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文献名1霊界物語 第80巻 天祥地瑞 未の巻
文献名2第3篇 天地変遷よみ(新仮名遣い)てんちへんせん
文献名3第23章 野火の壮観〔2027〕よみ(新仮名遣い)のびのそうかん
著者出口王仁三郎
概要
備考
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あらすじ
高光山の聖場は、朝香比女の神の降臨によって輝きがみなぎり、瑞雲たなびき新生の気があたりにただよった。

朝霧比女の神は、八尋殿に朝香比女の神一行を招き、心限りの歓待をした。朝霧比女の神は、朝香比女の神の来着を喜ぶ歌を歌い、朝香比女の神は感謝の辞を歌った。そして、各従者神たちも互いに歓迎と感謝の辞を述べ終わると、朝香比女の神は、葭原の国の原野を焼き清めるために、燧石を国土の宝として進呈しようと提案した。

朝霧比女の神はいたく喜び、朝香比女の神に感謝の歌を歌うとさっそく、大御照の神以下の神々に命じて地上に降らしめ、真火の燧石で葭原に火を放たせた。すると、折からの旋風にたちまち原野は火の海となり、水奔草や猛獣毒蛇は火に包まれた。

この様を見て、朝香比女の神、朝霧比女の神以下高光山の神々は歓び、歓声を上げた。大御照の神は高光山に復命し、焼き清めの様子を詳細に報告した。朝霧比女の神は改めて、真火の神徳に感謝の歌を歌った。

ここに山上の宴会は終了した。朝霧比女の神以下高光山の神々は、朝香比女の神一行に感謝の辞を述べ、松浦の港まで、朝空男の神、国生男の神が鳥船で一行を送っていった。

半日をかけて松浦の港に着くと、朝空男の神は、国生男の神を残して去っていった。これは、朝霧比女の神が朝香比女の神の好意に報いようと、天の鳥船の製造技術を持つ国生男の神を、朝香比女の神の供として仕えるように遣わしたのであった。

朝香比女の神一行は、国生男の神を新しい供に加えて、西方の国土を指して出航していった。
主な人物 舞台 口述日1934(昭和9)年07月31日(旧06月20日) 口述場所関東別院南風閣 筆録者白石恵子 校正日 校正場所 初版発行日1934(昭和9)年12月5日 愛善世界社版 八幡書店版第14輯 412頁 修補版 校定版450頁 普及版 初版 ページ備考
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本文  高光山の聖場は、御樋代神朝香比女の神の降臨に俄かに輝き漲り、青木ケ原の神苑は瑞雲棚引き、新生の気四辺に漂ふ。
 朝霧比女の神は、八尋殿に朝香比女の神一行を招じ、心の限り歓待を尽し、高光山の名物たる、露も滴らむばかりの熟れたる杏の実を山の如く積み、木瓜もて造りたる美酒を献り、ここに大御照の神以下の重臣はじめ百の神々集りて、大宴会は開かれにける。
 朝霧比女の神は御歌詠ませ給ふ。

『八柱の御樋代神の出でましに
  これの神苑は蘇りたり。

 はろばろと波路を渡り雲を分けて
  朝香の比女は出でましにけり。

 高光の館に仕ふる神々も
  朝香の比女の御稜威讃へよ。

 八柱の御樋代神の中にして
  勝れ給へる朝香比女神よ。

 朝香比女の神の神言に物白す
  美味果物御酒を召しませ。

 此酒は木瓜にて造りこの杏は
  高光山の誉なりけり。

 山高く清水とぼしき此山に
  尊きものは果物なりけり』

 朝香比女の神はこれに答へて、

『いろいろの心尽しのうましもの
  辱なみてよろこび食まむ。

 草枕旅を重ねてうるはしき
  今日の宴にあひにけらしな。

 神々の清き心の味はひと
  喜び吾は戴かむかも。

 四方の国見晴らすこれの聖所の
  宴に臨む吾は嬉しき。

 鳥船のいさをによりて遠き道
  嶮しき山を安く来つるも』

 大御照の神は歌ふ。

『御樋代の神に仕へて朝夕を
  言霊宣れる大御照われは。

 大御照神の名告りはありながら
  心のくらき吾恥かしも。

 百日日の禊重ねて漸くに
  心の光照り初めにけり』

 初頭比古の神は歌ふ。

『思ひきや高光の山の尾根高く
  かかる宴にわれあはむとは。

 神々の心づくしの御酒に酔ひて
  吾身体は赤らみにけり。

 身体もみたまも清く蘇る
  此御酒御饌は神の賜物。

 豊御酒を赤丹の穂にと聞食し
  勇み給へよ朝香比女の神』

 朝空男の神は歌ふ。

『はろばろと雲路を分けて迎へてし
  朝香の比女の光り尊し。

 御光の神は神苑に天降りましぬ
  今より葭原の闇は晴れなむ。

 四柱の御供の神の此苑に
  天降りいまして御酒召しますも。

 今日の如めでたき吉き日なかるらむ
  御樋代神を迎へ奉りて』

 起立比古の神は歌ふ。

『見はるかす四方の国原天津日に
  輝きにけり錦映えつつ。

 葭草か水奔草か知らねども
  尾の上より見る野辺は錦よ。

 兎に角にめでたき事の限りかな
  御樋代神の二神いませば。

 芳ばしき御酒御饌に飽きて吾は今
  蘇りけり身体みたまも』

 国生男の神は歌ふ。

『かかる世にかかるめでたき例ありと
  吾は夢にも思はざりしよ。

 雲路分けて迎へ奉りし神々と
  これの清殿にいむかひ居るかも。

 今日よりは葭原の国土隈もなく
  御樋代神のいさをに開けむ。

 神々よ御酒聞食せ御饌を召せ
  面ほてるまで腹ふとるまで』

 立世比女の神は歌ふ。

『女神吾も御供に仕へて高光の
  山の尾の上にのぼりけるかな。

 高光の山の聖所に導かれ
  貴の眺めに解け入りにけり。

 果てしなき遠の広野を見渡せば
  神の力のいみじきを思ふ』

 子心比女の神は歌ふ。

『懐に御子を抱ける吾なれど
  許させ給へ子心比女の神を。

 此御子は水上の山の国津神の
  美し御子なりわれ育くみつ。

 めでたかる今日の祝ひの狭蓆に
  仕へて楽し女神の吾も』

 再び朝香比女の神は御歌詠ませ給ふ。

『朝霧比女の厚き心のもてなしに
  ゐやひの言葉吾なかりける。

 葭原の国土の宝とまゐらせむ
  火種を保つ此燧石を。

 此宝一つありせば葭原の
  国土清まりて永久に開けむ』

 朝霧比女の神は雀踊りしながら満面に笑みを湛へ、御歌詠ませ給ふ。

『ありがたし国土の宝と燧石
  吾に賜ふか朝香比女の神。

 火炎山火種を得むと村肝の
  心を長く砕き来にけり。

 鬼大蛇火炎の火口を守りつつ
  国に火種を取らせざりけり。

 火炎山陥没なして湖となり
  火種の失せし淋しき国なりき。

 朝香比女の神の賜ひし燧石は
  此葭原の永久の宝ぞ』

 茲に朝霧比女の神は、燧石を恵まれたる嬉しさに、大御照の神に命じ、諸々の神等を従へ、天の鳥船に搭乗させ、燧石をもちて地上に降らしめ、風に乗じて葭原に火を放たしめ給ひければ、折から吹き来る旋風に、火は四方八方に燃え拡がり、猛獣毒蛇、水奔草、葭草などの原野は忽ち火の海となり、其壮観譬ふるに物なかりけり。
 朝霧比女の神は、高光山の高殿より此光景をみそなはし、御歌詠ませ給ふ。

『朝香比女神の恵の燧石に
  わが国原はあらたまりゆく。

 炎々と四方に拡ごる野火の煙の
  赤きを見れば楽しかりけり。

 曲鬼も醜の大蛇も醜草も
  真火の力に亡び行くかも。

 今日よりは真火の力に葭原の
  国土を美しき聖所となさむ』

 朝香比女の神は此光景を見、嬉しげに歌ひ給ふ。

『年を経て老い茂りたる葭原の
  葭はもろくも焼かれけるかな。

 濛々と立ちたつ煙見てあれば
  国土の禍消ゆる楽しさ』

 斯く歌ひ、互に野火の燃え拡がる光景を見て、神々はウオーウオーと歓声をあげ給ひける。
 所へ数多の従神を残し置きて、大御照の神は、再び鳥船に乗り此場に帰らせ給ひ、真火のいさをしのいやちこなる事を𪫧怜に委曲に奏上し給ふ。

『葭原に真火を放てば風立ちて
  見る見る醜草焼け失せにけり。

 醜草の中に潜みし曲鬼も
  獣大蛇も暑さに悶えし。

 かくならば猛き獣も曲鬼も
  大蛇も棲まず安く開けむ。

 神々を四方に遣はし松明を
  つくりて真火を放たしめしはや。

 見るうちに醜草原は焼け尽きて
  目路の限りは灰の野となりぬ』

 朝霧比女の神は御歌詠ませ給ふ。

『ありがたし真火のいさをに葭原の
  国土新らしく生きて栄えむ。

 この燧石国の宝と永久に
  主の大神の御殿に祀らむ。

 土阿の国土も予讃の国原も今日よりは
  曲神のかげを留めざるべし』

 茲に山上の宴会は終了し、朝香比女の神の一行に厚き感謝の辞を述べ、松浦の港まで朝空男の神、国生男の神をして鳥船を操らせ、御樋代神の一行を安く送りける。
 朝香比女の神は、雲路を分けて半日のコースを経て、安々と松浦の港に着き給ひ、御歌詠ませ給ふ。

『珍らしき船に乗せられ雲路はるか
  渡りて安く此処に来つるも。

 御樋代の朝霧比女にわが言葉
  伝へ給へよ安く着きぬと』

『御樋代の神の御言葉まつぶさに
  朝霧比女の神に伝へむ』

と朝空男の神は、国生男の神を後に残し、鳥船に乗り中空高く帰りける。
 ここに朝霧比女の神は、朝香比女の神の好意に報いむとして、鳥船造りに功ある国生男の神を御供に仕ふべく遣はし給ひたるなり。
 これより一行六神、駒諸共御舟に浮びて、西方の国土さして出で給ひける。
(昭和九・七・三一 旧六・二〇 於関東別院南風閣 白石恵子謹録)
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