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文献名1霊界物語 第10巻 霊主体従 酉の巻
文献名2第1篇 千軍万馬よみ(新仮名遣い)せんぐんばんば
文献名3第8章 善悪不可解〔438〕よみ(新仮名遣い)ぜんあくふかかい
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日2020-12-24 01:45:26
あらすじ蟹彦は遠山別の到着を注進に行き、上司たちを相手に馬鹿口を叩いている。常世神王は奥の間から出てきて、遠山別の労をねぎらった。するとどこからともなく声が響き、一同に、足元に注意せよ、と呼ばわった。常世神王はじめ一同が気がつくと、みな常世城の馬場にへたりこんで、泥にまみれている。
主な人物 舞台常世城 口述日1922(大正11)年02月21日(旧01月25日) 口述場所 筆録者北村隆光 校正日 校正場所 初版発行日1922(大正11)年8月20日 愛善世界社版72頁 八幡書店版第2輯 416頁 修補版 校定版76頁 普及版33頁 初版 ページ備考
OBC rm1008
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本文  鳩、雀、鵯、つむぎ脅かす、鷹取別の秘蔵の臣下、間の国に使して、片道さへも三百里、山河荒野を打渉り往復したる遠山別、漸う此処に月、雪、花の三人を、肩肘はる山彦の館より、意気揚々として駒に跨り、濁流漲る高野川を打渡り、門前に立ち現れ、
『遠山別帰城せり、門番早く此門開放せよ』
と呼ばはりゐる。
蟹彦『エー、矢釜しいワイ。奥から一寸来て呉れ、門外からも開けて呉れ、之だから人気男になるのも困るワ。彼方からも袖を引かれ、此方からも袖を引かれ、去んでは嬶にボヤかれ困つた事だ。アヽア、色男も辛いものだなア。オイ赤熊、その方に門番を申し付ける、この方は奥へ行つて休息致す』
赤熊『洒落るない。この赤熊は今日只今より中依別と申すお歴々の役人様、ヤア蟹彦、その方に門番を申し付くる』
『何を吐しよるのだ』
と言ひながら両人は、中門ガラリと開いて奥殿に進み入る。
 鷹取別、鼻声で、
『フラフラ、ホノホハ、ホンパカギリノ、ハンヒラカナイカ、ハニヒホ、ハカフマヂヤナイカ、ハガレオロー』
蟹彦『ヤアヤア、中依別が申付くる。鼻ベチヤの鷹取別は門番を仕れ。ヨウ照山彦、その方も同然、門番に昇級させる。有難く思へ』
照山彦『オイ蟹彦、赤熊、その方は気が違うたのか。血迷うたか。確り致せ』
蟹彦『ワツハツハヽヽヽ、血迷ひもせぬ。呆けも致さぬ。この方の申す事、一時も早く承はり、門番となつて表門を堅く守れ。イヤ何、竹山彦殿、今日よりは貴下と同役、今後はお心安くお願ひ申す』
竹山彦『これはこれは痛み入つたる御挨拶、何分よろしく御願ひ申す』
 鷹取別は呆けたる顔をシヤクリながら、
『ハテさて合点のゆかぬ事だワイ。天が変つて地となり、地が天となり、山は海となり、海は山となり、桑園化して湖水となり、墓場は化して観劇場となる。何と合点のゆかぬ事で御座るワイ』
竹山彦『ヤア鷹取別、照山彦、何をグヅグヅ致して居るか、早く表門を開けぬか。中依別は何故この場を立ち去らぬか』
 何時の間にやら表門をガラリと開いて、威勢よく入り来る遠山別、三人の娘を引つたてながら此場に現はれ、
『ヤア、某は間の国に使して首尾よく御用を仕遂げ、華々しき功名手柄を顕はして帰城致せしものぞ』
蟹彦『ヤア、遠山別か、大儀』
『何ぢや、その方は蟹彦、門番の身として、畏くも奥殿に入り居るさへあるに、この方に向つて恰も臣下を扱ふが如き雑言不礼、何と心得居るか』
『ヤア、何とも、カニとも心得居らぬ。一時も早く月、雪、花の三人をこの場に御案内申せよ』
『何だツ、怪体な、訳の分らぬ事になつて来たワイ。ヤア、鷹取別のその鼻は如何なされた。照山彦、その頭は如何なされしか』
『エイ、頭も顔もあつたものか、早く此場へ姫を出さぬか、何は兎もあれ、某が三人の娘の首実検いたさむ』
と玄関先に据ゑられたる駕籠を一寸開き、中を窺いて呆れ声、
『ヤア、赤熊よ、何とも彼とも言へぬ。呆れ果てたるばかりなりけりだ』
赤熊『また、照彦か』
蟹彦『照るの照らぬのと、イヤもう偉い照りで御座る。空照り渡る秋月姫、眩き許りの真白けの深雪姫、四季時を論ぜず咲き匂ふ橘姫、某も腰抜かさむ許りビツクリ仰天致した』
『コラ蟹彦、タカが知れた三人の女、何だ恐ろしさうに何をビクつく』
 三人の娘は悠然として此場に現はれ、
『ヨー、遠山別とやら、お迎へ大儀であつた。その褒美として今日ただ今より常世城の重役を免じ、門番に命ずる。一時も早く門番部屋へお下りあれ』
 この時奥殿より常世神王を始め、松、竹、梅の三人の局は此場に現はれ来り、
常世神王『ヤア、遠山別、御苦労御苦労』
『ハイ、実に以て遅なはり候段、平にお許し下さいませ。愈松、竹、梅の三人、アー否々、月、雪、花の三人の乙女、これへ引き連れ申候。篤と御実検下さいませ』
 何処ともなく、何神の声とも知らず、中空より、
『ワツハツハヽヽヽ、オツホツホヽヽヽ、常世神王をはじめ一同の者、足許に注意致せよ』
と呼はるにぞ、常世神王は此声にハツと気がつき四辺を見れば、常世城の馬場にヘタ張り、その他一同の役人も泥にまみれて蠢いて居る。またもや中空に声あつて、
『ヤア、コンコンチチン、コンチチン、ネツカラホントカ、コンチチン、コンコンチチン、コンチチン』
(大正一一・二・二一 旧一・二五 北村隆光録)
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