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文献名1霊界物語 第10巻 霊主体従 酉の巻
文献名2第1篇 千軍万馬よみ(新仮名遣い)せんぐんばんば
文献名3第15章 言霊別〔445〕よみ(新仮名遣い)ことたまわけ
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日----
あらすじ国祖国治立命の時代は、黄金時代であった。しかし天足彦・胞場姫の体主霊従的邪念が凝って、悪鬼悪狐が地上に蔓延してしまった。そのために、多くの神人が利己主義に走り、大神の神政を破ったのであった。遂には邪気が天変地妖を現出し、大洪水を招いた。世界は泥海と化してしまった。このとき高皇産霊神、神皇産霊神、大国治立神は、顕国玉の神力を活用し、天の浮橋を現して、地上の神人たちを救いかつ戒めた。また、諾冊二神を地の高天原である天教山に降して、天の沼矛で地を修理固成せしめた。国生み神生みを行い、再び地上に神政を敷こうとした。しかし、幾多の年月を経てまたしても地上には邪神がはびこり、再び荒んだ世の中を現出してしまった。常世彦・常世姫の系統は、ウラル彦・ウラル姫と現れて、盤古神王を偽称していた。大国彦・大国姫はロッー山に伊弉冊命と日の出神を僭称した。伊弉冊命は自ら邪神の根源地である黄泉の国へと降りて、牽制的な神業を行った。次いで、海中の竜宮城に現れて、一切の神策を施した。その後一切の幽政を国治立命、稚桜姫命に託すと、ロッー山に行くと見せかけて実は天教山にいったん帰り、そして地教山に身を忍んで修理固成の神業に就かせられたのである。神人らはこの神業を知らず、ロッー山に伊弉冊命が行かれたと思い込んだ。大国彦・大国姫は、その情報を利用して偽伊弉冊命と現れた。そして黄泉島を占領しようと企んでいた。ここに、伊弉諾命は黄泉比良坂の戦いを起こすこととなった。この戦いは、善悪正邪の勝敗の分かれる、世界の大峠である。諾冊二神の修理固成以前と以後では、物語に登場する各地の位置は、大いに変わっていることを注意しなくてはならない。また、過去の巻に出てきた神人が、大洪水後にも現れて、以前より若くなっていたりするのは、この物語が神人の霊を主とした霊界物語だからである。すべて神人は現幽を往来して、神業をなすものなのである。物語では、時間空間を超越した霊界の現幽一貫的な活動を、物質化・具体化して述べたものなのである。その他、種々今日の知識からは不可解なことがあるが、時間空間・現界幽界を脱出して、大宇宙の中心から神霊界の物語を口述したものである。口述者は決して自己の憶測・推量によってなしたものではない。幽斎修行の際に見聞したままの物語なのである。
主な人物 舞台 口述日1922(大正11)年02月23日(旧01月27日) 口述場所 筆録者加藤明子 校正日 校正場所 初版発行日1922(大正11)年8月20日 愛善世界社版119頁 八幡書店版第2輯 434頁 修補版 校定版124頁 普及版55頁 初版 ページ備考
OBC rm1015
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本文  国祖国治立命出現されし太初の世界は、風清く澄み、水清く、空青く、日月曇なく、星を満天に麗しく輝き、山青く、神人は何れも和楽と歓喜に満され、山野には諸々の木の実、蔓の実豊熟し、人草は之を自由自在に取りて食ひ、富めるもなく貧しきもなく、老もなく病もなく死を知らず、五風十雨の順序正しく、恰も黄金時代、天国楽園の天地なりき。然るに天足彦、胞場姫の体主霊従的邪念は、凝つて悪蛇となり、また悪鬼悪狐となり、その霊魂地上に横行濶歩して茲に妖邪の気満ち、貧富の懸隔を生じ、強者は弱者を虐げ、生存競争激烈となり、地上は遂に修羅の巷と化したるのみならず、神人多くその邪気に感染して利己主義を専らとし、遂には至仁至愛の大神の神政を壊滅せむとするに至りける。地上神人の邪気は、遂に世界の天変地妖を現出し、大洪水を起し、一旦地の世界は泥海と化し、数箇の高山の巓を残すのみ、惨状目も当てられぬ光景とはなりぬ。
 この時、高皇産霊神、神皇産霊神、大国治立神は顕国玉の神力を活用し、天の浮橋を現はし給ひて地上の神人を戒め、且つ一柱も残さず神の綱に救ひ給ひ、諾冊二神を地の高天原なる天教山に降して、海月なす漂へる国を、天の沼矛を以て修理固成せしめ給ひ、国生み島生み神を生み、再び黄金世界を地上に樹立せむとし給ひぬ。然るに又もや幾多の年月を経て地の世界は悪鬼、悪蛇、悪狐その他の妖魅の跳梁跋扈する暗黒世界と化し、優勝劣敗、弱肉強食の社会を出現し、大山杙、野椎、萱野姫、天の狭土、国の狭土、天の狭霧、国の狭霧、天の闇戸、国の闇戸、大戸惑子、大戸惑女、鳥の石楠船(一名天の鳥船)、大宜都姫、火の焼速男(一名火の迦々彦、火の迦具土)、金山彦、金山姫等の諸神の荒び給ふ世を現出したりける。
 一旦天地の大変動により新に建てられたる地上の世界は、又もや邪神の荒ぶる世となり、諸善神は天に帰り、或は地中に潜み、幽界に入りたまひて、陰の守護を遊ばさるる事となりしため、再び常世彦、常世姫の系統は、ウラル彦、ウラル姫と出現し、ウラル山を中心として割拠し、自ら盤古神王と偽称し、大国彦、大国姫の一派は邪神のためにその精魂を誑惑され、ロッー山に立て籠り、自ら常世神王と称し、遂には伊弉冊命、日の出神と僣称し、天下の神政を私せむとする野望を懐くに至れり。
 茲に伊弉冊命は、この惨状を見るに忍びず、自ら邪神の根源地たる黄泉の国に出でまして邪神を帰順せしめ、万一帰順せしむるを得ざるまでも、地上の世界に荒び疎び来らざるやう、牽制運動のために、黄泉国に出でまし、次で海中の竜宮城に現はれ、種々の神策を施し給ひしが、一切の幽政を国治立命、稚桜姫命に委任し、海中の竜宮を乙米姫命に委任し、自らロッー山に至らむと言挙し給ひて、窃に天教山に帰らせ給ひ、又もや地教山に身を忍びて、修理固成の神業に就かせ給ひつつありたるなり。
 天地の神人は、此周到なる御経綸を知らず、伊弉冊命は黄泉の国に下り給ひしものと固く信じ居たるに、伊弉冊命のロッー山に現はれ給ふとの神勅を聞くや、得たり賢しとして元の大自在天にして後の常世神王となりし大国彦は、大国姫その他の部下と謀り、黄泉島を占領して、地上の権利を掌握せむとしたれば、大神は遂に前代未聞の黄泉比良坂の神戦鬼闘を開始さるるに致りたるなり。
 この戦は、善悪正邪の諸神人の勝敗の分るる所にして、所謂世界の大峠是なり。
    ○
 この物語に就て附言して置きたい事は、諾冊二神が海月成す漂へる国を修理固成して、国生み、島生み、神生み、万の物に生命を与へ給ひし世界以前に於ける常世城と、以後の常世城の位置は非常に変つて居る。また鬼城山その他の神策地も多少の異動があり、国の形、島の形、河川湖水山容等にも余程の変化がある事を考へねばならぬ。一々詳説すれば際限がないから、この物語には煩を避けて省いた所が沢山ある。また第一巻、第二巻に現はれた天の浮橋以前の神が、第二の世界に現はれて、その時よりは若くなつたり、或は一旦帰幽した神人が神界に前の姿を現はして活動してをるのは、常識の上から判断すれば常に矛盾のやうである。また混乱無秩序、支離滅裂の物語と聞えるのは寧ろ当然である。しかし、この物語は総ての神人の霊を主とし、その肉体を閑却したる、いはゆる霊界物語であつて、霊主体従主義であるから、この神人は何時の世に帰幽し、また幾年後に肉体をもつて現はれ、何々の活動をなし、或は善を行ひしとか、悪を行ひしとか、何神の体に宿つて生れたりとか云ふやうな詳細の点は、際限がないから大部分省いてある。
 総て地上の神人は、霊より肉へ、肉より霊へと、明暗生死、現幽を往来して神業に従事するものであるから、太古の神人が中古に現はれ、また現代に現はれ、未来に現はれ、若がへり若がへりして、永遠に霊即ち本守護神、即ち吾本体の生命を無限に持続するものなるが故に、その考へを頭脳に置いて此物語を読まねば、幾多の疑惑や矛盾が湧いて来るのは当然である。
 数千里の山野河海を一ケ月或は二ケ月に跋渉したり、又は一日の間に跋渉する事がある。千変万化、明滅不測の物語も、総て霊界の時間空間を超越したる現幽一貫の霊的活動を物質化、具体化して述べたものである事をも承知して貰ひたい。また北極に夏の太陽が出たり、赤道直下に降雪を見たり、種々の奇怪な物語がある。口述者に於いても、今日の知識より考へて不可解である。されど永遠無窮に熱帯は熱帯、寒帯は寒帯の侭、何時までも一定不変たる事を得ない。此宇宙は死物ではない限り、気候に於て位置に於て変動するも、幾十億万年の間の事であるから、強ち否定する訳にも行くまいと思ふ。故に読者の本書を肯定するも、否定するも、口述者に於ては何の感じもしないのである。至大無外、至小無内、若無所在、若無不所在、無明暗、無大小、無広狭、無遠近、過去と現在、未来とを問はず時間空間を超越し、人界を脱出し、大宇宙の中心に立つて、神霊界の物語を口述したものである。されど口述者は、決して自己の臆測や推考力によつたものでない。幽斎修業の際、見聞したる其侭の物語であつて、要するに七日七夜の霊夢を並べたものである。併しながら私としては些しも疑うて居るのではない。また不確実の物語とも思うて居ない事を告白して置きます。
(大正一一・二・二三 旧一・二七 加藤明子録)
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