノス、ゴロスの二巨頭は、あらゆる曲神を呼び集め、必死となりて御舟の近づくを妨害せむと伊猛り狂ひける。
 朝香比女の神は御歌詠ませ給ふ。

『二百浬吾渡り来て黄昏れつ
  グロスの島に近づきしはや

 此島にグロノス、ゴロスの曲津神
  潜むと聞きて舟よせにける

 曲津見はここを先途と黒烟を
  吐き散らしつつ四方を包めり

 言霊の水火の光りと鋭敏鳴出の
  神のたまひし燧石にかためむ

 曲神の勢如何に猛くとも
  火をもて焼かば容易に滅びむ

 曲神は如何に勢強くとも
  真言の力なきものぞかし

 黄昏の闇に戦ふ不便さに
  波にうかびて朝を待たばや』

 初頭比古の神は御歌詠ませ給ふ。

『比女神の神言畏し曲神は
  朝日を待ちて滅すぞよき

 天界にさやる曲津の種をたやし
  安き神国と定め奉らむ

 黄昏の闇は海原悉く
  包めど吾には火をもてりけり

 御舟に真火を照らして明方を
  静に待たむ魔の島近く

 面白き海路の旅よ曲神の
  百のいたづら見つつ進むも』

 起立比古の神は御歌詠ませ給ふ。

『狭野の島の魔神もここに集まりて
  行手にさやると伊猛るならむ

 黒雲の幕に包めど吾舟は
  真火の光りに安かりにけり

 明け方を待ちていよいよ魔の島を
  焼き滅すと思へば楽しき

 曲神よ吾上陸に先き立ちて
  服従ひ来れしからば許さむ

 比女神に汝等が生命乞ひうけて
  真言の道に救ひ助けむ

 一夜の生命と思へば曲神の
  身こそあはれになりにけるかな』

 グロスの島より湧き立つ黒雲は、次第々々に雲の峰の湧く如くふくれ上り、拡ごり、四辺の海面を真の闇と包み、青白き火団は御舟の周囲を螢合戦の如く飛び交ひ狂ひめぐり、凄惨の気闇と共に漂ひにける。
 朝香比女の神は少しも驚き給はず、平然として曲神の種々の業を御覧しながら、御歌詠ませ給ふ。

『面白き曲神なるかも闇の海に
  青白き火となりて飛べるも

 曲神の火は青白く光りなし
  鬼火か陰火か熱からぬかな

 火の玉と見れども光らず熱からず
  海月の如くただよへるかも

 明日さらばグロノス、ゴロスを言向けて
  この魔の島を清めむと思ふ

 八潮路の長き旅路に疲れはてて
  曲津のすさびを見るは楽しき

 百千万の火団となりて猛り狂ふ
  状面白く舟の上に見つ

 吾が舟は波に浮べど動かざり
  生言霊の錨につなげば』

 立世比女の神は御歌詠ませ給ふ。

『炎々と御空の月をかくしつつ
  魔の島ケ根ゆ黒雲立ちたつ

 曲神は黒雲起しおく深く
  しのびつ怖ぢつ狂ふなるらむ

 曲神の数多集へるグロスの島を
  今日珍しく黄昏れて見つ

 黄昏の海にうつらぬ火の玉は
  正しく陰火のしるしなりけり

 真火なれば波の底まで輝かむを
  青白きのみ光りだになし

 言霊の生ける光に照らされて
  グロノス、ゴロスも滅び失すべし

 御樋代の神の出でましに魔の島は
  清きすがしき国土と生れむ』

 天晴比女の神は御歌詠ませ給ふ。

『吾こそは御供に仕ふる天晴の
  比女神なるよ御空晴らさむ

 一二三四五六七八九十
  百千万の神集ひませ

 大空の月を照らして魔の島の
  曲津見の頭を現はさむかも』

 斯く歌ひ給ふや、魔の島の上空を包みし黒雲は次第々々に科戸の風に吹き散らされて、天空明く清く円満清朗の月影は浮ばせ給ひ、波の底深く輝き給ひける。
 ここにグロノス、ゴロスの曲津神は夜の明くるまでに御舟の神等を滅しくれむと死力を尽し一百有余旬の竜蛇の姿を現し、数頭の頭には各自太刀の如き角をかざしながら、頻りに御舟に向つて火焔を吹く光景はもの凄きまでに見えにける。
 朝香比女の神は平然として微笑みながら御歌詠ませ給ふ。

『勇ましやグロノス、ゴロスの雄猛びは
  吾行く旅をなぐさめにける

 火を吐けど角はふれども眼は光れど
  吾には何の艱み覚えず

 力限り雄猛び狂ふ曲神の
  心思へばあはれなるかも

 兎も角も暁まではこの舟に
  吾休らはむ心安けく』

 初頭比古の神は御歌詠ませ給ふ。

『一夜の生命と思へば曲神も
  最後の荒びあはれなるかな

 常闇をうすら照らして曲神は
  あまたの口より焔を吐くも

 光にぶき松明と思へば面白し
  月は御空に輝き給へど

 月読の光りますますさやかにて
  魔の島ケ根の雲はあせたり

 ところどころ魔神の吐き出す黒雲は
  次第々々にうすらぎしはや

 斯くの如浅き奸計の曲神の
  雄猛び見れば雄心わくも

 明日さればこの島ケ根を悉く
  焼き清むべし曲神退け』

 起立比古の神は御歌詠ませ給ふ。

『海中に永久に浮べる魔の島の
  雲は晴れけり月の光りに

 月冴ゆる万里の海原に浮びたる
  グロスの島は全く現れけり

 この島も思ひしよりは広くして
  あまたの曲神騒ぎ廻れり

 この島も主の大神の生みませる
  生島なれば清め奉らむ

 日並べて神の神業に仕へつつ
  又も楽しき明日を迎へつ』

 立世比女の神は御歌詠ませ給ふ。

『黒雲は島のあちこちに太く高く
  立てども明日は跡形もなけむ

 黒雲を時じく起して天地の
  水火を濁せる曲神の島かも

 この島の曲神ことごと言向けて
  稚き国原生むは楽しも

 この島に御樋代神の籠らすと
  聞きしは夢か黒雲立ちたつ

 御樋代の神も悪魔の雄猛びに
  暫し御姿をかくし給ふか』

 天晴比女の神は御歌詠ませ給ふ。

『天も地も生言霊の御光りに
  照らして稚き国土を生まばや

 天晴比女神の御供に仕へつつ
  この島ケ根の雲を晴らさむ』

 各神々はグロスの島に向つて明日の征途を楽しみながら御歌詠ませつつ、一目も眠らせ給はず磐楠舟の上に安坐して、種々のことを面白可笑しく語り合ひつつ夜の明方を静に待たせ給ひけるぞ畏けれ。
(昭和八・一二・二〇 旧一一・四 於大阪分院蒼雲閣 谷前清子謹録)
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