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文献名1霊界物語 第10巻 霊主体従 酉の巻
文献名2第1篇 千軍万馬よみ(新仮名遣い)せんぐんばんば
文献名3第17章 乱れ髪〔447〕よみ(新仮名遣い)みだれがみ
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日2020-07-24 20:18:14
あらすじ城内に進み入った固虎は、逆国別に出会う。固虎は、宣伝使・淤縢山津見を生け捕って帰ったと告げて、「日の出神」に注進するようにと伝えた。大自在天の「日の出神」が現れ、固虎と淤縢山津見に面会した。淤縢山津見は元大自在天の部下・醜国別である。淤縢山津見は大自在天に、自分が今三五教の宣伝使となっているのは、三五教に潜入して、内情を探るためだ、と答えた。そして、伊弉冊命に化けているのは大国姫であろう、と企みを問いただして明かさせた。しかし大自在天は二人が松・竹・梅の三姉妹の宣伝使を捕らえてこなかったことを疑い、問い詰めた。二人は困惑してしまうが、そこへ照彦が蚊々虎の姿となって現れ、松・竹・梅の宣伝使を差し出した。そして昨年、常世城からロッー山に護送されてきたのは、目の国の月・雪・花の三姉妹であって、これは常世城で常世神王の影武者をしている広国別の謀反の証拠である、と大自在天に信じさせた。怒った大自在天は、逆国別に命じて、広国別捕縛の軍を常世城に向けた。
主な人物 舞台ロッー城 口述日1922(大正11)年02月23日(旧01月27日) 口述場所 筆録者桜井重雄 校正日 校正場所 初版発行日1922(大正11)年8月20日 愛善世界社版134頁 八幡書店版第2輯 439頁 修補版 校定版140頁 普及版63頁 初版 ページ備考
OBC rm1017
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本文  固山彦は何の憚る気色もなく、淤縢山津見を伴ひて奥殿深く入る。この時、逆国別は玄関に現はれ、
『ホー、固虎彦殿、貴下は常世神王の命によつて、軍隊を召つれ、『目』の国に出陣されしと聞いてゐた。黄泉島に味方は殆ど出陣して、今はロッー城常世城、共に守り甚だ手薄となつてゐる。然るに貴下は常世城に帰らず、ここに出張されしは何かの仔細あらむ。つぶさに物語られたし』
固山彦『お前は逆国別、これには深い仔細がある。兎も角、常世城の固虎彦、三五教の宣伝使淤縢山津見を生擒り帰つたりと奏上せよ』
 逆国別は、
『暫く待つて下さい。日の出神に申上げ、お指図をうけます』
と踵をかへして奥に入つた。二人は案内もなく玄関に靴と草鞋を脱ぎ捨て、一間に入つて息を休めゐたるに、日の出神は四五の従者を引連れ、儼然としてこの場に現はれ来り、
『ホー、固虎彦、何用あつて来られしぞ』
『これには深い様子も御座れば、暫く余人を遠ざけ給へ』
『皆の者、この場を遠ざかり、居間に帰つて休息いたせ』
『ハイ』
と答へて一同は、この場を立ち去る。
日出神『イヤ、汝は三五教の宣伝使に非ずや』
淤縢山津見『然り、吾は昔、貴下に仕へたる醜国別、今は三五教に偽つて宣伝使となり、敵の様子を窺ひゐる者、如何に機略縦横の貴下大自在天大国彦と雖も、遠く慮る所なかる可からず。吾は旧恩に報ゆるためワザと三五教に入り、一切万事の様子を探知し帰りたる者、必ず疑ひ給ふことなく、胸襟をひらいて語らせ給へ。貴下は日の出神と名乗らせ給へども、その実は神力無双の大自在天大国彦命に坐しますこと、一点の疑ひの余地なし。また伊弉冊大神と称へ給ふは、貴下の御妃大国姫なる事判然せり。斯くなる上は、包みかくさず、一切の計画を詳細に物語られたし』
『汝が推量に違はず、吾は大自在天なり。吾神謀鬼策には汝も驚きしならむ』
『吾々は斯くの如く三五教の宣伝使と化け込み、艱難辛苦を致す位のもの、貴下の計画は略ぼ承知の上の事なり。今この固虎彦は常世神王広国別の命を奉じ、吾を召捕らむために『目』の国に数多の軍勢を引連れ進み来りしも、漸く吾胸中を悟りヤツト安堵し、一切を打明けて吾を本城に導きたる英雄豪傑、感じ入つたる固虎が働き。随分お賞めの言葉を賜りたし』
『イヤ両人の真心には感じ入つた。併しながら、汝が伴ひし松、竹、梅の宣伝使、及び蚊々虎は如何されしや』
 この言葉に両人はグツとつまり、
『彼ら四人は慮る処あり、或る所に秘め置きたり。後して御目にかけ申さむ』
『一時も早く会ひたきものだ。その所在を今ここに於て吾に報告されよ。吾は適当なる者を遣はして、之を本城に迎へ還らしめむ。四人の宣伝使の所在知れざる間は、汝等を疑ふの余地充分なり。早く所在を知らせよ』
固山彦『ここ四五日の猶予を願ひます』
『汝が言ふ如く、真に吾々の為めに、今まで暗々裡に活動せしこと真なりとせば、その所在の知れざる筈なし。返答し得ざるは汝ら帰順せしと偽り、心を合せ、手薄のロッー城を顛覆せしめむとの悪計ならむ。返答次第によつては容赦し難し。サア早く告げよ』
と稍声をはげまし厳しく問ひ詰められ、二人は蚊々虎および三人の娘に、山中に於て煙と消えられ、その所在を知らず、その返答に苦しみ、顔色を変じ、心中に「サア失敗つたり」と思ひ煩ふ折からに、中門を開いて進み来る照彦は、俄に蚊々虎の姿と変じ、月、雪、花の三人を伴ひて入り来り、
『吾は大自在天大国彦、今は日の出神の旧の家来蚊々虎にて候。月、雪、花と偽つて、三五教を宣伝し、天下を惑す松、竹、梅の女宣伝使を召連れ、この場に引連れ参りたり。一時も早く、日の出神、実検せられよ』
と呼ばはり居る。
 日の出神を始め固山彦、淤縢山津見は、寝耳に水の面持にて互に顔を見合はせ、黙然として控へゐる。照彦は三人の娘を伴ひ、この場にドシドシと現はれ来り、
『ヤア、これはこれは大国彦様、吾こそは旧臣の蚊々虎でございます。漸く三人の宣伝使を尋ね求めて、これに参りました。ここに現れたる固虎彦、淤縢山津見の二人も、この事はよく御存じの筈です。仔細に御調を願ひ奉る』
といふより早く、三人の娘の被面布を取り除けば、一同は思はず、
『ヤア』
と声をあげたまま、黙然と三人の顔を看守つてゐる。暫くあつて、日の出神は三人の娘の顔を熟視した上、
『合点の行かぬ三人の宣伝使、汝は松代姫、竹野姫、梅ケ香姫に相違なきや。去年の冬、常世神王より松、竹、梅の三人なりと申し立て、本城に送り来れる三五教の松、竹、梅の宣伝使に比ぶれば、容貌骨格その他において非常に相違の点あり。汝は果して松、竹、梅に相違なきや』
『妾等は珍の国の城主正鹿山津見神の娘、松、竹、梅の三人に相違これなく候。妾等三人は、未だ嘗て常世城に捕はれし事もなければ、従つて本城に来りし事もなし。何かの間違ひにはおはさずや』
 日の出神は双手を組み、首を傾け思案に沈む。
固山彦『モシ、日の出神様、昨年常世神王より送り来りし松、竹、梅の三人は、御承知の如く何時とはなしにこの警護厳しき中を煙の如く消え去りしは、要するに常世神王広国別が妖術にて、彼は表面貴下に随従する如く見せかけ、密かに天教山に款を通じ、貴下等の計画を根底より覆へさむとするの悪辣なる計略を企みをる者。拙者はその計略の奥の手を存じをれば、広国別に迫つて、その不都合を詰責せし処、広国別は終に兜を脱ぎ、賤しき門番の固虎をして口ふさぎのため重職を授けたるは、全くその奸計の他に洩れざらむがための彼の術策。昨冬松、竹、梅と称したるは、広国別が魔術によつて現はれたる悪狐の所為なれば、必ず御油断あつてはなりませぬ』
と言葉巧に述べ立てたり。
 大自在天大国彦の日の出神はこれを聞くとともに、怒髪天を衝き、
『ヤアヤア逆国別、一時も早く家来を差し向け、常世神王を召捕りかへれ』
と大音声に呼はれば、
『ハイ』
と答へて逆国別はその場に現はれ、日の出神の命のまにまに数百人の部下を引率れ、常世城に向ひ、馬に跨り、あわただしく出張する。
淤縢山津見『日の出神に申上げます。実に油断のならぬは人心、一切の秘密を打明け、御信任浅からざる常世神王の広国別は、かかる腹黒き者とは思はれなかつたでせう。吾々も初めて固虎彦の言葉を聞きまして驚きました。人は見かけによらぬものとは、よく言つたものですワ』
『さうだ、人は見かけによらぬものだ。醜国別が淤縢山津見となつて三五教のウラをかき、広国別が常世神王となつて此方のウラをかき、天教山に款を通ずるのも同じ道理だ。敵の中にも味方あり、味方の中にも敵ありとはこの事だのう』
『私を信じて下さいますか』
固山彦『吾々が日の出神であつたら、容易に信じないなア。ハヽヽヽヽヽ』
淤縢山津見『固虎さま、あまり口が過ぎますよ。あなた、そんな顔して居つて、心の底は天教山の三五教に款を通じてゐるのでせう。アハヽヽヽヽ』
日出神『何だか訳が分らぬやうになつて来た。狐につままれたやうだワイ』
(大正一一・二・二三 旧一・二七 桜井重雄録)
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