葦原比女の神は、天体に現れた月星の奇現象に、三千年の天地の刻が至ったことを証覚し、大勇猛心を発揮して、天津神たちを残らず地に降し、また地に潜んでいた御魂の清い国津神を抜擢して国土の政治一切を統括した。
この英断に朝香比女の神は感激し、諸神に向かって新しい国土の誕生に、宣示の歌を詠んだ。葦原比女の神は、忍ケ丘に国土の司を定めると宣言すると、ここに主の大神の祭壇を作らせ、神々の神任式の祭典を盛大に執り行った。
野槌比古の神を始め、国津神より選ばれた五柱の神々は、葦原比女の神の前に進み出ると、任の重さに身を引き締め、国土に尽くす覚悟と抱負の歌を歌った。
葦原比女の神は続いて、もと天津神として仕えていた従者神たちそれぞれに、地上の任務を言い渡した。真以比古は西の国土、成山比古は南の国原、霊生(たまなり)比古は東の国原、栄春比女は北の国土、八栄比女は、野槌比古がもと司っていた忍ケ丘を、それぞれ任命された。
こうして朝香比女の神一行の立会いのもと、神任式は無事に終了し、天津神は国津神となり、国津神は天津神を任命され、葦原の国土は新しい生命に輝きはじめた。