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文献名1霊界物語 第64巻下 山河草木 卯の巻下
文献名2第4篇 清風一過よみ(新仮名遣い)せいふういっか
文献名3第22章 帰国と鬼哭〔1828〕よみ(新仮名遣い)きこくときこく
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日2018-03-27 12:06:56
あらすじ
主な人物ブラバーサ、スバッフォード、マリヤ 舞台アメリカンコロニー 口述日1925(大正14)年08月21日(旧07月2日) 口述場所丹後由良 秋田別荘 筆録者加藤明子 校正日 校正場所 初版発行日1925(大正14)年11月7日 愛善世界社版284頁 八幡書店版第11輯 602頁 修補版 校定版289頁 普及版63頁 初版 ページ備考
OBC rm64b22
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本文  ブラバーサはスバツフオードの厚意により、アメリカンコロニーを根拠として、マリヤと共に三五教の大宣伝をなし、其名を遠近に轟かし、数多の信者を集めて居た。然るに日の出島における救世主の名声は、地球上隈なく知れ渡り、旭日昇天の勢で、エルサレムに来た各国人は、何れも競ふてブラバーサの話を聞かむと、このコロニーへ日一日と数多く集まつて来た。スバツフオードも非常に乗り気になり、アメリカンコロニーを三五教の出張所となし、自ら陣頭に立つて遠近の布教に出かけて居た。之に反してお寅婆アの日夜の活躍も寸効なく、一人の信者も出来ず、唯徒に狂人婆アの評判を売つたのみ、市民の笑ひを買つたのみが収穫であつた。加ふるに守宮別、お寅、お花との三角関係が祟つて、遂には其筋の耳に入り退去命令を受くる事になり、三日の後には聖地を後に本国へ帰る事になつたので、ブラバーサは俄に気をいらち、あんな狂人が国へ帰らうものなら、どんな噂を撒くかも知れない。自分は止むを得ずマリヤと関係した欠点もある。放つておけば自分の信用迄メチャメチャにせらるるは火を睹るよりも明かだ。これやかうしては居られない。一度聖師にも会つて見たいし、又妻子にも安心させ度いから、彼等に先だち急いで帰国仕度いものだと、スバツフオードに相談して見た。スバツフオードは一々諾づいて、
『成程一度お帰りになつた方がよいかも知れませぬな。肝腎の根拠地を蹂躙せらるる恐れが有りますから。併しマリヤさまをどうなされますか』
『ハイ、マリヤさまには夜前篤と事情を打ち明けました処、快く承知して下さいました。遉は信仰生活に生きて居らるる丈あつて、変つた方ですわい。これこの通り私の為めに離縁状を書いて下さつたから安心を願ひます』
『一寸拝読さして頂いても宜敷う厶いますか』
『ハイ、宜敷う厶います。マリヤさまの誠意がお分りになつて、互の便宜で厶いませうから』
 スバツフオード聖師は徐に読み初めた、

一、私事、神様の御縁に依りまして、心にもなき御無礼を致し、今日迄貴方様の第二夫人として仕へて参りましたが、併しこれも貴方様に悪魔の憑依しない様、神様からの御命令を遵奉して来たものです。最早御帰国に際しましては、私の使命もいよいよ果されたと考へますから、後日の証拠として此書を書いて貴方にお渡し致しておきます。本国へお帰りになり、お寅さまや、守宮別さまや、魔我彦さまやお花さまなどが私と貴方の関係について、いろいろと悪く吹聴せらるるかも知れませぬ。万一左様な場合が厶いましたら、この書面を聖師様にお見せなさいませ、貴方と私との間は何の雲霧もなく、清浄潔白の間柄で厶います。互に愛し愛され抱擁ッスなどは致しましたが、未だ肉交を行つた事は厶いませぬ。これは大神様がよく御存じですから、別に弁解する必要もなからうかと存じます。
   年 月 日
      アメリカンコロニーのマリヤより
 恋しき恋しきブラバーサ様

『なる程立派な御両人のお志し、ヤ、私もこれ程潔白な間柄とは存じて居りませ何だ。矢張私の心が汚なかつたのでせう、ハヽヽヽ。サアサアこれからマリヤさまに来て貰つて、私と三人送別会を開きませう。さうして、コロニーの信者へもお神酒を一杯披露の為振れ舞ふ事に致しませう』
『長らく御厄介に預かりまして何から何迄御親切に有難う厶います。何れ又近い中に上つて参ります。其時は日の出島の再臨のリストの現はれたまふ時かと存じます。どこ迄も幾久しく御厚情を願ひませう。随分お壮健で御神業に奉仕して下さいませ』
『三五教の信者はマリヤさまが担任致しますから、御安心下さいませ』
『ハイ、有難う厶います』
と挨拶して居る所へマリヤは衣紋を繕ひ、出で来り、恭しく両手をつき、
『聖師様浅からぬ御神縁によりまして、いたらぬ妾、長らくお世話に預かりました。貴方が御帰国遊ばしましても、御教の御趣旨は私が代つて飽迄宣伝致します。又信者に対しても、貴方から教はつた教理を懇々と説き諭し、神政成就の為め尽しますから、どうぞ御心配なくお帰り下さいませ』
『ヤ、実に長らく見ず不知の土地へ参りまして、お世話に預かりました。何れ又出直して参りますから、どうぞお身体を大切に御用を勤めて居て下さいませ。明後日のトルコ丸でお寅さま一行は帰国されるさうですから、私は一足先に今晩の汽船アラビヤ丸に乗つて帰らうと存じます。どうか御一同様へ宜しくお伝へ下さいませ。序にマリヤさまにお願ひしておきたいので厶いますが、駅前の有明家の綾子と云ふ芸者は、一旦守宮別と妙な関係が結ばれたと云ふ事で厶います。守宮別が帰国の事となれば、嘸悲観の淵に沈み、女の小さい心から、無分別の事をするかも知れませぬ。万一そんな事があつては、日の出島から参りました、吾々宣伝使の責任が済みませぬから、何卒貴女から一度訪問して慰めて上げて下さい。きつとあの方は貴女のお弟子になるだらうと思ひます』
『ハイ、畏まりました。御心配下さいますな』
『どうやら出帆時刻迄に、一時間より厶いませぬから、今自動車を雇ふておきました。どうか早く乗つて下さい、私も船場迄送りますから』
 『ハイ、有難う』とブラバーサは自分の古い着物や手道具其他の日用品を、コロニーの人々に分与すべく頼みおき、三人自動車に乗つて渡船場へと急ぎ行く。あゝ惟神霊幸倍坐世。
(大正一四・八・二一 旧七・二 於由良海岸秋田別荘 加藤明子録)
(昭和九・五・二七 王仁訂正)
(昭和一〇・三・一〇 於台湾草山別院 王仁校正)
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