臥所を起き出た冬男に、三人の乙女らはお茶を勧めた。のどが乾いていた冬男は何も考える間もなくぐっと飲み干したが、その味わいは香ばしいが臭みがあった。もしや水奔草の茶ではないかと驚いたが、何食わぬ体で天地を拝し、天之数歌を歌った。
するとたちまち家も笑い婆も三人の乙女も消えうせ、あたりは白樺と雑草の茂る丘の上となってしまった。
冬男は驚いて草原を進んでいったが、だんだんに頭は痛み足はだるみ、気分が悪くなってきた。小さな丘にたどりついたが、体は腫れ上がり身動きもできなくなってしまった。
すると闇の中から笑い婆の声が聞こえてきた。そして、冬男を計略にかけ、毒茶を飲ませたことを誇らしげに歌った。三人の乙女は娘などではなく、やはり水奔草の毒茶で命を落とした水奔鬼であった。
冬男は息も切れ切れになりながら笑い婆に抵抗するが、笑い婆は冬男をあざ笑う。冬男は無念の歯を食いしばりながら笑い婆の思い通りにはならないと意気を歌うが、ついにその場に打ち伏して命を落としてしまった。