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文献名1霊界物語 第10巻 霊主体従 酉の巻
文献名2第1篇 千軍万馬よみ(新仮名遣い)せんぐんばんば
文献名3第21章 桃の実〔451〕よみ(新仮名遣い)もものみ
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日2021-06-10 19:20:27
あらすじ一方本物の日の出神は、神伊弉諾神の命を奉じ、三軍を率いて黄泉島に進んだ。大自在天・大国彦の軍勢は多くの魔神・魔軍を布陣したが、神軍の前には魔力を発揮することはできなかった。しかし魔軍の将・美山別らの反撃に、神軍の形成はにわかに不利になった。このとき松代姫、竹野姫、梅ケ香姫の三姉妹の宣伝使は、月・雪・花の三姉妹を従えて、宣伝歌を歌いながら敵の陣中に向かって舞い踊った。魔軍は女神たちの美しさに心魂を奪われ、武器を地に捨てて見とれていた。魔軍は闘う力を失って、ただ平伏するのみであった。この三姉妹のはたらきに対し、神伊弉諾命の声が中空から語りかけ、意富加牟豆美神(おほかむづみのかみ)と名を与えた。
主な人物 舞台 口述日1922(大正11)年02月25日(旧01月29日) 口述場所 筆録者東尾吉雄 校正日 校正場所 初版発行日1922(大正11)年8月20日 愛善世界社版161頁 八幡書店版第2輯 449頁 修補版 校定版168頁 普及版75頁 初版 ページ備考
OBC rm1021
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本文  茲に日の出神は、神伊邪那諾神の神勅を奉じ、三軍に将として黄泉島に向つて花々しく進軍せり。
 石拆神、根拆神、石筒之男神をして先陣を宰らしめ、甕速日神、樋速日神、建布都神をして本隊の部将とし、後陣には闇淤加美神、闇御津羽神を部将とし、旗鼓堂々として黄泉島の比良坂に向つて進軍せしめ、左翼の軍隊には正鹿山津見神、駒山彦、右翼には奥山津見神、志芸山津見神を部将とし、遊軍として闇山津見神、羽山津見神、原山津見神、戸山津見神の十六神将をして鶴翼の陣を張り、魚鱗の備へ勇ましく、天の鳥船、岩樟船に乗せて雲霞の如き大軍を送り、天地も震動ぐばかりの言霊を発射せしめたり。
 茲に常世の国のロッー城に現はれたる大国彦は、自ら日の出神と偽称し、美山別をして、大雷、黒雷、火雷、拆雷の勇将を遣はし、数多の魔軍を指揮せしめ、照山彦は伏雷、土雷の部将を率ゐて左翼となり、竹島彦は鳴雷、若雷の部将を率ゐて右翼となり、国玉姫、田糸姫、杵築姫をして醜女探女を引率せしめ、爆弾、弓矢、槍、剣などの兇器を以て山上に攻め登り、一挙に黄泉島を占領せむと猛虎の勢凄じく攻め来る。
 天震ひ地動ぎ、得も言はれぬ激戦は茲に開始されける。桃の実に擬へたる国玉姫、田糸姫、杵築姫の婉麗並びなき姿も、霊主体従の神軍に対しては、その魔力を発揮するの術更になかりけり。
 中空よりは、神軍として月照彦神、足真彦神、少彦名神、弘子彦神、雄姿を現はし神軍を指揮しつつあり。美山別の軍勢は、この神軍の応援に進み兼ね、稍躊躇の色ありしが、中空より聞ゆる森厳なる言霊の響に、頭は痛み胸は裂けむばかり苦しみ悶えて、止むを得ず坂の上より退却を始めたれば、日の出神の率ゆる神軍は、時を移さず比良坂を下りて、美山別の魔軍を追跡すること益々急なり。美山別の一隊は、八種の雷神に数万の魔軍を添へて生命限りに盛り返し来るを、日の出神は左翼部隊なる正鹿山津見、駒山彦の一隊を割いて、迂廻して魔軍の背面に向はしめたるに、魔軍は不意の言霊に再び胆を抜かれ、萎縮して思はず大地に俯伏する。月照彦、足真彦らの神軍の活動を称して蒲子生りきと云ひ、駒山彦、正鹿山津見の一隊の活動を称して、湯津津間櫛を引闕きて投棄て給へば乃ち笋生りきと云ふなり。
 日の出神は、軽々しく進み敵の術中に陥らむ事を恐れ、此の機に乗じて元の本陣に大部隊の神軍を還し、宣伝歌を高唱して、敵の襲撃に備へつつありき。
 美山別の一隊は、ここを先途と全力を尽し、魔軍の力を集中し、一団となつて驀地に日の出神の陣営に向つて進み来る。一進一退、容易に勝負も見えざりける。
 美山別は勝に乗じ、あらゆる精巧なる武器を以て縦横無尽に攻め寄せ来るを、日の出神の神軍は、各自両刃の剣を携へをれども、素より折伏の剣にあらず、摂取不捨の利剣なれば、敵の鋒鋩に対しても容易にこれを用ゐず、ただ至誠至実の言霊を応用して、これに対抗するのみ。されども人盛なれば天に勝ち、悪は善を虐げ、暴は柔を苦しめ、時ならずして神軍の形勢は益々悲境に陥りぬ。
 この時桃上彦の娘、松代姫、竹野姫、梅ケ香姫は月、雪、花の三人の女将を従へ、数多の美しき女人を率ゐて、宣伝歌を歌ひながら、敵の陣中を目がけて長袖淑に踊り舞ひ狂ふにぞ、遉の魔軍も、容色端麗にして天女の如き清楚なる姿に眼眩み、魂奪はれ、呆然として各武器を地に投げ見つめ居る。
 松、竹、梅、月、雪、花の宣伝使は、魔軍の陣中を前後左右に飛び廻り、声も涼しく宣伝歌を歌へば、魔軍の将美山別を始めとし、八種の雷神に至るまで、女神の姿に恍惚として戦ひの場にある事を忘るるに至りぬ。此間に日の出神は、諸将を引率して黄泉比良坂の坂の上に退却し、ここに一時休養せり。魔軍は何れも戦ふの力なく平伏するを、松、竹、梅以下の女神は、悠々として日の出神の屯せる黄泉比良坂の坂の上に還り来り、戦況を具さに奏上せり。この時空中に声あり、
『吾は神伊邪那諾命、日の出神をして黄泉軍を言向け和さしめたれども、魔軍の勢強くして容易にこれを帰順せしむ可からず。諸神将卒は戦ひに労れ艱みたる折しも、汝松、竹、梅の桃の実現れ来りて魔軍を言向け和し吾神軍を救ひたるは、この戦ひに於ける第一の功名なり。これより松、竹、梅の桃の実は、吾軍を助けたる如く、世人の悪魔に悩まされ、憂瀬に落ちて苦しまむ者あらば、汝が言霊を以てこれを救へよ。汝ら三柱に対して、意富加牟豆美神といふ御名を賜ふ』
と宣らせ給ひぬ。
(大正一一・二・二五 旧一・二九 東尾吉雄録)
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