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文献名1霊界物語 第13巻 如意宝珠 子の巻
文献名2第4篇 奇窟怪巌よみ(新仮名遣い)きくつかいがん
文献名3第18章 石門開〔544〕よみ(新仮名遣い)いわとびらき
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日2020-11-26 18:06:50
あらすじ一行は、立派な石壁で築かれた館の前にやってきた。音彦は大音声に門を開けと呼ばわるが、何も起こらない。ただ門内よりかすかに琵琶の音が聞こえてくるのみである。弥次彦と音彦が問答をしていると、門内から大声で一同を誰何する者がある。声は、門を開こう開こうと焦って教えを忘れていた宣伝使たちに注意を促した。音彦は亀彦、駒彦に促して、慌てて神言を奏上する。すると門は易々と開いた。そこに居た巨大な男は、うわばみの野呂公だった。野呂公は臥竜姫に取り次ぐといって奥に入るが、なかなか戻ってこない。いぶかる亀彦に、弥次彦は、門は開いたが、まだお前たちの心が開いていないのだ、と説教をする。亀彦が口答えすると、弥次彦と与太彦は一同に気をつけると、赤白の玉になって飛んでいってしまった。一同はしびれを切らし、館の中にどかどかと進み入った。すると突然、上空が開け、日の出別の乗った天の鳥船が航行しているのが見えた。一同はいつの間にか、野天の野原に出ていた。そこへ、出雲姫と名乗る三五教の女宣伝使が現れ、日の出別一行が、峠で待っていると言って道案内を始めた。
主な人物 舞台 口述日1922(大正11)年03月20日(旧02月22日) 口述場所 筆録者加藤明子 校正日 校正場所 初版発行日1922(大正11)年10月30日 愛善世界社版202頁 八幡書店版第3輯 104頁 修補版 校定版203頁 普及版88頁 初版 ページ備考八幡版「石戸開」、愛世版・校定版「石門開」
OBC rm1318
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本文  巌窟内に、有り得べからざるやうな立派な石壁をもつて囲まれたる邸宅の前に、一行五人は到着した。
音彦『ヨー、立派な構へだ、而も堅牢な石をもつて城壁を繞らし、門扉迄が石造と来て居るワイ。これは容易に侵入する事は出来なからう、琵琶の音の主はてつきり此処だ。恋女の隠棲せる処と思へば心臓の鼓動が激しくなつたやうだ』
亀彦『何を吐くのだ。未通息子か未通娘のやうに、好い年をして心臓の鼓動が激しくなつたもあつたものかい、摺枯しの阿婆摺男めが』
音彦『オイオイ、亀サン、ちつと場所柄を考へて呉れぬと困るぢやないか、想思の女の館の前に来てさう色男をボロクソに云ふものぢやないよ』
駒彦『アハヽヽ、困つたやつだ。又持病が再発したと見えるワイ、気が付くやうに拳骨の頓服剤でも盛つてやらうか』
音彦『ヤアヤア、石門をもつて四辺を築固めたるこれの棲み家、てつきり曲津の巣窟と覚えたり。吾等は三五教の宣伝使、敬神愛民の大道を天下に宣布し、善を勧め悪を懲す神司なるぞ。尋ね問ふべき仔細あり、一時も早く此門開けよ』
と大音声に呼はつた。門内には何の応答もなく森閑と静まり返つて居る。只幽に琵琶の音の漏れ来るのみである。
弥次彦『モシモシ、宣伝使さま、この館の人間は、何れも之も皆聾神さまばかりですから呼んだつてあきませぬよ。そこは此弥次サンでなくては、この神秘の門扉を開く事は不可能だ』
音彦『如何して開くのだ、云つて呉れないか』
弥次彦『最前も云つた通り、要領を得なくては要領を得させないのですから』
音彦『何だか不得要領な事を云ふ男だ。金でも呉れと云ふのか』
弥次彦『マアソンナものかい、お前さまは狡い人だから。要領を得度いと云へば大抵極つたものだ。聾の真似をして居るから、それがホントの金聾と云ふのだ』
音彦『あまり馬鹿らしいから止めとかうかい、如何なつと工夫をすれば開くであらう。聾の神と云よつたからには、大方竜神だらう、聾と云ふ字は龍の耳と書くから、これやてつきり長さまに相違はない、ヨシヨシ、かう分つた以上は弥次サンのお世話にはなりますまい』
この時門内より大声に、
『吾門前に来つてブツブツ囁く奴は何者だ』
音彦『ヤアその方は、聾神の竜神か、耳が聞えねば目で聞け、某は三五教の宣伝使音彦、亀彦、駒彦の一行だ。直に門戸を開いて吾々を歓迎致せ』
 門内より、
『アハヽヽヽ、ウラル教のヘボ宣伝使、竜宮の一つ島に三年の間宣伝を試み、櫛風沐雨の苦心惨憺的活動も残らず水泡に帰し、アーメニヤに向つて心細くも帰らむとする途中颶風に遇ひ、又もや森林の中に一夜を明かし、肝玉を押潰され、しよう事なしに、三五教に帰順した、垢の抜けぬ宣伝使の音、亀、駒の三人か。よくも、ノメノメと出て来たなア、盲目蛇に怖ずとは汝の事だ。アハヽヽヽ』
音彦『エイ、矢釜敷いワイ。一時も早く此門を開かぬか、此方にも考へがあるぞ』
 門内より、
『アハヽヽヽ、分らぬ奴だ。神秘の門は汝自ら汝の力をもつて開くべきものだ。少しの労を惜み、他人に開門させむとは狡猾至極の汝の挙動、神秘の鍵を持ち忘れたか』
音彦『ヤア、此奴中々洒落た事を云ふワイ、オヽさうだ。これ位の石門が開けないやうな事で、どうして天の岩戸開きの神業が勤まらうか、さうだ、さうだ。余り開門ばかりに精神を傾注して肝腎の神言を忘れて居た。ヤア尤も千万なお言葉だ。サア亀公、駒公、神言だ』
と云ひながら神言を奏上する。祝詞が終ると共に、さしも堅牢なる石門は音もなく易々と左右に開いた。
音彦『アヽ祝詞の通りだ。如此宣らば、天津神は天の磐戸を推披きて、天の八重雲を伊頭の千別に千別て所聞召さむ、国津神は高山の末短山の末に上り坐て、高山の伊保理短山の伊保理を掻分て所聞召さむと云ふ神言の実現だ。サアこれで一切の秘訣を悟つた。一にも祝詞、二にも祝詞だ。なア亀サン、駒サン』
 亀、駒無言の儘俯向く。音彦は門内に佇む大男の姿を見て、
音彦『ヤアお前は夢にみた蠎の野呂公ぢやないか、どうして此処に居たのだ』
野呂公『夢と云へば夢、現と云へば現、どうせ今の人間は誰も彼も夢の浮世に夢を見て居るのだ。確りした奴は目薬にする程もあるものぢやない。それでも三五教の宣伝使だと思へば仏壇の底ぬけぢやないが、悲しうて目から阿弥陀が落ちるワイ、アハヽヽヽ』
音彦『何は兎もあれ、臥竜姫に先刻お目にかかつた色男の音彦サンが御来臨ぢやと、報告して呉れ』
野呂公『エヽ仕方がない、今直に申上て来るから、御返事のある迄は此処に神妙に立つて居るのだ。一寸でも許しの無いに此方に這入つてはいかないぞ』
と云ひながら野呂公は姿を隠した。
亀彦『野呂公の奴いつ迄かかつて居るのだらう。何ほど奥が深いと云つても知れたものだが、随分じらしよるぢやないか。ヤア弥次彦、与太彦大に憚りさまだつた。お蔭で門はお手のもので開きました』
弥次彦『門は開いても、開かぬのはお前の心だ。可憐さうなものだよ』
亀彦『無形的精神の門戸が開けたか、開けぬか、ソンナ事がどうして観測出来るか、精神上の事が、体主霊従的人物に分つて耐らうかい。二言目には要領だとか、何とか云つて手を出し、物質欲に憂身を窶す代物に吾々の思想上の明暗が分らう筈がない。余計な無駄口を叩くな』
弥次彦『アハヽヽヽ、さつぱり分らぬ宣伝使だ。弥次彦、与太彦の御両人さまは如何なるお方と心得て居るか。後で吃驚して泡を吹くなよ』
と云ひながら、忽ち赤白の二つの玉となつてブーンと唸りをたてて何処ともなくかけ去つた。
音彦『ヤア何だ。彼奴は唯の代物では無かつたやうだ。それにしても野呂公の奴、何時迄のろのろと埒の明かぬ事だらう、アーア何事も自分がやらねば人頼りにしては埒が明かぬものだ。オイ亀公、駒公、何も躊躇逡巡するに及ばない。此方から出かけて行かうぢやないか。如何なる秘密が包蔵されてあるか知れないから、十分気をつけて進む事にしよう。この臥竜姫の正体を見届けた者が、金鵄勲章功一級、勲一等だ。サアサア構ふ事はない、前進々々、突喊々々』
と、足を揃へて玄関目蒐けて掛登つた。目も届かぬばかりの長い廊下を九十九折に曲りながら、足音荒くドンドンと進み行く。
音彦『ヤア何だ、誰も居ないぢやないか、ピタツと岩に行き詰つて了つた。マアマア此処に寛くり気を落つけて第二の策戦計画に移らうぢやないか』
音(空を仰いで)
『ヤア巌窟に似合ぬ非常に高い天井だ。ヤアヤア日の出別の宣伝使が天の鳥船に乗つて推進機の音高く、航空して居るぢやないか』
 この時前方より柔しき女の宣伝歌が聞え来たる。
亀彦『ヤア駒公、これや大変だ、野天ぢやないか』
駒彦『ホンニホンニ、路傍の岩の上だ。合点の行かぬ事だなア』
 女宣伝使は、チヨクチヨクと三人の前に進み来り、
女『ヤア貴方は三五教の宣伝使様で御座いますか、只今日の出別の宣伝使様が三人の男女の宣伝使と共に、コシの峠の麓に馬の用意をしてお待ち受けです』
音彦『ヤアこれは合点の行かぬ、テツリ巌窟の中だと思つて居たのに、果しもなき荒野原。さう云ふ貴女は何れの神様か』
女『ハイ、私は聖地エルサレムの者で、黄金山の埴安彦の神様の教を伝ふる三五教の宣伝使出雲姫と申すもの、長途の宣伝ご苦労で御座いました。サアどうぞ妾に随て此方へお越し下さいまし、寛くり休息の上海山のお話を交換いたしませう。左様ならばお先に失礼』
と云ひながら先に立つて草生茂る野路をトボトボと歩み行く。三人はその後について怪訝の念に駆られつつ進み行く。
(大正一一・三・二〇 旧二・二二 加藤明子録)
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